事業再構築補助金とは?事業再構築補助金でできることと申請手続きを解説
中小企業を補助するための補助金には、さまざまな種類があります。その中でも、事業再構築補助金は支給される金額が大きいので、多くの事業者が利用したい人気の補助金です。しかし、補助金額が大きければ、支給されるための条件も厳しくなるものです。事業再構築補助金を申請して採択されるためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。この記事では、事業再構築補助金の概要を説明し、補助金の対象者や補助上限額・補助率について解説します。さらに、事業再構築補助金の申請手続と、申請に必要な書類についても触れることにします。
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新型コロナ感染症拡大の影響により、売上が大幅に減少した中小企業や中堅企業、小規模事業者等が、業態転換や新分野参入、事業・業種転換などの、大きな事業再編成を行う場合に受けられる補助金です。事業再構築補助金を申請するには、東京商工会議所を通じて、認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら、事業計画書などを作成して提出する必要があります。
また、東京商工会議所では、計画策定支援や確認書の発行などを行います。策定支援を受けるには、東京商工会議所の会員で、23区内で事業を行う事業者であることが条件です。確認書発行も、東京商工会議所の会員でなければ、行うことができません。ちなみに、東京商工会議所に入会するには所定の手続きが必要で、手続きしてもすぐに入会できないので注意しましょう。
確認書の発行には、「GビズIDプライム」の申請が必要です。GビズIDとは、法人・個人事業主向けの共通認証システムで、GビズIDを取得すると、多くの行政サービスが利用できるようになります。このように、事業再構築補助金を申請するには、事前に東京商工会議所の会員になって、GビズIDを取得しておく必要があります。ただし、事業再構築補助金の申請は、事業再構築の手引きに定められた、事業再構築の定義に該当しないと、受け付けてもらえないので注意しましょう。
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金は、経済産業省が実施している補助金です。令和2年度第3次補正予算で予算が計上され、予算規模が1兆1,485億円という大規模な補助金です。ちなみに、事業再構築補助金は経済産業省が実施する補助金ですが、民間団体等を経由した間接補助金になります。この場合の「民間団体等」とは、公募の結果、株式会社パソナに決定しています。つまり、事業再構築補助金は、株式会社パソナを経由して支給されるわけです。
対象者
事業再構築補助金の対象者は、日本国内に本社を有する中小企業や中堅企業等です。資本金10億円未満の企業のほか、一般社団法人も対象者となります。事業再構築補助金は、大企業は申請できないので、大企業とそうでない企業とは、資本金や常勤の従業員数などによって、明確に区別されています。たとえば、製造業、建設業、運輸業の場合は、資本金3億円未満、従業員数300人未満の企業でなければ申請できません。
卸売業は資本金1億円未満、従業員数100人未満、サービス業は資本金5,000万円未満、従業員数100人未満など、それぞれ業種によって決められています。また、これらの条件に該当しても、親会社が大企業の場合は対象外となるケースもあるので、注意が必要です。ちなみに「中堅企業」とは、資本金や従業員数では中小企業に該当しない企業のうち、資本金10億円未満か、常勤従業員数が2,000人以下の企業を指します。
補助上限額・補助率/h3>
事業再構築補助金の、補助上限額と補助率を見てみましょう。
補助上限額
事業再構築補助金の補助上限額は、従業員数によって以下のように分かれています。
[通常枠]
【従業員数20人以下】 100万円 ~ 2,000万円
【従業員数21~50人】 100万円 ~ 4,000万円
【従業員数51~100人】 100万円 ~ 6,000万円
【従業員数101人以上】 100万円 ~ 8,000万円
[大規模賃金引上枠]
【従業員数101人以上】 8,000万円超 ~ 1億円
「大規模賃金引上枠」とは、多数の従業員を雇用し、賃金引き上げを試みながら、さらに従業員を増やそうとする事業者を支援する取り組みです。
[回復・再生応援枠]
【従業員数5人以下】 100万円 ~ 500万円
【従業員数6~20人】 100万円 ~ 1,000万円
【従業員数21人以上】 100万円 ~ 1,500万円
「回復・再生応援枠」とは、事業再生に務める事業者を支援する取り組みです。補助金額は最大1,500万円まで、補助率は通常枠が2/3のところを、3/4に引き上げています。
[最低賃金枠] 中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数5人以下】 100万円 ~ 500万円
【従業員数6~20 人】 100万円 ~ 1,000万円
【従業員数21人以上】 100万円 ~ 1,500万円
「最低賃金枠」は、以下の①と②を満たす場合に対象となります。
①2020年10月から2021年6月の間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること。
②2020年4月以降のいずれかの月の売り上げが対前年または、前々年の同月比で30%以上減少していること。
また、売上高の減少に代えて、付加価値額の45%減少でも可。
[グリーン成長枠]
【中小企業者等】 100万円 ~ 1億円
【中堅企業等】 100万円 ~ 1.5億円
「グリーン成長枠」は、グリーン分野での事業再構築を目指す事業者を対象に、従来は1億円の補助上限額を最大1.5億円まで引き上げたものです。
補助率
補助率は、補助額によって以下のように分かれています。
[通常枠]
中小企業者の補助率は2/3です。
ただし、6,000万円を超える部分は1/2となります。中堅企業の場合は1/2となり、4,000万円を超える部分は1/3になります。
[大規模賃金引上枠]
中小企業者の補助率は2/3となり、6,000万円を超える部分は1/2になります。中堅企業の補助率は1/2で、4,000万円を超える部分は1/3となります。
[回復・再生応援枠]
中小企業者は3/4、中堅企業は 2/3となります。
[最低賃金枠]
中小企業者は3/4、中堅企業は2/3となります。
[グリーン成長枠]
中小企業者の場合は1/2、中堅企業は1/3となります。
要件
事業再構築補助金を受けるには、以下の3つが最低条件となります。
①2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は 2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少し、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して、5%以上減少していること。
②自社の強みや経営資源を活かしつつ、経産省が示す「事業再構築指針」に沿った事業計画を、認定支援機関等と策定した中小企業等
③事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上の増加。
上記の内容をわかりやすくまとめると、①新型コロナ感染症の影響で売上が減っており、②事業再構築に積極的に取り組んで、③認定経営革新等支援機関と、事業計画を策定することが最低条件となります。ちなみに、「任意の3か月」というのは、連続した3か月である必要はないため、特に売上が落ちた月だけをピックアップすることも可能です。
事業再構築に取り組むとは?
ここでいう事業再構築の定義については、経済産業省の事業再構築指針に、明確に記されています。指針には、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編の5つが、事業再構築の定義として規定されています。
補助対象経費
事業再構築補助金の補助対象となる経費は、以下のような支出を指します。
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
事業再構築補助金は、上記のいずれかの費用でないと、補助金の申請ができないので注意しましょう。
受付期間
令和4年3月28日(月)から、事業再構築補助金の第6回公募が開始されています。なお、申請受付は5月下旬~6月上旬に開始される予定です。ちなみに、第5回公募は令和4年3月24日(木)に終了しており、5月下旬~6月上旬に採択が発表される予定です。事業再構築補助金は、年に複数回申請期間があるので、補助金申請を検討している方は、次の申請期間を調べて申請しましょう。
事業再構築補助金の申請手続・交付までの流れ
事業再構築補助金の申請手続きは、以下5つの流れで行われます。
1.GビズIDプライムを取得する
事業再構築補助金を申請する前に、GビズIDプライムを取得しなければなりません。GビズIDを取得するまでに2~3週間かかるので、早めに申請しておきましょう。
2.事業再構築や事業計画作成の重要性を理解する
事業再構築補助金を受けて行う事業は、事業再構築指針に定義された、事業再構築に該当する必要があります。これに該当しないと、申請しても通らないので注意しましょう。また、事業再構築補助金を受けるには、事業計画書を作成しなければなりません。どんな事業をどのように行い、それが成功することを、客観的に説明するのが事業計画書です。事業計画書には、この補助事業が間違いなく成功することが、わかるように書かないと、事業再構築補助金は支給されません。
そこで、事業計画書をしっかり書くことが重要になります。事業計画書の書き方は自由なので、過去の採択事例を参考にして書くといいでしょう。ポイントとなるのは、新型コロナ感染症拡大を、新たなビジネスチャンスととらえた、事業計画を作成することです。たとえば、新型コロナのために店舗の売上が激減したので、ネット通販による販売に切り替えるといった内容です。事業再構築補助金は、申請すれば必ずもらえるものではありません。
事業計画書の内容によって、補助金が給付されるかどうかが決まります。事業再構築補助金は、経済産業省が実施している補助金ですから、その資金は税金から捻出されています。税金である以上、回収できない可能性の高い事業には支給できないので、事業計画書をしっかり書くことが大切なのです。第2回までの公募で4万件以上の申請があり、そのうち約17,000件が採択されています。
つまり、約半数近くが採択されているのですが、採択されても補助金が支給されるとは限りません。事務局は、補助事業に使われた経費の妥当性をチェックした上で、問題がなければ補助金を支給します。つまり、補助金は後払いとなるため、必要経費は一旦自費で支払う必要があります。また、補助金が支払われない場合はすべて自費となるので、その点も考慮しておかないと、その後の資金繰りに影響するおそれがありますから注意が必要です。
3.相談予約
事前に、最寄りの東京商工会議所の会員になった上で、事業再構築補助金申請のための相談予約をしましょう。東京商工会議所のサポートを受けながら、事業計画書を作成したり、確認書発行の手続きを行います。
4.確認書の発行
東京商工会議所と複数回の相談後に、事業計画書がしっかり出来上がったと判断されると、確認書を発行してもらえます。ただし、確認書を発行してもらえても、補助金の申請が通るという保証はないことは、理解しておく必要があります。たとえ東京商工会議所が、事業計画がしっかりできていると見なしても、最終的に判断するのは事務局だからです。ちなみに、確認書が発行されるのは、事業計画書などを提出してから、5営業日程度たってからになります。
5.申請する
事業再構築補助金の申請は、電子申請のみで受け付けています。入力する情報は、申請者自身が責任を持って入力しなければなりません。ここまでのステップで、すべての申請作業が終了します。
事業再構築補助金の申請に必要な書類
電子申請の際には、以下の書類等が必要になります。
・事業計画書
・認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
・コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
・決算書
・従業員数を示す書類(労働基準法に基づく労働者名簿の写し)
このほか、建物の新築に係る費用を、補助対象経費として計上している場合は、新築する必要があることを、証明する資料を添付しなければなりません。また、大規模賃金引上げ枠や、回復・再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠などで申請する場合は、さらに個別に必要な書類があるので、事前に確認しておきましょう。これだけの書類を漏らさず用意して、しかも記載内容にミスがないようにするには、かなりの時間と労力がかかります。そのため、事業再構築補助金の申請書類作成は、なるべく早めに着手することをおすすめします。
事業再構築補助金の注意点
事業再構築補助金の申請の前に、確認しておくべき点があるので、以下の項目を必ずチェックしておきましょう。このチェックを怠ると、何のために申請したのかわからなくなったり、申請作業そのものが無駄になることもあります。
1.本気で事業を見直そうと思っているのか
事業再構築補助金を申請するには、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編といった、大きな事業変更をしなければなりません。このような事業変更はリスクを伴う上に、事業変更して果たしてうまくいくのかどうか、わからないといった不安もあるでしょう。事業再構築補助金が欲しいために、大きな事業変更をするようでは本末転倒になってしまいます。
そのため、大きな事業変更が必要なので、補助金を申請するという順序でなければなりません。売上が激減したら、思い切ったテコ入れも必要ですが、やるからには、必ず成功できるという確証を得た上で実行するのでなければ、成功はおぼつかないでしょう。事業変更は、新型コロナで売上が減ったから、一か八かで事業転換してみようという、安易な発想で行うべきではありません。
2.必要な経費は補助対象か
上記でも触れましたが、事業再構築補助金の対象となる経費は、厳密に定められています。そのため、補助事業に必要な経費が補助対象になっていることを、申請前に確かめる必要があります。もし、補助対象になっていない経費を使ってしまうと、全額自費負担になるのは言うまでもありません。
3.補助金は後払い
事業再構築補助金は後払いなので、補助事業に必要な経費は、一旦自費で支払わなければなりません。また、必要な経費を自費で支払っても、必ずしも補助金が降りるとは限らないので注意が必要です。さらに、事業再構築補助金が振り込まれても、まだ油断はできません。補助事業のために設備投資などをしたのに、その経費が補助金として認められないケースもあるからです。
この場合は、振り込まれた補助金の中から、経費として認められない分の返還を求められます。事業再構築補助金は、もらえる金額が大きいので、その分を見込んで事業展開しているため、思った金額が降りなかったり返還を求められると、資金繰りがうまくいかなくなるおそれがあります。そうなると、その後の事業運営に大きな影響を及ぼすので、注意が必要です。つまり、事業再構築補助金で企業経営を楽にしようと思ったのに、そのことが逆に、起業運営を危うくすることもあるということです。
4.あくまでも新規事業でなければならない
事業再構築補助金を申請するには、大きな事業変更が必要です。そのためには、これまで販売していなかった、まったく新しい商品を、開発する必要も出てくるでしょう。この場合、新たに作る商品は、あくまでも「本当に新規の商品」でなければなりません。つまり、過去に製造販売した商品を、もう一度復活させる場合は、事業再構築補助金は使えないということです。過去に販売していて、何らかの事情で製造中止にしていたものを、また復活させるというのは稀にあることです。
過去に人気のあった商品がその後売れなくなり、10年後に再び人気が出ることもあります。具体的な例を挙げると、かつて販売されていたレコードは、CDの登場によりほぼすべてが製造中止となりました。そのため、レコードプレーヤーやカートリッジ、レコード針など、レコード再生に特化した商品の需要は激減し、これらを製造販売していた事業者は、ほとんど撤退してしまいました。
しかし、現在再びレコードが注目されるようになり、プレーヤーやカートリッジ、レコード針の売上が伸びています。しかし、プレーヤーやカートリッジ、レコード針などは、過去に製造していた商品ですから、この場合には、事業再構築補助金を申請することはできないのです。
5.設備の変更が必須
事業再構築補助金を申請するには、主要な設備の変更が必須となります。事業再構築補助金は、設備投資を支援するための補助金と言ってもいいのです。補助金額が、他の補助金と比べて、大きな金額になっているのはそのためです。そこで、事業再構築補助金を申請するには、大きな設備の変更が必要になるわけですが、大きな設備の変更をするということは、製造する商品も大きく変わることになります。ここにリスクが潜んでいるので、本当に大きな設備の変更をすべきかどうか、慎重に検討する必要があります。
6.市場の新規性要件
事業再構築補助金を受けるには、補助金で作る商品が、既存商品との代替性が低いことが条件となります。これは、既存の事業と市場を食い合わないようにするために、このような制約があるのですが、大きな事業展開が必要なほど切羽詰まった状況で、そこまで考える余裕はなかなかないでしょう。しかし、事業再構築補助金を申請するには、そこまで考慮して事業展開する必要があるのです。
そのため、新商品を販売する際に、「既存事業の売上が大きく減少しないこと」や「相乗効果を発揮すること」が、必須となることを覚えておきましょう。当然ながら、事業計画書等にも、そのことを盛り込む必要があります。事業再構築補助金を申請して採択されれば、手にできる補助金額も大きいのですが、それ相応の対応を要求されるので、よく考えて申し込む必要があります。安易な考えで事業再構築補助金を申請すると、かえって大変な状況に陥ってしまので、慎重に検討しましょう。
まとめ
事業再構築補助金は、経済産業省が実施している補助金で、予算規模が1兆1,485億円という大規模な補助金です。事業再構築補助金は、新型コロナ感染症拡大の影響により、売上が大幅に減少した中小企業や中堅企業、小規模事業者等が、事業再編成を行うのを支援するための補助金です。対象者は、日本国内に本社を有する中小企業や中堅企業等で、資本金10億円未満の企業のほか、一般社団法人も対象者となります。
補助金の上限額は、最大で1億円を超えるケースもあるので、多くの事業者が申請したい補助金でもあります。補助対象経費は厳密に規定されているので、補助金申請の前に、実施しようとしている事業が補助対象かどうか、しっかりチェックしましょう。事業再構築補助金を申請するには、事業計画書などの必要書類を、ミスがないように作成することが大切です。事業再構築補助金は後払いのため、経費は一旦自費で支払う必要があるので注意しましょう。
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