経営計画書と事業計画書の違いとは?内容と書き方も分かりやすく解説
どちらも会社経営に関する計画である「経営計画書」と「事業計画書」。
一見すると同じようなものに思えますが、実際は位置づけが少し違います。
結論を先に言うと、経営計画は事業計画より広範囲にわたり、なおかつ概念的に上位に位置するものです。「事業計画は経営計画の一部」と言うこともできます。
ここでは経営計画書と事業計画書の違いやそれぞれの特徴、書き方や作成のポイントを分かりやすく解説していきます。
目次
「経営計画書」「事業計画書」の違いとは?
会社経営を航海に例えるならば、経営計画書はコンパスで、事業計画書は具体的な渡航プランと言えます。
どちらも会社経営になくてはならないものです。
これらが欠けていると、行き当たりばったりの経営になりがちで、売り上げが伸び悩み、行き詰ってしまう恐れがあります。
また、経営計画書と事業計画書をすでに作成している会社でも、この二つは決定的に区別されているものではないため、内容が混同してしまいがちです。
本来経営計画書に盛り込むべき視点を事業計画書に入れたり、逆に事業計画書で文書化すべきことを経営計画書に入れたりしてしまう会社も少なくありません。
端的に言うと、経営計画とは、事業計画を包括しつつ、経営理念や会社の未来像も含んだ全体的・長期的・戦略的な計画です。
対して事業計画は、経営計画とは対照的に、部門的・短期的・戦術的な計画と言えます。
したがって、概念の大きさ順で並べると、「経営計画」→「事業計画」→「部門別アクションプラン」となります。
このように、経営計画書と事業計画書はその範囲や性質が異なりますが、どちらも会社経営に役立つ重要なものです。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
経営計画書とは?
経営計画書とは、「会社のあるべき姿」を見据え、現状とのギャップを埋めるための計画を文書化したものです。
経営計画には、以下の3つがあります。 ・長期経営計画(5~10年) ・中期経営計画(3~5年) ・短期経営計画(1年)
その中でも、一般的に経営計画と言えば中期経営計画のことを指す場合が多いです。
それは、世界情勢が目まぐるしく変わる昨今、5~10年もの長期に渡る計画を立てることは非常に難しいためです。
そして、短期経営計画は中期経営計画を1年に落とし込んだものであるため、やはり中期経営計画が重要になります。
基本構成は、①使命感(ミッション)、②経営理念、③経営基本方針、④個別方針、⑤中長期計画、⑥当期経営目標、⑦当期数値目標の7項目です。
以下、詳しく説明していきます。
①使命感(ミッション)
企業や個人が社会において果たすべき使命や任務のことです。
②経営理念
企業を運営するうえで守るべき精神や行動の方向性を明文化しておきましょう。
③経営基本方針
経営理念を実現するための会社の基本的な姿勢や考え方のことです。
④個別方針
商品・サービスに関する方針、顧客に関する方針、販売促進に関する方針など、経営基本方針を項目ごとに細分化したものです。
⑤中長期計画
3~5年後に会社が目指すべき姿を具体的に明示しましょう。
⑥当期経営目標
直近1年間にどれだけの利益が必要で、そのためにどれだけの売上を目指すのかを示した経営数値目標です。
⑦当期数値目標
利益や売上など会社全体の数字について、月別、お客様別などに細分化した数値目標です。
このように、経営計画書は今後会社をどのように経営していくかを中長期的に計画したものです。
事業計画書とは?
事業計画書とは、「会社のあるべき姿」に到達するための具体的な実行計画を文書化したものです。
事業計画を立てるということは、「会社のあるべき姿」という未来の点と、「現状」という現在の点をどのように繋いだらいいのか考えることと言ってもいいかもしれません。
そして、事業計画書は金融機関にとって非常に関心の高いポイントです。
金融機関にとって、貸したお金が返ってくるかどうかを見極めるための資料となるので、融資担当者が真っ先にチェックします。
外部の人が読んでも分かるように、簡潔に、かつ分かりやすくまとめましょう。
また、「創業計画書」は創業の際に作成する事業計画書ですので、作成するタイミングが異なるだけで内容は同じになります。
基本構成は、①創業者・創業メンバーのプロフィール、②ビジョン・理念・目的、③事業内容、④自社のサービスや商品の強み・特徴、⑤市場環境・競合について、⑥販売やマーケティング戦略、⑦生産方法・仕入先など、⑧売上に関する計画、⑨利益に関する計画、⑩資金調達に関する計画の10項目です。
以下、詳しく説明していきます。
①創業者・創業メンバーのプロフィール
経歴や資格を記入します。事業内容に関連するものは詳しく記載することでアピールしましょう。
②ビジョン・理念・目的
その事業を通してどのように社会に貢献できるかを記載します。
③事業内容
「誰に」「何を」「どのように提供するか」という3点を押さえて、事業の大まかな内容を説明します。
④自社のサービスや商品の強み・特徴
競合他社をよく分析したうえで、自社にしか提供できない価値があることを伝えましょう。
⑤市場環境・競合について
市場ニーズや事業に関連する政策の動向、また競合他社の強み・弱みなどをしっかり分析します。
⑥販売やマーケティング戦略
どのようなルートで社会に自社の商品・サービスを知ってもらうのか、またそのためにどれだけのリソースを割くのかを説明します。
⑦生産方法・仕入先など
商品・サービスの安全性が担保された生産方法や仕入れ先を記載します。
⑧売上に関する計画
どのように売上をあげていくか、原価はどの程度になるかといった計画を記載します。売上計画と売上原価計画は、商品・サービスごとに分けて書きましょう。
⑨利益に関する計画
利益を計算するためには以下の順で予測します。
売上→売上原価→人件費→減価償却費→販売費→管理費→借入利息→法人税等
これらを予測することにより、利益を出す事業にするためにはどこで売上を上げ、どこの費用を下げればいいのかが見えてきます。
⑩資金調達に関する計画
「利益がある=資金がある」ということではないため、この項目で融資の返済に充てる資金があることをしっかりアピールしておくことが重要です。
このように、事業計画書は確かな数字が入った具体的な実行計画書です。
差異からわかる計画書作成のポイント
経営計画書も事業計画書も簡潔に、情報の過不足なく、事業を知らない人が読んでも分かりやすい内容に仕上げましょう。
グラフや図を挿入すると分かりやすくなります。
また、各項目の内容に一貫性がなければ説得力のない計画書になってしまいます。整合性が取れているかどうか必ずチェックしましょう。
経営計画書・事業計画書のどちらにも言えることですが、記載する数字には根拠が求められます。
今までの経営で得たデータや、官公庁の資料など、きちんとしたデータに基づき数値を出すことが重要です。
そして、それらのデータは参考資料として記載しておきましょう。
今まで経営計画書も事業計画書も作ったことがないという方は、自分で一から作ることに高いハードルを感じてしまうかもしれません。
そういった場合は、インターネット上に公開されているフォーマットを参考にしたり、テンプレートを埋めてみたりするのがおすすめです。
以下、参考になるサイトを紹介します。
≪経営計画書≫
経営計画書や創業計画書の書き方とサンプル
https://www.kaigyou-sougyou.com/article/13972984.html
高収益な良い会社を作るための経営計画書の作り方【テンプレート付き】
≪事業計画書≫
事業計画書の作成例 | 起業マニュアル | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-1-3.html
各種書式ダウンロード|国民生活事業|日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
経営計画書も事業計画書も、明確に記載項目が決まっているわけではありません。
サンプルがしっくりこなかった時は、自社に合うようにアレンジを加えてもよいでしょう。
ただし、融資や補助金を受ける際には、それらを実施している金融機関や公的機関がテンプレートを指定していることも多いです。
その場合は指定されたテンプレートに沿って作成を進めましょう。
経営計画を作成してから事業計画に着手しよう
経営計画書と事業計画書のどちらを先に作るか迷った時は、まず経営計画書を作成することをおすすめします。
なぜかと言うと、まず経営計画を立てることによって「会社のあるべき姿」を明確にした上で、そこに辿り着くためにやるべきことを事業計画に落とし込んでいく方が効率的だからです。
しかしどうしても事業計画書しか作る余裕がないという場合もあるかもしれません。
金融機関から融資を受ける際に必要になるのは事業計画書だからです。
必ずしも経営計画を立ててからでないと事業計画に着手できない訳ではありませんが、そこは自社のステージに合わせて、余裕があればぜひ経営計画から立ててみましょう。
「経営計画書」「事業計画書」を立てるメリット
経営計画書と事業計画書を作成するメリットは大きく分けて4つあります。
・指針ができる
経営計画や事業計画を立てていない会社は、コンパスや具体的な渡航プランがないまま航海をしているようなものです。
そのままでは行き当たりばったりの経営になり、伸び悩み、行き詰ってしまう恐れがあります。
対して、経営計画や事業計画という指針があれば、もしズレた方向に進んでしまった時も、そのことにすぐ気付くことができ、本来進むべきルートに帰ってくることができます。
そのためにも定期的に経営計画や事業計画に立ち返ってくる必要があります。
計画は立てっぱなしにせず、PDCAサイクルを回すことが重要です。
・現状把握ができる
「会社のあるべき姿」という理想の未来に向かって歩き出すためには、「現状」という現在立っている地点をよく見る必要があります。
そうすると自ずとよく現状把握ができ、改善策が出てきやすくなります。
また、今まで気づけなかった新たなビジネスチャンスを発見する可能性も増えるでしょう。
そして、経営計画書を作ることによって、経営者が自らの考えをはっきりさせることができるという利点もあります。
クリアになった思考で事業計画書を作れば、より実現可能性の高い計画書ができ、融資を受けられる可能性が上がったり、取引先に評価されたり、ビジネスチャンスが拡大します。
・組織で目標を共有できる
経営プランや事業プランが経営者の頭の中にあるだけでは、組織で自社の目標やプランを共有することはできません。
経営計画書で経営理念を明示して経営者の想いを伝え、事業計画書でアクションプランを周知することにより、従業員は目標を達成するために何をすればいいのか明確に理解することができ、仕事の効率が上がります。
また、経営者と従業員の向いている方向が違うといったすれ違いが起こることを避けることができます。
・外部からの信用が高まる
金融機関は融資の審査の際に事業計画書をよく見ています。
そのため、そもそも事業計画書を作成しているかいないかによって、その会社への信用度は大きく違ってきます。
しっかりした事業計画書を作ることは、返済能力があると判断され、融資の審査に合格しやすくなる一助になるでしょう。
外部の人が読んでも分かりやすい説得力のある事業計画書を作れば、資金調達がしやすくなったり、会社の信用度が増したりして、会社の発展につながってくれます。
まとめ
経営計画書と事業計画書は混同されがちですが、位置づけが少し違うものです。
経営計画書の方がより広範囲にわたるもので、「会社のあるべき姿」を見据え、現状とのギャップを埋めるためのものです。
対して、事業計画書は「会社のあるべき姿」に到達するための具体的な行動計画を明示したものです。
どちらも作成が難しそうと考えてしまうかもしれませんが、自分で一から作る必要はありません。
配布されているテンプレートを参考に、経営計画書→事業計画書の順番で作ってみてください。
経営計画書と事業計画書を作成することは、経営の指針ができたり、現状把握ができたり、目標を組織で共有出来たり、外部からの信用が高まったり、様々な面でメリットがあります。
しかし、出来上がったことに満足し、活用せずに放置してしまっては、せっかくの計画書が宝の持ち腐れです。
定期的に現状と計画書を比較する時間を設け、ズレた方向に進んでいる時はすぐに軌道修正できるようにすることが効率的な計画書の使い方です。
行き当たりばったりの経営から脱却するためにも、ぜひ経営計画書と事業計画書を作成してみてください。
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