スタッフブログ

2022.05.25

個人事業主は事業再構築補助金で資金調達できるのか

長引くコロナ禍の影響で、多くの事業者が売上の落ち込みに苦慮しています。そこで、この状況を打開するために新設されたのが、事業再構築補助金です。事業再構築補助金は、中小企業やフリーランスが活用できる補助金です。総予算1兆1,485億円、中小企業でも、最大6,000万円もの支援が受けられるという大型の補助金です。

ところで、事業再構築補助金は、個人事業主でも受けられるのでしょうか。本記事では事業再構築補助金の概要と、個人事業主が申請する場合の、注意点などについて解説します。これから事業再構築補助金の申請を検討している、個人事業主の方はぜひ参考にしてください。

事業再構築補助金は個人事業主も対象?

結論から言いますと、事業再構築補助金は個人事業主でも対象になります。事業再構築補助金は、事業者に向けた補助金なので、一定の条件を満たせば、企業でも個人事業主でも対象となります。一定の条件とは、コロナ禍によって売上が落ち込んだことと、事業再構築に取り組むことです。ただし、事業再構築補助金の要件の中には、個人事業主が対象になるとは書かれていません。

しかし、事業再構築補助金の公式サイトの、公募要領(48ページ)の中に、「個人事業主の場合」という表記があります。公募要領は、事業再構築補助金を申請する人のために、設けられたものですから、そこに個人事業主の場合の説明があるということは、個人事業主も対象であるあかしと考えてもよいでしょう。

事業再構築補助金の概要

個人事業主が受けられる、事業再構築補助金の概要について、解説します。

事業再構築補助金を利用できる個人事業主の要件

個人事業主が事業再構築補助金を申請するには、コロナ禍のために売上が減っていることと、事業再構築に取り組み、認定経営革新等の、支援機関のサポートを受けながら、事業計画を策定することが条件となります。ちなみに、認定経営革新等支援機関とは、地域の商工会・商工会議所のスタッフや、地方銀行、税理士、行政書士などで、中小企業を支援できる機関を指します。

具体的な要件の詳細内容

事業再構築補助金を申請するには、しっかりした事業計画を立てることが大切です。事業計画には、補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員1人当たりの付加価値額の年率平均3.0%以上増加の達成が、可能な内容を策定しなければなりません。これだけの内容をしっかり書くのは、容易なことではないでしょう。そのため、事業計画の策定には、かなりの時間がかかります。しかし、事業計画の出来次第で、事業再構築補助金が採択されるかどうかが決まるので、おろそかにはできません。

そのため、事業計画は慎重に練り上げる必要があるので、どうしても時間がかかるわけです。事業計画には、自社の強みや弱みを分析して、具体的な裏付けとなる資料を添付する必要があります。また、市場分析や市場における自社の優位性を確保するために、どんな方策を取るのか、具体的な内容を記述しなければなりません。もちろん、資金計画もしっかり記載する必要があるので、事業計画は簡単に作成できるものではないのです。事業計画は、以下の内容を盛り込んで作成します。

自社の状況と今後の予想

まず、自社の強みや弱み、事業再構築の必要性を記述しましょう。販売する商品やサービス、導入する設備など、事業再構築の具体的な内容も、記載しなければなりません。また、市場の中で自社がどのような立場にあるか、課題や競合他社の問題なども書くことになります。そして、再構築事業をどのように実施するのか、スケジュール、資金調達や収益予想などについても記載が必要です。

事業再構築の定義

事業再構築補助金を申請するには、事業再構築を実施する必要がありますが、事業再構築とは以下の5つを指します。

1.新分野展開
2.事業転換
3.業種転換
4.業態転換
5.事業再編

事業再構築補助金を申請するには、上記の5つのうちのどれかの事業計画を、策定する必要があります。もちろん、策定するだけではなく、策定した計画を実行しなければならないのは、言うまでもありません。

1.新分野展開

新分野展開とは、自社の業種を変更しないで新商品を開発し、その商品に合った市場に進出することです。たとえば、駅前でビジネスホテルを経営していた事業者が、コロナ禍で利用客が減ったので、新たに客室の一部をテレワーク用に改装して、パソコン等のテレワーク用機器を導入するのが新分野展開です。また、自動車用部品を製造販売していた事業者が、新たにパソコン用部品の製造に着手すると、同様に新分野展開と見なされます。

2.事業転換

主たる業種は変更せずに事業のみを変更して、新たな商品を開発することを事業転換と呼びます。たとえば、コロナ禍で業績不振に陥ったイタリア料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低い、焼き肉店を開業することなどが事業転換に当たります。また、金属加工の専門業者が、自社のノウハウを生かして、新たに医療法機器の開発に乗り出すのも事業転換です。

3.業種転換

主たる業種を変更して、これまでとまったく違う商品を売り出すのが業種転換です。たとえば、レンタカー事業者がキャンプ場経営に乗り出し、レンタカーとキャンプ場を組み合わせた、アウトドアプランを提供するのが業種転換です。

4.業態転換

商品の製造方法を、大幅に変更するのが業態転換です。たとえば、ヨガ教室を運営する事業者が、コロナ禍で利用者が激減したために、店舗のヨガ教室を縮小して、オンラインによるヨガ教室を新設するのが業態転換に当たります。

5.事業再編

企業を合併したり分轄したり、株式移転や事業譲渡などによって、新たな分野に展開したり、事業転換や業種転換、業態転換などを行うのが事業再編です。事業再構築補助金を申請するには、上記の5つのうちのどれに該当するかを明確にして、それぞれに定められた内容を、事業計画に盛り込む必要があります。

たとえば、新分野展開の場合は①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③売上高10%要件(新たな製品等または製造方法等の売上高が総売上高の10%以上となること)を、事業計画に記載しなければなりません。ただし、売上高10%や売上高構成比は、予想した通りに実現できなかったとしても、補助金はそのまま受け取れます。

事業者の条件

事業再構築補助金の対象となる事業者は、以下の3つの条件を満たしていることが条件となります。

・売上の減少

2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の合計売上高と比較して、合計売上高が10%以上減っていることが条件です。

・事業再編に取り組む

事業再構築補助金を申請するには、事業再構築を実施する必要があります。事業再構築の具体的な内容については、中小企業庁の「事業再構築指針」に詳細な説明があるので、チェックしてみるといいでしょう。

・事業計画を策定する

事業再構築補助金を申請するには、認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら、事業計画を策定する必要があります。また、3,000万円を超える補助金を申請する場合は、金融機関も策定に加わることが多いようです。事業計画には、補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均0%以上の増加または、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上を盛り込む必要があります。

個人事業主の補助上限額・補助率

事業再構築補助金の補助額と補助率は、中小企業と中堅企業で変わります。

「中小企業」

補助額
通常枠 100万円~6,000万円 補助率2/3
卒業枠 6,000万円超~1億円 補助率2/3

卒業枠とは、中小企業から中堅企業に、移行する事業者に向けた枠のことです。卒業枠で申請して採択されれば、通常枠より高い補助額が受けられるので、より有利な事業展開ができます。ただし、卒業枠は400社限定ですから、早めに申し込まないと枠がなくなる場合もあります。

「中堅企業」

補助額
通常枠 100万円~8,000万円 補助率1/2
グローバルV字回復枠 8,000万円超~1億円 補助率1/2

ただし、通常枠で4,000万円を超えた場合は、補助率1/3となります。ちなみに、中堅企業は以下の条件に該当する企業を指します。

・中小企業基本法に定める中小企業者に該当しない
・資本金の額、または出資総額が10億円未満の法人
・資本金の額、または出資総額が定められていない場合は、常勤従業員数が2,000人以下

中堅企業も中小企業と同様に、事業再構築補助金を申請できますが、中小企業より補助額の上限は高くなるものの、補助率は低くなります。

グローバルV字回復枠

グローバルV字回復枠は、中堅企業の特別枠のことです。以下の3つ要件を満たせば、グローバルV字回復枠が申請できます。

・2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高と比較して、コロナ以前の同じ3か月の合計売上高が、15%以上減少している中堅企業
・補助事業終了後3~5年で、付加価値額か従業員一人当たり、付加価値額の年率5.0%以上増加の達成を見込む、事業計画を策定すること
・グローバル展開を果たす事業であること

グローバルV字回復枠で申請が通れば、通常枠より多くの補助金が受け取れますが、100社限定なので、採択されるのはかなり難しくなります。

個人事業主の補助対象経費

事業再構築補助金の対象となる主要な経費には、以下のようなものがあります。

・建物費(建物の建築・改修、撤去、賃貸物件等の原状回復)
・設備費
・システム購入費

また、下記のような関連経費もあります。

・外注費
・研修費
・広告宣伝費

ただし、関連経費だけでは計上できないので、必ず上記の主要な経費と一緒に、計上しなければなりません。

個人事業主の補助対象外経費

事業再構築補助金では、以下のような費用は経費として認められません。

・従業員の人件費や旅費
・不動産や汎用品(パソコン、スマートフォン、家具、デスクなど)の購入費
・消耗品費
・フランチャイズ加盟料、光熱水費、通信費

また、車両費や製造する商品の原材料費などのような、どの事業でも必要な経費は、事業再構築補助金の対象外になります。

事業再構築補助金の審査項目

事業再構築補助金の審査項目は、大きく分けて5つあります。事業再構築補助金の事業計画書等には、これらの5つの項目について、しっかり記述されていないと、採択されるのは難しくなります。

1.補助対象事業が要件を満たしているか

すでに触れましたように、事業再構築補助金は、以下の3つの条件を満たさないと、申請しても採択されません。

・コロナ禍による売上の減少
・事業再編に取り組む
・事業計画を策定する

2.補助事業を実施する体制が整っているか

補助事業を実施するための人材が揃っているか、企業に補助事業を実施するだけの、余力があるかどうかが問われます。これらの状況が整っていないと、補助金を支給しても無駄になるおそれがあるので、しっかりチェックされるのは当然のことでしょう。

また、補助事業が事業再構築指針に沿っているかどうかも、重要なポイントになります。さらに、実施しようとしている補助事業に、どれくらいのリスクがあるかも問われるでしょう。どれくらいのリスクが予想され、それを回避するための具体的な方策をしめすことによって、採択される可能性が高まります。

3.収益性はあるか

実施しようとする補助事業に、収益性があるかどうかもチェックされます。補助事業が成功しても、収益が上がらないのでは意味がないので、そのような事業では補助金は支給されません。収益性を見るには、補助事業が市場ニーズに合っているかどうかも、重要なポイントになります。そのため、競合他社の商品や、市場規模などが的確に把握されているかが問われるので、事業計画にしっかり盛り込みましょう。

4.コロナ禍の影響があるか

事業再構築補助金を申請する場合は、そもそもコロナ禍の影響で売上が落ち込んだのかどうかを、チェックされます。たとえ売上が減ったとしても、それがコロナ禍によるものでなければ、事業再構築補助金を申請しても、採択されることはありません。また、予定している補助事業は、コロナ禍による売上ダウンを回復するだけの、効果があるかどうかもチェックされます。

5.新規雇用が見込めるか

補助事業を実施することによって、企業の業績が回復し、新たな雇用につながったり、地域の活性化に貢献できるかどうかも、事業再構築補助金を支給する際の重要なポイントとなります。つまり、事業再構築補助金は、自社が潤うだけでなく、雇用を促進して、地域経済と日本経済に寄与する企業でなければ、対象とはならないのです。

事業再構築補助金の申請手続・交付までの流れ

事業再構築補助金の申請手続きは、かなり複雑なのでここでまとめてみましょう。

1.申請の準備

事業再構築補助金を申請する前に、実施しようとしている補助事業が、申請要件に該当するかどうかを確認する必要があります。該当しなければ、申請しても補助金は支給されないので、すべての手続きが無駄になります。そのため、まず申請要件に該当するかどうかを、しっかりチェックしましょう。申請要件に該当することがわかったら、今度は電子申請のためのアカウントを取得します。事業再構築補助金は、電子申請のみで受け付けられるので、「GビズIDプライムアカウント」を取得する必要があります。

GビズIDプライムアカウントがないと、電子申請できないので必ず取得しなければなりません。GビズIDプライムアカウントの取得には、かなりの日数を要する場合があるので、早めに申請することをおすすめします。事業再構築補助金申請のための、すべての資料が揃っているのに、GビズIDプライムアカウントが取得できていないために、補助金の申請を、断念せざるを得ない場合もあるので注意しましょう。アカウント取得を申請したら、今度は認定支援機関を選びます。

事業再構築補助金の申請には、認定支援機関が発行した確認書が必要になります。そのため、認定支援機関は、必ず選ばなければなりません。しかも、認定支援機関は、事業再構築補助金の申請のためには非常に重要です。認定支援機関によって、補助金の採択の可否が決まることもあるので、慎重に選ぶ必要があります。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」のページで、「認定支援機関検索」&「各機関ごとの過去実績チェック」ができるので、活用することをおすすめします。

認定支援機関を選ぶには、採択件数よりも採択率を重視しましょう。採択率が高い認定支援機関なら、安心してサポートを依頼することができます。認定支援機関の料金体系はさまざまですが、できるだけ料金を安くしたいというのは、多くの人が考えることでしょう。認定支援機関によっては、料金が格安だったり無料の機関もありますが、料金の安さだけで選ぶと、失敗することもあるので注意が必要です。料金が高いからといって、優良な認定支援機関とは限りませんが、無料や格安を謳う機関も、必ずしも良心的とは言い切れないのが実情です。

2.申請する

事業再構築補助金の申請は、認定支援機関のサポートを受けながら、事業計画書等を策定して申請手続きを進めます。事業計画書以外の添付書類は、申請内容によって違ったり、公募ごとに変更点があるので、申請前にしっかり確認することが大切です。事業再構築補助金は、通常枠のほかに、公募ごとに新たな枠が作られたり、前回の公募にあった枠が削除されたりしているので、常に最新の情報を見るようにしましょう。

3.審査結果の通知

事業再構築補助金を申請すると、事務局で審査されて採択不採択が決まります。審査結果は、GビズIDプライムアカウント作成時に登録した、メールアドレスに届くので確認しましょう。採択されていたら、今度は補助金の交付申請を行います。

4.補助金の交付申請

採択が決定したら、補助金の交付申請を行いましょう。交付申請の際に、事業計画書の中に記載した、設備投資や必要経費などを見直して、最終的な形を作る必要があります。補助対象となる設備投資や経費は、細かく規定されているので、しっかりチェックして、間違いのないようにしましょう。

事業計画書の見通しが甘かった場合は、この段階で変更することが可能です。ただし、勝手に変更できるわけではなく、変更する前に事務局の承認を受けなければなりません。事務局の承認なしに変更すると、ペナルティを受けることになるので注意しましょう。また、補助事業を実施する業者を選ぶ際は、入札や相見積もりが基本となります。

5.交付決定通知

交付申請の審査が終了すると、事務局から交付決定通知が送られてきます。交付決定通知が送られてくるということは、審査に通ったことになります。しかし、交付申請した内容が、すべて認められるとは限りません。場合によっては、交付申請した設備投資や経費が全額認められず、減額されてしまうケースもあります。

減額される金額によっては、今後の資金繰りに影響する場合もあるので注意が必要です。交付決定通知書には、「交付決定日」が記載れているので、この日から補助事業をスタートすることになります。交付決定日より前に補助事業をスタートすると、補助金は支給されないので注意しましょう。

6.補助事業実施

交付決定日を基準に、事業計画書や、交付申請によって決定した補助事業に取り掛かります。補助事業は、事業完了期限までに終了しなければならないので、完了期限日を確認しておきましょう。補助事業は、必ずしも事業完了期限までに終わらせる必要はないのですが、期限を過ぎて発生した経費は、補助対象外になるので注意しなければなりません。また、補助事業実施中に、個別に進捗報告が必要だったり、事務局担当者が途中で支払い状況をチェックすることもあります。事務局からこのような要請があったら、素直に従うようにしましょう。

7.補助金の受け取り

補助事業が完了したら、補助金受け取りの手続きに入ります。まず、事業実績報告書を、事務局に提出しましょう。提出したら、事務局で報告書の内容に問題がないかチェックします。問題がなければ補助金額が確定し、「補助確定通知書」が送られてきます。通知書を受け取ったら、事務局に補助額を請求すれば、補助金が振り込まれます。補助金が振り込まれたあとに、何らかの問題が発覚したら、補助金の一部返還を求められる場合もあるので注意しましょう。

8.事業化状況報告

事業再構築補助金では、事業完了後も5年間の状況報告が義務付けられています。また、補助金で取得した設備や、補助経費によって購入した物品などは、自由に処分することはできないので注意しましょう。これらの設備や物品は、5年間管理することが義務付けられています。また、補助金に関する経理書類も、5年間保存しなければなりません。もし5年の間に50万円以上の設備や、物品等を廃棄したり売却する場合は、事務局の承認が必要になります。5年間は、勝手に処分することができないので注意しましょう。

まとめ

事業再構築補助金は、コロナ禍の影響で売上が激減した事業者が申請できる補助金なので、個人事業主でも申請することができます。個人事業主が事業再構築補助金を申請するには、一般の企業と同じように、認定支援機関のサポートを受けながら、事業計画書を策定して事務局に提出します。

事業再構築補助金を受けるには、コロナ禍から脱却するための、事業再構築プランが必要です。事業再構築補助金を受けるには、補助対象事業が要件を満たしていることや、社内に補助事業を実施する人材や、体制が整っていることが重要です。また、事業再構築補助金の申請には、アカウントを取得したり認定支援機関を探すなど、事前の準備が必要なので早めに取り掛かりましょう。


事業再構築補助金

このページのTOPへ