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2022.02.13

失敗しない補助金申請書(経営計画書、補助事業計画書)の書き方

「補助金の申請書は、どう書けばいいの」
補助金に関心があっても、実際に申請するまでには、いくつかのハードルがあります。
今回は、小規模事業者持続化補助金を例にとりながら、補助金申請の最大の難関である経営計画と補助事業計画の書き方について説明します。

経営計画書と補助事業計画書とは?

補助金には、対象となる事業者と事業の要件があらかじめ示されます。
この要件をみたさないと、せっかく申請しても補助金を受けることはできません。

給付金の場合は、給付要件が満たせば、給付金を受けとることができ、使い道は自由です。

しかし補助金は給付金と異なり、要件をみたしたからといって給付を受けられるわけではありません。

補助金の原資は公金ですので、補助金の要件には政策目的があります。
この政策目的からみて、優れた内容の申請書から順に採択されます。

「採択される」とは、給付対象に選ばれることをいいます。
採択されたからといって、申請した補助金額を受けとれるかどうかはわかりません。

たとえば、経費を支払うときに
見積りをとる→請求書を受けとる→対象期間内に原則として口座振込で支払う
という手順で証憑を残しておかないと、補助金の対象として認められず、減額される場合があります。

また、補助金額が50万円になるように申請しても、小規模事業者持続化補助金の「一般型」を例にした場合、たとえばチラシやパンフレットを作成して宣伝事業をおこなったとしましょう。
実際にデザインしたチラシに、既存のサービスの宣伝部分があると、この面積分は補助金の対象とは認められず、減額されてしまいます。

審査はあくまで提出された申請書類一式についておこなわれます。

申請書類の中でも、自社の経営状況や目標などを説明する経営計画書と、これから補助金を受けようとする事業を説明する補助事業計画書は、相互に関連していて、審査対象の中心となります。

小規模事業者持続化補助金の要件

小規模事業者持続化補助金には、対象となる事業に応じて、現在は「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」にわかれています。

美容室の場合、対象となる「小規模事業者」とは、どちらの制度でも、正社員と正社員に準ずるスタッフの数が5人以内の事業者と決められています。
ただし、このなかには、経営者自身や役員などはふくまれません。

「一般型」は、地道な販路開拓によって1年以内に売上増が見込まれる事業が対象です。
ここで、わざわざ「地道な」販路開拓とされていることから、大々的に販路を拡大し、大幅な売上増を実現するような事業が求められているわけではないことがわかります。

美容室にとっての販路開拓は、新しい顧客層の獲得か、既存の顧客層の来店頻度を上げるか、いずれかとなる場合が多いでしょう。

一方、「低感染リスク型ビジネス枠」では、新型コロナの感染拡大防止と事業継続を両立させるための、人と人とが接触する機会を少なくする事業が対象とされています。

人と人とが接触する機会が減少しないような感染防止対、策は、「一般型」ではまったく認められていませんが、「低感染リスク型ビジネス枠」では、補助金の上限の4分の1となる25万円までの範囲で認められています。

「一般型」の概要と提出書類

小規模事業者持続化補助金「一般型」は、補助金の上限が50万円、補助率は3分の2です。
補助率が3分の2ですので、補助事業をおこなうにあたり、50万円を超える部分は、自己資金や融資などで賄う必要があります。

なお、実際に補助金が入金されるのは、事業をおこなって実績報告を提出したあとになります。

補助事業が終了すると実績報告を提出し補助金の給付を受けられることになりますが、この実績報告や提出を求められている資料に不備があった場合には、当初の交付予定金額が減額されることもあります。

「一般型」には特別枠があり、法人設立日が2020年1月以降(個人事業主の場合は開業日が2020年1月以降)、あるいは、認定市区町村による「特定創業支援等事業」による支援を3年以内に受けた事業者には、補助金の上限が100万円に引きあげられます。

現在「一般型」は、第7回目の公募が受けつけられていて、締め切りは2月4日です。

第8回目の公募は、6月初旬頃に受けつけが締め切られる予定です。
詳細はまだ未定ですが、一部の対象事業者に、利益が赤字となっている事業者に対する特別枠が設けられるなど、内容の拡充が図られることになっています。

小規模事業者持続化補助金は1事業者が単独で申請するだけでなく、複数の事業者による共同での申請も認められています。
以下ではとくに断らないかぎり、単独申請について説明していきます。

「一般型」の提出書類は
令和元年度補正予算 小規模事業者持続補助金〈一般型〉に係る申請書
経営計画書兼補助事業計画書①
補助事業計画書②(経費明細表・資金調達方法)
令和元年度補正予算 小規模事業者持続補助金〈一般型〉に係る事業支援計画書(商工会・商工会議所に提出。支援商工会・商工会議所が記入)
小規模事業者持続化補助金交付申請書(「事業承継加点」申請する場合には付加されている診断表を支援商工会・商工会議所が記入)
です。

さらに、申請者が個人事業主の場合は直近の確定申告書または開業届、法人の場合には直近1期分の貸借対照表と損益計算書なども必要です。

これらの書類をまとめて商工会・商工会議所に郵送するか、電子申請により提出します。

なお、商工会・商工会議所については、事業者の住所によって、商工会が担当している地区と、商工会議所が担当している地区にわかれていて、重なることはありません。

また、画書や補助事業計画書を作るときに、「低感染リスク型ビジネス枠」では任意とされていますが、「一般型」では商工会・商工会議所に相談する必要があります。

審査のポイント

公募要項には、どのように審査が行われるか説明されています。

以下では、小規模事業者持続化補助金「一般型」を例にとり、みていきます。

〔参考〕基礎審査のポイント
次の要件をすべて満たすものであること。要件を満たさない場合には、その提案は失格とし、その後の審査を行いません。
①必要な提出資料がすべて提出されていること
②「補助対象者」「補助対象事業」の要件に合致すること
③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
④小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取り組みであること
(小規模事業者持続化補助金「一般型」の公募要領p58 koubo_r1_ver13.pdf (jizokukahojokin.info) より抜粋)

まず、①すべての必要書類を提出したうえで、②正社員と正社員に準ずるスタッフの合計が5人以下である小規模事業者で、商工会・商工会議所の支援を受けながら、地道な販路開拓をおこなう事業であることが審査を受けるための要件です。

③、④につきましては、経営計画書と補助事業計画書、そして補助事業が終わったあとに提出する実績報告などから総合的に判断されます。

なお、提出書類に不備があった場合は、修正の指示をもらえる場合もありますが、締め切り直前の場合は不採択となってしまう場合もありますので、日程的な余裕をもって申請するようにしましょう。

次に、政策目的となる加点審査のポイントについては、公募要項で次のように説明されています。

〔参考〕「一般形」の加点審査のポイント
経営計画書・補助事業計画書について、以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価が高いものから順に採択を行います。
自社の経営状況分析の妥当性
◇自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか
経営方針・目標と今後のプランの適切性
◇経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか
◇経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか
補助事業計画の有効性
◇補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現性が高いものとなっているか
◇地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか
◇補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか
◇補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか
積算の透明・適切性
◇事業費の形状・積算が正確・明確で、事業実施に必要なものとなっているか
(小規模事業者持続化補助金「一般型」の公募要領p58~59 koubo_r1_ver13.pdf (jizokukahojokin.info) より抜粋)

さらに、次の項目も加点要素として「審査の観点」にあげられています。

代表者が60歳以上で、後継者候補が中心となって補助事業を実施する事業者
基準日までに「経営力向上計画」の認定を受けている事業者
過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者
Jグランツを用いて電子申請を行った事業者
令和3年7月1日からの大雨で被害を受けた熱海市の事業者
賃金引上げプランでの申請事業者
(小規模事業者持続化補助金「一般型」の公募要領より抜粋)

なお、賃金引上げプランで申請する場合、優先席に採択されることが公募要項に明記されていますが、補助事業が終了してから1年後に実際に賃金の引上げが実施できていない場合などには、交付された補助金を全額返還しなければなりませんので、注意が必要です。

書き方のポイント

補助金は、要件を満たしているだけは採択されません。

一般的に、不備がない書類を提出した場合の採択率は40~50%といわれています。

提出したあとに説明を加えることはできませんので、はじめて経営計画書と補助事業計画書を見る審査員にも、申請内容がわかりやすいように、できるだけ関連する図表や写真などを使うことを、まず心掛けましょう。

次に、経営計画書と補助事業計画書の書き方について具体的に説明していきます。

経営計画の書き方

まず、経営計画の書き方について、小規模事業者継続化補助金「一般型」を例にして説明します。

まずは、予算を決めましょう。
自己資金(融資などの借入金を含む。以下同様)が25万円以上で事業規模が75万円以上であれば、「一般型」の補助率は3分の2なので、原則として補助金額は上限の50万円になります。

自己資金が15万円で事業規模が75万円の場合は、補助率が3分の2ですので、補助金の上限は30万円となります。

なお、自己資金が100万円で、事業規模が300万円の場合でも、補助金額は50万円が上限となりますので注意してください。

実際には、事業を実行するさいに、補助対象期間内に支出した経費の一部が認められなければ、認められていた補助金額はその分削減されます。

また、補助金が入金されるのは実際の経費の支出が終わった後になりますので、自己資金が25万円以上(事業規模75万円以上)で予算を立てても、経費の立替分は別に用意しておかなければなりません。

なお、本記事は初めて申請書を書こうとする美容室の経営者が、実際に申請書に記入することを想定して説明していますが、本記事通りに申請書を書いて申請したとしても、必ず採択されるわけではないことを、あらかじめご承知おきください。

経営計画書に書き込まなければならない項目は、

企業概要
顧客ニーズと市場の動向
自社や自社の提供するサービスの強み
経営方針・目標と今後のプラン

となっています。

経営計画書・補助事業計画書を作るときに、上手い文章を書こうとすると、内容よりも文章をまとめることが大きなハードルとなってしまいます。

そこで、今回は箇条書きで経営計画書と補助事業計画書を書いていくことにします。

企業概要について

企業概要は、自社の紹介です。
以下では、文例をあげていきますので、必要に応じて、自社にあてはまるように、〇、□、△に言葉や数字を当てはめてみてください。

文例
創業は○○○○年□月△日です。
住所は○○県□□市です。
業種はサービス業です。
サービス業の内容は美容室です。
スタッフは〇名です。

次に、自社のスタッフの特徴をあげてみます。
美容室に限らず小規模事業者の場合は、スタッフの個性がそのまま自社の長所になることも多いです。

文例
スタッフの年齢層は□□代、△△代、…(中略)…です。
Aはカット技術に優れています。
Bはコミュニケーション能力があります。
Cは業界の動向に詳しいです。
Dは、…(中略)…です。
(具体的な名前を出すと個人情報の保護の観点から問題になる場合がありますのでお気をつけください)

顧客ニーズと市場の動向

まず、自社の顧客層を類型化してみましょう。
類型化とは、年齢層、性別、職業、住所、利用していただいている期間、来店頻度、利用単価、などで顧客を分類することです。
利用期間や来店頻度、利用単価などは、実際の平均をとるといいでしょう。

分類が終わったら、それぞれの割合を出してみましょう。
表にすると、わかりやすくなります。

文例
弊社の顧客層は次の通りです。

以下、中略。

次に、顧客のニーズです。
顧客のニーズを知るためには、顧客へのアンケートをとることをおすすめします。
アンケートは客観的な資料になりますし、経営計画書の説得力が増します。

回収したアンケートの数は、多ければ多いにこしたことはありませんが、最低30枚~50枚は欲しいところです。

アンケートを実施する余裕がない場合には、これまでの顧客との会話などから、「今のサービスに満足しているか」、「今すぐ利用したいサービスがあるか」、「すぐではなくてもあればいいと思っているサービスは何か」を言葉にしていきます。

顧客ニーズについては、コロナ前とコロナ後の利用者の意識変化などをネットで調べてみてもいいでしょう。

文例
顧客は、弊社で提供している今のサービスに概ね満足しています。
いますぐあればいいと思っているサービスは、○○(たとえば、日常のヘアケアのアドバイス、親子割引サービスなど)です。
今後望まれているサービスは、□□(たとえば、営業時間の延長、駐車場の設置など)

次に、市場の動向です。

販路開拓をしていくためには、新しい顧客層を獲得するか、既存の顧客層の来店頻度をあげるか、もしくはその両方をめざすかが必要となります。

そこで、市場動向もこれからの販路開拓に関連づける必要があります。

大切な視点は、ふたつです。
まず、自社の中心となっている顧客層と新しくターゲットにしようとする顧客層が、これから増えるのか、減るのかという点です。

次に、ライバル店がどれくらいあって、どのようなサービスを提供しているのか、という点です。

中心となる顧客層とターゲットにしようとする顧客層の大まかな動向は、その地域の人口動態の予測がもとになります。

たとえば、2020年の日本の人口は1億2571万人で、65歳以上人口は3619万人、高齢化率は28.8%です(『令和3年版高齢社会白書』)。

ちなみに、2015年の日本の人口は1億2711万人、65歳以上人口は3392万人、高齢化率は26.7%でした(『平成27年版高齢社会白書』)。

この資料だけでも、直近の5年間で、日本の総人口は140万人も減りながら、65歳以上人口は227万人も増えています。

地域によっては、日本全体のスピードよりも速く高齢化が進んだり、逆に緩やかであったりと差があります。

そうした資料の参考になるのが「RESAS」(https://resas.go.jp/)です。

「RESAS」は、中学校・高校向けの学習資料として総務省と経済産業省が開発したサイトです。
地域に年少人口、生産年齢人口(15歳~65歳未満)、高齢化人口の推移と、2045年までの予測は、簡単な操作ですぐにみることができます。

文例
弊社のこれまでの顧客層の20××年の人口は、○○○○〇人でした。
弊社のこれまでの顧客層は今後5年間で、△△△△△人になると予測されています。
弊社の新しくターゲットとする顧客層の20××年の人口は、□□□□□人でした。これは
弊社の新しくターゲットとする顧客層は今後5年間で、△△△△△人になると予測されています。

小規模事業者持続化補助金の「一般型」では、事業計画のなかに、「地道な」販路開拓を含めなければなりません。

申請書を書く流れとしては、最初おおまかに顧客ニーズや市場動向をみながら、できるだけ詳しくターゲット層の分析をしていくほうが書きやすいと思います。

自社や自社の提供するサービスの強み

メディアで自社のサービスなどが取り上げられたことがあれば、それが説得力のある強みとなります。

商工会・商工会議所などが紹介している先行事例を参考にすると、どのような特徴が店の強みになるか、伺い知ることができます。

そもそも、お客様に来店していただいているということは、自店にお客様に選ばれている理由があることになります。

この理由が、そのまま自社の強みの一部です。

さしあたって立地条件、最新設備の導入、技術水準、営業時間、創業からの年数、スタッフの気遣いなどが「強み」として考えられるでしょう。

文例
自社は最寄駅から徒歩〇〇分で、利便性が高いです。
自社では、△△の最新設備を導入しています。
自社スタッフは□□コンクールで入賞しています。
自社スタッフは、どんなお客様の要望もかなえることができます。
自社は、ヘアケアに関する知識・技術を豊富に持っています。
自社の閉店時間は21時までとなっており、勤め先帰りの方に喜ばれています。

経営方針・目標と今後のプラン

自社の強みをさらにいかして、販路を開拓することが経営方針・目標としては自然です。
自社の強みはどうすればより強く、よりいきてくるか、考えてみます。

自分ひとりで考えても、なかなかいい考えが浮かばないときは、「ブレインストーミング」を試してみましょう。

「ブレインストーミング」のやり方は、経営者自身と、信頼できるスタッフ2~3人でおこなうといいでしょう。

まず、自社の強みのいかし方について、思いつくことを何でもあげてみます。
出てきたアイデアを、付箋などに書いておきます。

ひとつだけ注意することは、他人の意見を批判しないというルールを最初に決めることです。
「こんなことを言ったら批判されるかも」と思っていると、委縮して意見がなかなか出てこなくなってしまいます。

ひととおりアイデアが出た段階で、付箋に書いたアイデアを、共通する性質などによりグループわけします。このグループわけを重ねていくと、もうこれ以上グループにわけられない状態になります。

この最後まで残ったグループが、自社の強みを生かすための枠組みとなり、残ったグループの数と同じ数だけ方針ができます。

そして、グループ内の言葉をつなぎ合わせたものが、目標となります。

さらに、この目標を達成するための具体的な手段が「今後のプラン」です。

「ブレインストーミング」は、新しい顧客層をターゲットにする場合にも応用できます。

今までのスタッフ・設備ではできなかったことで、取り組んでみる価値があることを「ブレインストーミング」するのです。

ここで言葉となった「今後のプラン」は、次に説明する補助事業計画書の概要となります。

文例は、ブレインストーミングでまとめられた内容という想定です。

文例
経営方針・目標は、現在中心となっている30代主婦層に加えて、同年代のOLを新規の顧客層の獲得とします。
経営方針・目標は、さらに同年代の男性も新規の顧客層の獲得とします。
今後のプランは、帰宅途中のOL・ビジネスマンに利用しやすいように営業時間を変更します。
今後のプランは、男性にも入りやすい雰囲気にするために改装します。
今後のプランは、働く30代の男女がスーツにフィットする髪型の見本・レパートリーを増やします。
今後のプランは、働く30代の男女が仕事帰りのひとときに、貴重な安らぎを提供できるリラックスタイムを提供します。

補助事業計画書の参考になる記載例

次に、補助事業計画書の書き方を説明していきます。

補助事業計画書の項目は次の通りです。

補助事業で行う事業名
販路開拓等(生産性向上)の取組内容
業務効率化(生産性向上)の取組内容
補助事業の効果

補助事業で行う事業名

30字以内で事業名をつけます。
事業名のつけ方はとくに決められていませんが、事業内容を思い浮かべることができるものがいいと思います。

文例
男性利用客を増やすための店内改装事業
OL・ビジネスマン取込大作戦
24時間受付ヘアケア相談室

販路開拓等(生産性向上)の取組内容

先ほどの経営計画書で、「今後のプラン」は補助事業計画書の概要になっていることを説明しました。

残っている作業は、最初に決めた予算の範囲で、どのように「今後のプラン」を実現するかということになります。

ただし、小規模事業者持続化補助金の事業要件として、販路開拓等の取り組みを「今後のプラン」に含める必要があります。

販路開拓に必要なことは、新しく提供するサービスを多くの方に知ってもらうことです。

そのためには、宣伝・広告の方法を考えます。
宣伝・広告の方法は大まかにわけて、3つあります。

チラシ・パンフレットの印刷作成と配布
SNSなどを中心としたインターネット広告
展示会などのへの出展

広告をみて問い合わせなどの行動がおきる割合を反応率といいますが、一般的な反応率は、0.01%から0.3%程度といわれています。

ターゲット層の目を引くデザインになっているか、お得感がどれだけあるかなどによって反応率は変わってきます。

実際に有料でサービスを利用してくれる方の割合を成約率といいます。

成約率は、反応率よりも小さくなりますので、反応率は高いに越したことはありません。

チラシ・パンフレットの配り先を、ターゲット層にできるだけ絞ることができれば、反応率は高くなります。
配布するターゲット層を細かく設定できるので、近年急速に広まっているのがSNSなどのインターネット広告です。

審査の加点ポイントにも、インターネットの使用が挙げられていますので、インターネット広告を検討する価値は高まっています。

次に、予算に応じて、デザイン料、配布枚数、配布タイミング、配布回数、あるいは出展回数を決めていきます。

広告を出すにしろ、展示会に出展するにしろ、新規におこなうサービスには含まれない、既存サービスの宣伝する部分などは補助金の対象外になりますので、注意してください。

なお、反応率や成約率は内容に宣伝内容によって大きく変わります。

経営計画書・補助事業計画書をつくるときに、適切な数値がどのくらいになるのか、いちど商工会・商工会議所に相談してみてください。

文例
弊社では、「今後のプラン」を事業として計画します。
販路開拓のため「今後のプラン」の内容を、インターネット広告で宣伝します。
インターネット広告は、SNSを中心におこないます。
閲覧回数の予算は、1か月に〇〇万円とし、□か月おきに△回行います。
この広告で新サービスに関心を持ってもらえる顧客数は2か月で50人程度と想定します。そのうち有料の利用者は、40%程度の20人です。

業務効率化(生産性向上)の取組内容

この項目は任意記入となっています。
業務効率化とは、経費が削減される取組と考えるとイメージしやすいと思います。
当てはまる取組がなければ、この項目は記入する必要がありません。

補助事業の効果

補助事業の効果では、販路開拓等の取組や業務効率化の取り組みを通じて、どのように生産性向上につながるのかを必ず説明することが求められています。

「今後のプラン」(補助事業)の効果を記入するためには

見込まれる新しい顧客の増加数
これまでの顧客の増減数
新しいサービスの客単価(平均値を推測)
これまでの顧客の客単価の増減値

の推計が必要です。

見込まれる新しい顧客の増加数

小規模事業者持続化補助金「一般型」の事業目的が、「地道な販路開拓」の実現とされていますので、新しい顧客は大幅に増加する必要はありません。

まずは、1か月など期間を区切って、宣伝手段による一般的な反応率をもとに見込まれる新しい顧客の増加数を推計します。

チラシ・パンフレットの作成・配布であれば、一般的な反応率は0.01~0.3%程度です。
たとえば、チラシ・パンフレットを2万枚作成した場合には2人~60人の問い合わせの増加が見込まれ、実際にそのサービスを有料で利用する人は、問い合わせ数の50~70%程度であると仮定すれば1人~40人程度の新規利用客が見込まれることになります。

問い合わせ数のうち、実際に新サービスを有料で利用する人の割合を高めることができる手段・方法があれば、積極的に記入しておくといいでしょう。

これまでの顧客の増減数

新規サービスをはじめたことによって、これまでの顧客がどのように影響を受けるかを推計します。

新規顧客の受付時間には、これまの顧客の受付をおこなわないなど極端な場合には、新規顧客数が増えたとしても、これまでの顧客数が減少してしまいます。
既存の顧客が影響を受ける根拠となる資料があれば積極的に活用しましょう。

新しいサービスの客単価

新しいサービスの客単価を類似サービスの価格などを参考に決定あるいは推計します。
新しいサービスがひとつのメニューからなるサービスであれば、そのメニューの金額が新しいサービスの客単価になります。

また、複数のメニューからなるサービスであれば、平均客単価を推計します。

新しい顧客数×平均客単価が売上の増加分の一部となります。

これまでの顧客の客単価の増減値

これまでの顧客も新しいサービスを利用することができれば、これまでの客単価も変化しますので、客単価の増減額を推計します。

推計の根拠となる資料としては、既存のサービス単価や他店のサービス単価があります。
たとえば、他店で提供しているサービスの廉価版を新たに提供する場合を考えます。

既存の顧客数の増減数×平均客単価の増減額を計算すると、補助事業の効果がわかります。。
既存の顧客数の減少や客単価の減少は、売上の減少要因となりますので、なるべく避けるようにしましょう。

また、補助事業の効果については、3~5年間の売上増の推計を計上すると、中期的な展望を示すことができます。

そのためにまず1年間の売上増を推計し、前提条件が変化して調整する必要があるかどうか見極めながら、3~5年の間の売上増の見込を算定するといいでしょう。

文例
宣伝広告で、1か月に50人程度の問い合わせが想定されます。
問い合わせ数の内、2か月でおよそ40%の20人が有料サービスを利用すると見込まれます。
宣伝広告は、1か月ごとに3回行います。
新規サービスの平均客単価は3,000円と推計されます。
したがって、補助事業の開始から半年で、新規売上増は18万円となります。
新サービスは既存客のサービス利用には影響を与えません。
事業開始から半年以降は、新規顧客のリピート率を70%と仮定し、口コミで新サービスが広まることも想定して、年間の売上増を36万円と推計します。
今後3年間についてみますと、約100万円が売上増として見込まれます。

補助事業計画書のテンプレート(ひな形)

これまで説明で、実際に補助事業計画書を書くと、次のようになります。
ただし、補助事業計画書②に含まれる経費明細表と資金調達方法は除きます。

補助事業で行う事業名

OL・ビジネスマン取込大作戦

販路開拓等(生産性向上)の取組内容

今後のプランは、帰宅途中のOL・ビジネスマンに利用しやすいように営業時間を変更します。

今後のプランは、働く30代の男女がスーツにフィットする髪型の見本・レパートリーを増やします。

今後のプランは、働く30代の男女が仕事帰りのひとときに、貴重な安らぎを提供できるリラックスタイムを提供します。

新しくサービスを導入するにあたり、販路開拓のため、インターネット広告で宣伝します。

インターネット広告は、SNSを中心におこないます。

閲覧回数の予算は、1か月に〇〇万円とし、□か月おきに△回行います。

この広告で新サービスに関心を持ってもらえる顧客数は2か月で50人程度と想定します。そのうち有料の利用者は、40%程度の20人です。

業務効率化(生産性向上)の取組内容

(任意記入ですので、予定している事業にあてはまる項目があれば記入します)

補助事業の効果

宣伝広告で、1か月に50人程度の問い合わせが想定されます。

問い合わせ数の内、2か月でおよそ40%の20人が有料サービスを利用すると見込まれます。

宣伝広告は、1か月ごとに3回行います。

新規サービスの平均客単価は3,000円と推計されます。

したがって、補助事業の開始から半年で、新規売上増は18万円となります。

新サービスは既存客のサービス利用には影響を与えません。

事業開始から半年以降は、新規顧客のリピート率を70%と仮定し、口コミで新サービスが広まることも想定して、年間の売上増を36万円と推計します。

今後3年間についてみますと、約100万円が売上増として見込まれます。

まとめ

補助金の申請書を書くのは難しいと思われていますが、書き方を工夫することで、そうした印象を変えることができるのではないでしょうか。

商工会・商工会議所に相談もできますので、第一目標として、相談を受ける側がいろいろとアドバイスできるところまで、経営計画書と補助事業計画書を記入するということおすすめします。

経営計画書にしろ、補助事業計画書にしろ、記入の一番のポイントは、自社の強みを言葉で表現することです。

自社の強みが言葉になれば、その強みをもっといかすにはどうすればいいか、いろいろとアイデアが自然と出てきます。

とくに小規模事業者持続化補助金は「一般型」は、事業をおこなうにさいしても、商工会・商工会議所の支援を受けることも求められています。

商工会・商工会議所は、もともと地域に根づいた商業・工業の支援組織です。
ぜひ、今回の記事を参考にして、わからないところはどんどん商工会・商工会議所に相談していただき、多くの方が補助金申請に挑戦していただければ、幸いです。


小規模事業者持続化補助金(一般型)

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