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2022.02.05

経営計画書 書き方のポイントを徹底解説

経営計画書は、事業開始や事業拡大のための融資を申し込む際に必要となることが一般的です。また、業績が芳しくない場合に金融機関から業績回復に向けた経営計画書の作成を求められることもあります。しかし、経営計画書の作成は書き方に迷う方も多いかと思われます。

本記事では、経営計画書を作成するメリットや書き方のポイントについて解説します。具体的な書き方や手段・手順を確認し、経営計画書を作成する際の参考としてください。

 

経営計画書とは?

経営計画書とは、自社の事業内容や将来の収益見込みなどについて、具体的な数値で示した計画書のことをいいます。経営計画書を作成するケースには大きく3つあります。以下でそれぞれのケースについて紹介します。

 

金融機関からの支援や借入を受ける場合

経営計画書は、金融機関からの支援や借入を受ける場合に作成が必要です。仮に、現在の業績が堅調であったとしても、融資の必要性や返済財源の見込みを説明し、審査担当者を納得させるために経営計画書を作成するのです。

 

経営状況の悪化により、金融機関から提出を求められる場合

経営状況の悪化や追加の融資が困難になった場合、「緊急事態の対応策」として短期間の経営計画書を作成し、提出するよう求められる場合があります。ただし、短期間の経営計画書はあくまでも「緊急事態の対応策」であり、その後の業績によっては長期的な経営計画書を作成する必要があります。

自社の事業を見直すため

経営計画書は、自社の事業を見直すための「経営計画書」として作成する場合があります。日々変化する経営環境を想定し、5年後・10年後にどのような経営を行っているのかについて中長期的な視点で作成するのです。

経営計画書の必要性とメリット

経営計画書の作成は、「金融機関に提出を求められたから」といった消極的な理由だけで作成していては意味をなしません。経営計画書を作成することで、自社の現状を客観的に把握し、改善に向けた具体的な行動内容を明確になります。ここでは、経営計画書の必要性とメリットについて、項目ごとに紹介していきます。

金融機関に対して事業内容を効果的に説明できる

金融機関の担当者に事業内容を説明する際、単に口頭で説明するだけでは自社についてよく理解してもらえないこともあります。経営計画書を基に、定量的な数字を交えて事業内容を説明することで効果的に説明をすることができます。新規事業や創業融資などこれまでに実績が無い場合は特に有効です。事業成功の根拠を合理的に説明し、金融機関の融資判断材料としてもらいましょう。

事業の問題点や課題を整理できる

経営計画を作成する際には、「事業内容・目的」「商品・サービスの特徴」「競合・取引先」など、事業に関する基本的な事項や、事業を取り巻く環境について整理することが不可欠です。これらについて整理することで、事業の問題点や課題についても把握していくことが可能となります。これにより、金融機関の融資担当者に課題点について指摘されても、あらかじめ解決策を用意し明確に受け答えすることができます。

調達すべき借入金額が可視化される

経営計画を作成する際には、3~5年の期間に及ぶ収支計画も策定します。これにより、将来の収支が可視化されます。融資により調達すべき借入金額や、収支に基づいた返済可能額が見えてきます。経営計画の作成により、必要資金に応じた合理的な借入金額が明確になります。

目標と行動内容が明確になる

経営計画に記載された内容は、事業が理想的な成長を遂げたときの内容であるはずです。これは即ち、当該事業の成功ビジョンそのものです。従って、単に融資を受ける計画を作成するだけではなく、目標と行動内容を社内で共有し計画の実現に向けて行動することが重要です。

経営計画書の書き方

経営計画書の書き方は、必ず定められているわけではありません。金融機関等で定められた様式で作成する場合もあれば、任意の形式によって提出する場合もあります。しかし、経営計画書は様式の有無に関わらず、読み手を意識した経営に関する疑問点を解消するものでなければいけません。

経営に関する疑問点とは

  • 事業概要
  • 収益モデル
  • 将来の収益見込み
  • 収益見込み算出の根拠

などが挙げられます。従って、様式の有無に関わらず記載すべき事項は自ずと定まっていきます。ここでは、経営計画書を書くときのポイント・注意点について紹介していきます。

書くときのポイント

経営計画書を書くときのポイントについて、具体的な項目別に紹介していきます。必要に応じて適宜項目を追加したり、複数の項目を1つにまとめたりしても問題ありません。また、金融機関の所定様式による提出が求められている場合、当該様式に沿って作成しましょう。

①経営者のプロフィール

経営者のプロフィールでは最終学歴や職歴など、これまでの経歴や保有資格などを記載します。これらを記載することで、事業を成功させられる見込みのある人物であるかどうかの根拠となります。

これまでの職務経験や保有資格が、自社の事業内容と結びつくと評価がされやすいです。そのため、関係する職歴や資格があれば漏れなく記載しましょう。また、自社の事業内容と直接結びつく経験がない場合でも、何かしら事業に関連する業務経験はあるはずです。また、勤続年数の長い職歴があれば、勤勉な人物であることをアピールできます。記載があるかないかで大きく印象が異なる項目であるため、必ず記載しましょう。

②事業内容

事業の内容について、目的や経営理念、将来の動向などの全体像を記載します。「社会貢献」等のような抽象的な目的を掲げるとまとまりがなくなってしまうため、自社の商品やサービスに直接関係のある内容を目的に掲げた方が具体的な記載がしやすいです。

③商品やサービスの内容

自社の商品やサービスの内容や、強みや弱み、市場や顧客の動向などについて記載します。新規事業を立ち上げる場合、収益化のイメージを掴みにくい可能性があるため、イメージ図を用いたり、詳細な説明資料を添付したりといった工夫をしましょう。

④競合分析

自社の事業の競合となる他社を分析し、競合に対してどのような優位性を持っているのかを記載します。経営計画において、商品やサービスの収益見込み根拠となる重要な項目だ。「市場規模や顧客ニーズ」「市場の動向や成長性」「自社の強みや弱み」などを定量的な項目で明確化し、競合他社に対する自社の優位性をしっかりとアピールしていきましょう。

定型様式に記載する場合で、該当する記載欄がないときは「③商品やサービスの内容」の項目に併記するとよいでしょう。また、競合分析の基となった資料はしっかりとまとめておき、必要に応じて適宜説明できるようにしておきましょう。

⑤収支計画

収支計画では、凡そ3~5年の期間における事業の収益目標を記載します。直近決算期の収支を左端に記載し、その横に一定期間後の収益目標を記載することが一般的です。収支計画に記載する項目は、「売上高」「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業利益」「経常利益」等があります。損益計算書を簡易的にしたものをイメージすると分かりやすいでしょう。

法人の場合、自身の給与である「役員報酬」も人件費に含めなければなりません。また、業種によって売上原価がない場合や、販売費及び一般管理費の内訳が異なる場合があるため、記載する項目は適宜調整しましょう。

⑥事業の実施スケジュール

前述の収支計画に対応させる形で、事業の実施スケジュールについて記載しましょう。「1年目に正社員を1名採用する」「2年目に自社ホームページを開設する」「3年目に支店を開設しパート社員を3名採用する」など、具体的な実施スケジュールを記載することが望ましいです。

⑦主取引先の情報

主取引先の情報について、販売先・仕入先・外注先等のそれぞれの名称やシェア率などを記載します。また、経営計画書と別に作成する「資金繰り表」では、主取引先の売掛金回収・買掛金支払までに要する期間について記載する必要があります。

⑧人件費と役員・従業員数

ここでは、人件費や従業員数について記載していきます。役員、正社員、パート・アルバイトなどの区分ごとに分け、人数や人件費を記載します。

⑨借入状況

現在の借入状況について、金融機関からの事業資金借入の他、経営者個人の住宅ローンや自動車ローンについても記載します。

⑩必要資金と調達方法

事業に関する必要資金と調達方法を記載します。一般的には、貸借対照表の貸方借方に対応する形で、必要資金を借方である左側に、調達方法を貸方である右側に分けて記載します。

書くときの注意点

経営計画書を作成する際は、重要なポイントを絞って記載するようにしましょう。あれもこれもと内容を詰め込んでしまうと、どれが重要なのかが分からなくなり読み手を混乱させてしまいます。誰が見ても分かりやすいように、シンプルな構成にして要点を押さえることが重要です。

また、経営計画書は作成するだけではなく、計画を実行することが何よりも大切です。経営計画の内容を社内で共有し、日々の業務に反映させましょう。また、半年に1回程度の頻度で経営計画書の進捗状況についてチェックしましょう。進捗状況に応じて計画を修正するのか、このまま進めるのか判断していきます。作成した経営計画を定期的に見直すことで、計画に対する進捗状況や、社内の問題点・改善点が浮き彫りになります。計画を正しい方向に進めていくためにも、定期的に見直し改善策を考えることを必ず行いましょう。

 

作成例(テンプレート)

前述したポイント・注意点を基に、経営計画書の作成例を紹介します。あくまでも一例ですが、実際に経営計画書を作成する際の参考としてください。

 

経営計画書(〇〇株式会社)

(1) 会社概要

 

会社名 〇〇株式会社
所在地 東京都〇区〇丁目
業種 〇〇業
設立年月日 〇〇年〇〇月〇〇日
代表者名 〇〇〇〇
代表者経歴 ・略歴 ・資格

 

(2)事業内容

 

事業内容  
経営理念  
ビジョン  

 

(3)商品・サービスの内容

 

商品・サービス内容  
強み・弱み  
ターゲット顧客  
競合  

 

(4)SWOT分析

 

強み 弱み
   
機会 脅威
   

 

(5)競合分析

 

会社名 〇〇株式会社 △△株式会社
競合の商品・サービス内容    
価格帯    
競合の優位性    
競合と比較した自社の優位性    

 

6)収支計画

 

  損益計算書 (単位:円)
  直近実績 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
総売上 10,000,000 20,000,000 30,000,000 40,000,000 50,000,000 60,000,000
– 既存事業 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000
– 新規事業 0 10,000,000 20,000,000 30,000,000 40,000,000 50,000,000
売上原価 5,000,000 10,000,000 15,000,000 20,000,000 25,000,000 30,000,000
売上総利益 5,000,000 10,000,000 15,000,000 20,000,000 25,000,000 30,000,000
販管費 3,000,000 3,000,000 3,000,000 3,000,000 3,000,000 3,000,000
営業利益 2,000,000 7,000,000 12,000,000 17,000,000 22,000,000 27,000,000
経常利益 2,000,000 7,000,000 12,000,000 17,000,000 22,000,000 27,000,000
人件費 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000 5,500,000
減価償却費 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000

 

(7)事業の実施スケジュール

 

  実行内容
事業準備期間 1.人材:  オープニングスタッフの採用 2.製品:  魅力ある商品の開発 3.販売:  オープン前広告などの宣伝戦略
事業1年目   1.人材:  アルバイトの採用、教育 2.サービス:  オペレーションの安定化 3.販売:  認知度向上のための広告宣伝
事業2年目   1.人材:  アルバイトの採用 2.サービス:  PDCAの実行によりブラッシュアップ。常に改善を繰り返す。 3.販売:  リピーター客を作る。
事業3年目   1.人材:   人材が定着するよう職場環境を整備 2.サービス:  PDCAの実行によりブラッシュアップ。常に改善を繰り返す。 3.販売:  リピーター客の口コミにより、更なる主客増加を見込む。

 

(8)主取引先の情報

 

  会社名 シェア 回収サイト
販売先 ○○株式会社 100% 1ヶ月
仕入先 ○○株式会社 100% 1ヶ月

 

(9)人件費と役員・従業員数

 

  役員 正社員 パート
人数 1人 5人 3人
人件費 10,000,000円 20,000,000円 4,000,000円

 

(10)借入状況

 

借入先名 内容 借入残高 年間返済額
○○銀行 事業資金 20,000,000円 2,000,000円
△△銀行 住宅ローン 20,000,000円 2,000,000円

 

(11)必要資金と調達方法

 

必要資金 調達方法
設備資金 10,000,000円 自己資金 10,000,000円
運転資金 10,000,000円 金融機関借入 10,000,000円
合計 10,000,000円 合計 10,000,000円

 

経営計画書の活用方法

経営計画書にはさまざまな活用方法があります。ここでは、実際に経営計画書をどのような場面で活用するのか解説していきます。作成後の説明会、通常業務内での活用方法など、具体的なケースを交えて紹介します。

①経営計画書の説明

経営計画書の作成後は、社員に向けて説明し内容を共有することが重要です。社内に周知することで「計画に書かれた内容を実現する」という実感が湧きます。また、社長が思い描いていることや将来のビジョンを社員に伝える機会になります。社員にとっては、会社に対する帰属意識や業務のモチベーション向上へ繋がるでしょう。

②月次決算で進捗を確認

経営計画の進捗確認は、日々の業務に追われ疎かになりがちです。経営計画書は、内容や進捗状況について定期的なチェックが不可欠ですが、これらを習慣化するためには月次決算を行うことが有効です。月次決算を行うことで、計画の予算と実績をタイムリーに把握できます。予算と実績の乖離が大きい場合、「計画の数値目標が適切でないのか」「実施している施策が適切でないのか」を検討し課題を解決していきましょう。

③月次検討会の実施

月次決算は、社長にとっての進捗確認の方法ですが、月次検討会は、チームや個人の実績を確認する方法です。月次検討会を実施し、チームや個人の実績を共有しましょう。社員同士が互いにチェックすることで相互に良い刺激となり、実績の向上に繋がります。どうしたら実績を上げられるかを、チーム全体として考え意識を高めることが大切です。社員が目標に向かって頑張れるような月次検討会を実施しましょう。

④日々の会議や打ち合わせでの振り返り

経営計画書は、日々の会議や打ち合わせなど会社のあらゆる場面で活用できます。経営計画書には、会社の理念に基づいた計画内容が記されています。これを振り返ることによって、自分の判断と会社の方向が相違していないかを確認できます。経営計画書を社内の共通言語とし、折々の意思決定を客観的に判断していくこと大切です。

まとめ

本記事では、経営計画書の書き方についてポイントや注意点を交えて解説していきました。経営計画書の作成は、金融機関への提出だけが目的ではなく、自社の経営状況を見直し改善に繋げる重要な機会です。ご紹介したポイントを押さえ、実現可能性の高い経営計画書を作成しましょう。

また、自社だけで経営計画書を作成することが難しい場合、専門家のサポートを受けることも選択肢の一つです。専門家のサポートを受けることで、自社の現状分析や改善方法について深掘りすることができます。専門家ならではの、さまざまな視点からのアドバイスを受けることができるメリットもあります。経営計画書を作成する際には、専門家サポートも検討してみてください。


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