IT導入補助金はパソコン購入費用も対象になるのか?
勤怠管理や業務管理など、いまやITツールは、どんな業種でも欠かせないものになっています。ITツールがあるのとないのとでは、業務の効率化がまるで違います。その一方で、現在ではテレワークの導入が進んでいるため、パソコンなどのハードウェアの需要も増えています。
しかし、ITツールやハードウェアの導入には、それなりに費用がかかります。その費用の一部を補助してもらえるのがIT導入補助金です。IT導入補助金とは、どのような補助金なのでしょうか。IT導入補助金の2021年度版、2022年度版の違いも見てみましょう。
IT導入補助金はパソコン購入も可能?
IT導入補助金は、2021年の公募まではパソコンの購入費用は補助金の対象外で、低感染リスク型ビジネス枠を使えば、レンタルのみ対象にすることができました。しかし、2022年度版ではITツールだけでなく、パソコンやタブレットの購入費用も対象となっています。
IT導入補助金では、自社の規模に合ったITツールの導入は、当初から認められていましたが、ハードウェアの購入は対象外でした。しかし、業務の効率化をはかるためには、ITツールの導入とともに、パソコンやタブレットなどのハードウェアを充実させる必要があるため、2022年度から補助金の対象となったのです。
2021年はレンタルが対象だった
2021年度のIT導入補助金には、通常枠と低感染リスク型ビジネス枠の2つがありました。低感染リスク型ビジネス枠は、新型コロナ感染症感染拡大に伴って新設されたもので、コロナ禍によって売上が激減した事業者を、救済するために設けられました。ただし、IT導入補助金は、単に激減した売上を補填するための補助金ではありません。コロナ終息後に生かせるビジネスモデルを持つ事業者に、非対面化や新たなビジネス展開に必要な費用を補助するのが、IT導入補助金なのです。
そのため、低感染リスク型ビジネス枠には、通常枠よりも高い補助率が設定されています。非対面化の代表的なものに、テレワークがあります。新型コロナは、人と人の接触を減らせば感染を抑えられるので、多くの企業がテレワークを導入しました。その結果、ビジネスマンの働き方が変わりつつあります。テレワークの導入率はそれほど高くありませんが、それでも一旦テレワークを導入して、そのメリットを実感した企業は、コロナ終息後もテレワークを続ける可能性があります。
そうなると、毎日出社するのが当たり前だった、ビジネスマンの働き方が変わるのは当然のことでしょう。また、飲食店などで注文する際に、店員を呼んで注文するスタイルから、タブレットを使って注文するスタイルに変更するのも、非対面化となります。現在、多くの飲食店がタブレットによる注文形式を導入して、新型コロナ感染拡大を抑ええる努力をしています。
このように、2021年度は非対面化の推進が、IT導入補助金の中心となっていたため、まだパソコンの購入費用は補助対象となっておらず、低感染リスク型ビジネス枠で、レンタルのみが補助対象となっている状態でした。しかも、すべてのパソコンレンタルが対象となっていたのではなく、テレワークを目的としたパソコンレンタル費用のみが、補助対象となっていたのです。つまり、2021年度のIT導入補助金では、テレワークのためにパソコンを普及させることは、それほど重要視されていなかったことになります。
2022年はパソコン購入も可能
レンタル費用のみが対象で、パソコン購入費用は対象外というのは中途半端な気もしますが、2022年度版のIT導入補助金ではこの点が解消され、パソコン購入費用も補助対象として、認められるようになりました。2021年度では、コロナ禍がこれほど長期化するとは予想できなかったので、レンタルのみの補助になっていたのかもしれません。
しかし、コロナ禍は一向に沈静化する様子が見られないので、レンタルに限らずパソコン購入費用も、補助する方向に変わったのでしょう。2022年度のIT導入補助金は、2021年12月に補正予算が成立し、新たなIT導入補助金が作られました。その結果、パソコンやタブレットの購入費用のうち、10万円(補助率1/2)まで、補助してもらえることになったのです。
2022年度版IT導入補助金で対象となるのは、会計ソフトや受発注システム、決済ソフトなどのITツールのほか、パソコンやタブレットなどの購入費用です。ただし、これらのソフトやハードウェアは、自社で勝手に購入しても、補助対象とはならないので注意が必要です。
IT導入支援事業者を通して購入する
パソコン購入費用をIT導入補助金の対象にするには、IT導入支援事業者を通して購入する必要があります。事務局に登録された、IT導入支援事業者のサポートを受けながら、あらかじめ事務局に登録されたITツールの中から、自社の業績アップに役立つITツールを選んで申請します。この手順を踏まないと、IT導入補助金は支給されないので注意しましょう。
IT導入支援事業者とは
IT導入支援事業者は、IT導入補助金を受ける事業者と一緒に、補助事業を実施するパートナーです。また、IT導入支援事業者は、補助金を受ける事業者にサポートする立場でもあり、導入するITツールの選定や、パソコン購入などのアドバイスを行います。補助金の交付申請や、補助金交付に必要な書類の作成なども、IT導入支援事業者がサポートしてくれるので安心です。ちなみに、IT導入支援事業者になるには、事務局及び外部審査委員会による審査を経て、採択されてはじめてなることができます。
2022年公募スケジュール
IT導入補助金の2022年度公募は、2022年3月31日(木曜日)に開始されました。
通常枠
通常枠は、以下のスケジュールで実施される予定です。
「1次締切分」
締切日:5月16日(月曜日)17時00分(予定)
交付決定日:6月16日(木曜日)17時00分(予定)
事業実施期間:交付決定日以降~終了時期は後日案内予定
事業実績報告期間:後日案内予定
「2次締切分」
締切日:6月13日(月曜日)17時00分(予定)
交付決定日:後日案内予定
デジタル化基盤導入類型
デジタル化基盤導入類型は、以下のスケジュールで実施される予定です。
「1次締切分」
締切日:4月20日(水曜日)17時00分(予定)
交付決定日:5月27日(金曜日)17時00分(予定)
事業実施期間:交付決定日以降~終了時期は後日案内予定
事業実績報告期間:後日案内予定
「2次締切分」
締切日:5月16日(月曜日)17時00分(予定)
交付決定日:6月16日(木曜日)17時00分(予定)
「3次締切分」
締切日:5月30日(月曜日)17時00分(予定)
交付決定日:6月30日(木曜日)17時00分(予定)
「4次締切分」
締切日:6月13日(月曜日)17時00分(予定)
交付決定日:後日案内予定
対象者
IT導入補助金の対象者は中小企業や小規模事業者ですが、中小企業については、以下のように厳密に定義されています。大企業ではIT導入補助金を申請できないので、大企業と区別するために、厳密な区分けがしてあります。
・製造業、建設業、運輸業
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
・卸売業
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主
・サービス業
(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く) 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主
・小売業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主
・ソフトウェア業又は情報処理サービス業
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
・旅館業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が200人以下の会社及び個人事業主
・その他の業種
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主
・医療法人、社会福祉法人
常時使用する従業員の数が300人以下の者
・学校法人
常時使用する従業員の数が300人以下の者
補助額・補助率
IT導入補助金は通常枠(A・B類型)に加え、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)が追加されています。また、クラウド利用料の補助など、新たな試みも加えられており、ますます充実したものになっています。では次に、通常枠やその他の枠の、補助額や補助率について解説します。
「通常枠」
補助額 30万円~450万円
補助率 1/2以内
「デジタル化基盤導入類型」
会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトなどの購入費の補助のほか、パソコンやタブレットなどの購入費補助も追加されました。
補助額 5万円~350万円
補助率 3/4または2/3
「複数社連携IT導入類型」
複数の中小企業や小規模事業者が連携して、ITツールやパソコン、タブレットなどを購入する場合に使える補助金です。複数の事業者が、ITツールやハードウェアを導入することにより、地域の活性化につながるので、導入を補助金でバックアップしようというものです。また、機器の導入や事業推進に関して、外部専門家のアドバイスを受ける必要があれば、その費用も支援してもらえます。
補助額 5万円~3000万円
補助率 2/3以内または3/4以内
まとめ
2021年度のIT導入補助金では、低感染リスク型ビジネス枠でレンタルする場合に限り、パソコンも補助対象となっていました。しかし、2022年度になると、パソコンの購入費用も、補助対象として認められるようになりました。この背景には、長引くコロナ禍の影響があります。新型コロナの感染拡大を抑えるには、非対面化にするのが有効なので、テレワークを推進する必要があります。
当初は、パソコンのレンタル費用のみ補助対象としたものの、コロナ禍が終息する見込みがないので、パソコン購入費用も補助対象にしたのでしょう。これ以外にも、IT導入補助金は2021年度と2022年度では、少し違いがあります。しかし、これはIT導入補助金に、限ったことではありません。
多くの補助金が従来の枠を撤廃して、新たな枠を設定しています。IT導入補助金は今後も改善が加えられ、さらに使いやすくなっていくものと思われます。IT導入補助金の申請を検討している事業者は、常に最新の情報を入手して、ベストのタイミングで申請できるように、準備しておくことが大切です。
IT導入補助金