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2022.05.01

IT導入補助金を活用してECサイトを制作するためのポイントを解説

ECサイトを構築するには費用がかかりますが、経済産業省のIT導入補助金制度を使えば、最大450万円まで補助を受けることができます。ただし、IT導入補助金は、誰でも受けられるわけではありません。では、どんな条件をクリアすれば、IT導入補助金が受けられるのでしょうか。ここでは、IT導入補助金の対象となる事業者の要件について解説し、補助金の補助率や補助額、申請する手順などをご紹介します。

目次

ECサイト構築に使えるIT導入補助金とは

IT導入補助金とは、小規模事業者がITツールを導入する際に、費用の一部を経済産業省が負担してくれるものです。IT導入補助金には、通常枠(A・B類型)と、低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)があります。通常枠(A・B類型)は、主に業務効率化・売上アップが目的の補助金です。そのため、通常枠では生産性向上に役立つITツールを導入することが、補助金給付の条件になります。

A類型は30万〜150万未満、B類型は150万~450万円以内になりますが、どちらも補助率はECサイト構築費用の2分の1以内となっています。通常枠に加え、2021年から低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)が新設されています。こちらは、新型コロナウイルス感染拡大を見据えて、テレワーク環境を推進したり、人との接触を減らすために給付される補助金です。

ECサイト構築におけるIT導入補助金の補助率・補助額

ECサイト構築の際に補助対象となるのはC類型で、補助額の上限は450万円となっています。IT導入補助金には、従業員の給料と最低賃金を上げるという目標があります。そのため、IT導入補助金を受け取るには、従業員の給料をアップし、最低賃金を上げる努力をしなければなりません。それがIT導入補助金交付の条件なのです。ところで、C類型にはC-1類型「加点」と、C-2類型「必須」の2種類あります。

C-1類型「加点」の加点とは、賃上げ目標を掲げることによって審査の際に有利となるもので、必ずしも掲げる必要はありません。また、掲げたとしても、それはあくまでも努力目標の範疇にとどまります。つまり、その目標を達成できなかったとしても、ペナルティを課せられることはありません。ちなみに、C-1類型「加点」で支給される補助金の上限は、300万円までとなっています。

C-2類型「必須」は、賃上げ目標を掲げることが必須で、目標が達成できない場合は補助金を返還しなければなりません。ここが、C-1類型「加点」と大きく違うところです。C-2類型「必須」の補助金の上限は450万円です。ちなみに、C-1類型「加点」もC-2類型「必須」も、ECサイト構築費用の3分の2位以内の金額が支給されます。どちらに申請するかによって、審査内容や限度額が変わるので、事前によく検討しましょう。

ECサイト構築でIT導入補助金の対象となる企業の要件

IT導入補助金を申請するには、一定の要件を満たさなければなりません。補助金を申請するには、まず中小企業か小規模事業者であることが条件となります。大企業の申請は不可となりますが、親会社が大企業の場合も、申請することはできません。このほか、日本で事業を行っていることなど、いくつかの細かい条件があります。

申請する企業が、中小企業であるかどうかについては、意外にチェックが厳しいので注意が必要です。中小企業の範囲は、業種によって資本金や従業員数の規定が違います。どれか1つでも要件を満たしていないと、申請を却下されるのでしっかり確認しましょう。

IT導入補助金を申請する手順・流れ

IT導入補助金の申請から、補助金を受け取るまでの手順を解説します。

1.導入する「ITツール」と「IT導入支援事業者」の選定

IT補助金を申請するには、まず導入するITツールと、IT導入支援事業者を選ぶ必要があります。IT導入支援事業者とは、IT補助金を申請する際に、サポートしてくれる事業者のことです。

2.「gBbizID」の取得と「SECURITY ACTION」の実施

補助金を申請する前に、gBbizIDプライムを取得しておく必要があります。アカウントの発行までに約2週間かかるので、早めに申請しておきましょう。また、IT補助金を申請するには、2021年からSECURITY ACTIONの宣言が必要となりました。これは「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」が実施する、情報セキュリティ対策に取組むことを、自己宣言する制度です。

3.交付申請

交付申請には、IT導入支援事業者のサポートが必要になります。交付申請資料は、EC事業者と共同作成することが条件となっており、EC事業者だけで申請することはできないので、双方で協力しながら作成しましょう。

4.ITツールの発注から支払いまで

事務局から交付決定の通知を受け取ったら、ITツールの発注から支払いまでの手続きを行います。ITツールは、交付決定の通知が届いてから、発注しなければなりません。もし通知が届く前に発注すると、補助金を受け取ることはできなくなるので、注意しましょう。

5.事業実績報告

補助金を使った事業が終了したら、ITツールを発注して料金を支払ったことがわかる書類を、事務局に送らなくてはなりません。つまり、確かにITツールを購入したことを、証明する必要があるわけです。EC事業者が事業実績を報告し、IT導入支援事業者が、内容を確認して事務局に報告します。事業実績報告では、このように双方からの報告が必要になります。

6.補助金交付手続き

事業実績報告が完了すると、補助金が交付されます。交付された補助金を、申請マイページで確認しましょう。その後、補助額が振り込まれるので、銀行口座の入金を確認してください。

7.事業実施効果報告

補助金を受け取ったら、申請マイページから必要事項を入力し、IT導入支援事業者に、「IT事業者ポータル」から代理提出を依頼します。ここまでで、交付申請からのすべての手続きが終了となります。

IT導入補助金申請のスケジュール

IT導入補助金は、いつでも申請できるわけではないので、定められた申請期間内に、必要書類を揃えて申請しなければなりません。年に5回程度募集期間があるので、その募集期間に合わせて申請しましょう。募集スケジュールの詳細については、IT導入補助金公式HPで確認することができます。

・提出書類

IT導入補助金を申請するには、法人の場合は発行から3ヶ月以内の履歴事項全部証明書と、直近分の法人税の納税証明書「その1」または「その2」を提出しなければなりません。個人事業主は、発行から3ヶ月以内の運転免許証・運転経歴証明書・住民票のいずれかと、直近分の所得税の納税証明書「その1」または「その2」と、直近分の確定申告書Bの控えが必要になります。これだけの書類を揃え、しかも記入事項に漏れやミスがないようにするのは、かなりの労力がかかります。そのため、IT導入補助金の申請は、時間に余裕をもって行いましょう。

ECサイト構築に使えるその他の補助金

ECサイト構築に使える補助金は、IT導入補助金だけではありません。
以下のような補助金もあるので、詳しくご紹介しましょう。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、補助金額が最大で1億円と破格なので、申し込みたい人が多い補助金です。しかし、補助金額が大きいだけに、事業転換や業態変更、新事業展開などの場合が対象となります。つまり、事業再構築補助金はその名のとおり、事業を再構築する場合に限って、交付が可能となる補助金なのです。そのため、補助金の申請をクリアするには、多くの要件を満たす必要があります。

IT導入補助金は比較的申請のハードルが低いのですが、これに比べて事業再構築補助金は、かなりハードルが高いことがわかります。そのため、事業再構築補助金に申請するのであれば、事前の準備をしっかり行いましょう。事業再構築補助金は、新型コロナ感染拡大により、影響を受けた事業者が対象となっているので、それ以外の理由で売上が減少した事業者は、対象にはなりません。

たとえ新型コロナ感染拡大中であっても、経営方法に問題があって売上が落ちたと判断されれば、補助金を申請しても支給されないので注意しましょう。ちなみに、事業再構築補助金が受け取れるのは、中小企業か小規模事業者に限られています。

小規模事業者は、個人事業主が経営する事業なので、小規模であることはわかっています。しかし、中小企業と大企業は線引きが難しい面もあるようです。そこで、中小企業の範囲は、業種によって明確に定義されています。代表的な業種別の、中小企業の定義は以下のとおりです。

製造業その他: 資本金3億円以下の会社 又は 従業員数300人以下の会社及び個人
卸売業: 資本金1億円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人
小売業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数50人以下の会社及び個人
サービス業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人

では、新型コロナ感染により売り上げが減少した事業者が、どのように申請すれば、補助金が降りるのでしょうか。
以下に、3つの代表的な例を挙げてみましょう。

・飲食店の業種転換

これまで、一般的な飲食店のように、店舗で料理や飲み物を提供していた事業者が、新型コロナウイルスの影響で売上が激減し、飲食店以外の業種に事業転換した場合などに、事業再構築補助金を申請すると、認められる可能性があります。また、店舗での営業を中止して、通販による料理の提供に切り替えた場合などにも、事業再構築補助金が受け取れる可能性があります。

・酒類卸売業の業態転換

新型コロナ感染症拡大により、多くの飲食店の売上が低迷した結果、飲食店に酒類を卸している業者も売上が落ち込んでいます。そこで、酒類卸売業者の中には、一般客向けの酒屋に、業態転換するケースも見られるようです。このような場合も、事業再構築補助金を申請すれば、補助金を受け取れる可能性があります。

・精肉卸売業者の業態転換

新型コロナウイルス感染拡大により、飲食店の売上が落ち込んでいるために、精肉卸業者も精肉が売れ残っています。そこで、精肉を飲食店に卸すのではなく、通販を利用して、冷凍精肉を一般客向けに販売する業者も現れました。このような場合も、事業再構築補助金を受け取れる可能性があります。

事業再構築補助金の申請要件

事業再構築補助金の、主な申請要件は3つあります。この3つをすべて満たさないと、事業再構築補助金を申請しても、却下されてしまうので注意が必要です。

1.売上が減っている

事業再構築補助金は、新型コロナ感染拡大の影響で、売上が激減した事業者が対象なので、直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、10%以上減少している場合に申請対象となります。ただし、新型コロナ感染拡大とは関係のない、経営上の問題による売り上げ減少は対象外です。

2,事業再構築に取り組む

新型コロナ感染拡大による、売上低迷から脱却するために、新事業を展開したり業態転換する場合に、事業再構築補助金を申請することができます。これまでの業態や経営状態のままで、売上アップを図る場合は、事業再構築補助金を申請することはできません。たとえば、売上が落ち込んだ飲食店がテイクアウトを始めたとか、夜だけ営業していた飲食店が、ランチの営業を始めたという程度では、事業再構築補助金を受けるのは難しいでしょう。

3.認定経営革新等支援機関と事業計画を作成する

事業再構築補助金を受けるには、事業再構築のための事業計画を、認定経営革新等支援機関と一緒に、作成する必要があります。さらに、補助金額が3千万円以上の場合は、金融機関と共同で事業計画を作成しなければなりません。

補助金は後払い

補助金を受ける場合に忘れてはならないのは、補助金は後払いということです。これは、事業再構築補助金に限ったことではありません。どの補助金も後払いなので、一度は自費で費用を負担する必要があることは、覚えておきましょう。そのため、自社で費用を全額用意できなければ、金融機関などから借り入れしなければなりません。補助金が、後払いであることを知らずに事業計画を立てると、たとえ補助金の申請が通っても、資金計画が頓挫するおそれがあるので注意しましょう。

小規模事業者持続化補助金

日本商工会議所が提供する補助金です。多くても、従業員が十数人程度の、小規模事業者を対象としています。ホームページの制作や更新、チラシやカタログの作成、広告、店内のレイアウト変更などの、資金が必要な場合に受けられる補助金です。小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の助言を受けながら、経営計画書、補助事業計画書、事業支援計画書などを作成して、審査を受けることになります。

小規模事業者持続化補助金には、現在のところ「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」があります。低感染リスク型ビジネス枠は、新型コロナ感染拡大の対策として設けられた枠なので、新型コロナが終息すると、なくなるおそれがあるので注意しましょう。ちなみに、一般型と低感染リスク型ビジネス枠で定義する小規模事業者とは、以下のように定められています。

・商業、サービス業(常勤従業員数5人以下)
・宿泊業、娯楽業(常勤従業員数20人以下)
・製造業その他(常勤従業員数20人以下)

ちなみに、「その他」に該当するのは建設業や運送業などです。一般型は補助上限額が50万円、補助率はECサイト制作費の3分の2となっています。低感染リスク型ビジネス枠は、補助上限額が100万円、ECサイト制作費の4分の3まで補助してもらえます。

ただし、一般型には例外があり、「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者や、2021年1月1日以降創業の事業主は、支給額がさらに50万円プラスされる場合もあるので、興味のある方は調べてみるといいでしょう。また、この制度は複数の事業者が行う共同事業でも、申し込みが可能です。共同事業の場合は、共同事業主の数によっては、最大で1,000万円まで補助金が支給されます。

各自治体が提供するIT補助金

各自治体が、独自に提供しているIT補助金があります。自治体のIT補助金にはいろんな種類があり、しかも今後も、新たなIT補助金が誕生する可能性があるので、最寄りの自治体のホームページを検索して、情報収集しましょう。

各自治体のテレワーク助成金・補助金

新型コロナ感染拡大に伴い、テレワークを導入する企業が増えています。そこで、自治体の中には、テレワークに特化した、助成金や補助金を導入する動きがあります。たとえば、東京都が行っている補助金には、以下のようなものがあります。

・はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)

初めてテレワークを導入する企業に、テレワークのための環境整備費を補助するものです。この補助金を申請できるのは、東京都のテレワーク導入向けコンサルティングを受けた、中小企業に限られます。補助額は最大で110万円、補助率は100%となっています。

また、千葉県にはこのような補助金があります。

・ICT活用生産性向上支援事業

千葉県千葉市にある、公益財団法人千葉市産業振興財団が、実施している補助金です。千葉市にある中小企業や小規模事業者が、働き方改革や生産性向上を目的として、ICT導入をする場合、最大で300万円の補助金が受け取れます。審査の時点で、大規模な事業転換を目的とした、ECサイトを構築するための費用であることを強調すれば、補助金が受けられる可能性があるでしょう。

ECサイト構築で補助金を申請するときの注意点

ECサイトを構築する際に、IT導入補助金を申請すると、最大で450万円まで補助してもらえます。IT導入補助金は、ECサイト構築費用のうち、3分の2まで補助してもらえるというものです。ただし、IT導入補助金を申請する際に、いくつか注意すべき点があるのでご紹介しましょう。

一度交付を受けると同一年度内に再申請できない

IT導入補助金は、一度交付を受けると、同一年度内に再申請することができません。IT導入補助金は、同一年度内に数回募集がありますが、その中のどれかでIT導入補助金の交付を受けると、同一年度内に行われる募集には、応募できないことになっています。ただし、次の年度になれば申請できるので、再申請したい方は、翌年度まで待って申請しましょう。また、3年以内に補助金を受け取っていると、申請が通っても、減額される場合もありますから注意しましょう。

IT導入補助金は後払い

IT導入補助金は後払いとなります。つまり、IT導入補助金を活用する際は、一旦自費でECサイト構築費用を支払わなければなりません。そのため、ITツールを導入するには、そのツールを購入できるだけの資金を、あらかじめ用意する必要があります。

補助金を受けられない場合もある

IT導入補助金を申請するには、さまざまな要件を満たさなければなりません。要件を満たしていないと、IT導入補助金を受け取ることはできないので、注意が必要です。また、すべての要件が整っていても、必ず補助金が受けられるとは限らないことも、覚えておきましょう。

まとめ

ECサイトを構築するには、かなりの費用がかかります。その費用を自費でまかなうのは大変なので、経済産業省のIT導入補助金を使えば、最大450万円まで補助が受けられます。ただし、IT導入補助金を受けるためには、指定された要件を満たす必要があります。IT導入補助金には、通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)がありますが、C・D類型は新型コロナ感染拡大に対応した補助金です。

IT導入補助金を受けられるのは、中小企業と小規模事業者のみで、大企業は受けることができません。中小企業の範囲は、業種によって、細かく定義されているので注意しましょう。IT導入補助金は、要件を満たしていても、必ず受けられるものではありません。また、IT導入補助金は後払いなので、必要な費用は一旦自費で支払うことになります。


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