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2022.05.01

中小企業庁が運営するIT導入補助金とは何?2022年IT導入補助金完全解説!

企業のIT化は効率的な経営を行う上で非常に重要です。そのことは新型コロナウィルスの感染拡大時に多くの経営者が認識したはずです。

これまで対面、紙ベースで行っていた事業が難しくなり、否が応でもITを利用したオンライン化が求められるようになりました。

IT導入補助金は特に2020年、2021年については新型コロナウィルス対応のための特別枠が設けられましたが、2022年については、新たなステージとして企業間取引のデジタル化を強力に進めていくための特別枠を設け、ポストコロナ社会にける施策を強力に推し進めることになりました。

今回は2022年のIT導入補助金について解説していきます。

目次

IT導入補助金とは

「IT導入補助金」とは経済産業省が監督している補助金です。実際の運営は「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」が実施しています。

小規模事業者や中小企業を対象にした補助金で、ITツールやソフトを積極的に導入することを補助金で後押しすることで、経営課題を克服し、業務効率化や売上増に資するようにします。

特に2020年、2021年については「特別枠」を設けて、新型コロナウィルスへの対応として、非接触、非対面でも従来通り事業が進むためのシステム構築をサポートしました。

状況に合うよう、通常枠と特別枠の2本立てで、ITを積極的に企業経営に導入してもらうことを目的としている補助金です。

2022年は「通常枠」(以前よりあるもの)に加え、新型コロナウィルス対応の「低感染リスク型ビジネス枠」に代わり「デジタル化基盤導入枠」という「特別枠」が設置されました。

コロナ対応については2021年までのIT導入補助金で一段落と行政は認識しているようで「低感染リスク型ビジネス枠」は2022年の実施はありません。

通常枠(A・B類型)

IT化する余力があまりない、中小企業・小規模事業者が生産性の向上を目的としてITツールを導入する場合に、積極的にそれらを促すため、ソフトウェア導入やシステム導入などの経費の一部を補助するものです。

自社の置かれた環境をSWOT分析などで、認識し、経営課題や需要に合ったITツール導入を後押し、結果的に業務効率化・売上アップ、経営力向上につなげていきます。

新型コロナウィルス感染拡大前からある枠であり、2010年代から課題となっているIT化を積極的に後押しする通常のIT導入補助金枠です。

低感染リスク型ビジネス枠(特別枠)(廃止)

2020年と2021年については「特別枠」とした新型コロナウィルス対策のため、非接触、非対面のビジネスモデル構築のため「低感染リスクビジネス枠」が設けられていました。

この特別枠は2022年については今のところ実施せず、「デジタル化基盤導入枠」に代わることとなります。

デジタル化基盤導入枠(特別枠:新設)

2023年10月にスタート予定の「インボイス制度」への対応も見据え、クラウド利用料を最大2年分補助や、パソコン、タブレット等のハードウェアなどに補助対象を広げ、補助率も通常枠より高くしました。

これによって、企業間取引のデジタル化を強力に推進し、企業経営のIT化を促すための補助金枠です。

複数社連携IT導入類型(特別枠:新設)

複数の中小企業・小規模事業者が連携した、ITツール、ハードウェア導入のための特別枠です。地域DX(デジタル化の推進によって地域変革を目指すあらゆる取り組み)の実現や生産性向上を支援します。

この特別枠は、企業間のITネットワーク構築などをコーディネーターとして支援するための費用を補助するもので、通常の中小企業や小規模事業者はあまり関係ない補助金枠となります。

IT導入補助金の補助対象者

IT導入補助金の補助対象者は通常枠、デジタル化基盤導入枠については非常に多く、全事業者の90%程度になります。大企業以外の会社や個人事業主はまず、問題なく利用できると考えてください。

さらに、他の補助金以上に特徴的なのは、非営利企業(非会社組織)や団体も受給できるのです。

一方、今回のIT導入補助金の目玉である複数社連携IT導入類型については、限られた対象者となるのでご注意ください。両者を分けて紹介します。

通常枠、デジタル化基盤導入枠(特別枠)のIT導入補助金の対象となる中小企業、小規模事業者の定義

IT導入補助金の対象となる中小企業、小規模事業者は以下のように定義されます。

・中小企業:資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人~300人以下(業種による)の会社及び個人
・小規模事業者:製造業などは従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下の会社および個人

これらをわかりやすいように表にしました。

A 中小企業

業種 資本金(表記資本金以下が補助対象) 従業員数(表記人数以下が補助対象)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業(ソフトウェア、情報サービス、旅館業以外) 5000万円 100人
小売業 5000万円 50人
ゴム製品製造業 3億円 900人
“ソフトウェア業
情報サービス業” 3億円 300人
旅館業 5000万円 200人
上記以外のその他業種 3億円 300人

資本金か従業員のいずれかが、表の数字以下ならばIT導入補助金の補助対象となります。両方満たす必要はなく、片方がクリアできればOKです。

B 小規模事業者

業種 従業員数(表記数以下が補助金対象)
商業・サービス業 5人
サービス業のうち宿泊業、娯楽業 20人
そのほかの業種(製造業、建設業など) 20人

C 個人事業主(1人で行っている個人事業主、従業員がいる場合、A、Bの基準による)

D 非会社組織、各種団体

非会社組織や各種団体の概要 職員数(表記数以下が対象)
医療法人、社会福祉法人、学校法人 300人
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体(=事業協同組合) “主たる業種に記載の
従業員規模に応じて決定される(中小企業規模の場合も小規模事業者規模の場合も同様)”
特別の法律によって設立された組合またはその連合
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)
特定非営利活動法人、NPO

他の補助金と大きく異なるのは、学校法人や病院、クリニック、NPOなどもIT導入補助金の対象となることです。非営利や公的目的を持つ組織団体においても、補助金を利用できるというのは非常に大きなメリットとなります。

複数社連携IT導入類型の補助対象者

複数社連携IT導入類型については、中小企業、小規模事業者ではなく、もっと広い枠組みとなります。複数社連携IT導入類型の対象者は以下になります。なお、本類型の詳細公表は後日になるので、変更がありえます(2022年1月の資料による)。

1.商工団体等

例:商店街振興組合、商工会議所、商工会、事業協同組合 等

2.当該地域のまちづくり、商業活性化、観光振興等の担い手として事業に取り組むことができる中小企業者又は団体

例:まちづくり会社、観光地域づくり法人(DMO) 等

3.複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアム

通常枠やデジタル化基盤導入枠と異なり、通常の中小企業や小規模事業者は申請できないと思われますので、この複数社連携IT導入類型についてはあまり気にしなくてよいと思われます。

補助対象経費

IT導入補助金の補助対象経費ですが、それぞれの分類によって対象が異なります。

以下表にまとめました。

分類 補助対象経費

通常枠 ソフトウェア費、導入関連費等
デジタル化基盤導入枠 “ソフトウェア費、クラウド利用料(最大2年分補助)、導入関連費
ハードウェア購入費用(PC、タブレット、レジ・券売機等)”
複数社連携IT導入類型 “ソフトウェア費、クラウド利用料(最大2年分補助)、導入関連費
ハードウェア購入費用(PC、タブレット、レジ・券売機等、AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等)”

通常のIT導入補助金の補助対象はソフトウェア(ITシステム)と導入関連費のみですが、特別枠(デジタル化基盤導入枠)は、それらに加えて、PCやタブレット、券売機などのハードの補助も出ます。IT化が進んでいない事業者にとっては非常にありがたい補助金だと言えるでしょう。

IT導入補助金の補助対象となるソフトウェアについては、下記の項目のうち、いずれかのサポート内容を含める必要があります(それプラスαの内容はOK)。

・顧客対応・販売支援
・決済・債権債務・資金回収管理
・調達・供給・在庫・物流
・会計・財務・経営
・総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
・業種固有プロセスの改革

なお、この基準は2021年IT導入補助金までのものですので、2022年については変わる可能性があります。

補助金の上限額・下限額・補助率

各類型の補助金の上限や下限、補助率について表にまとめました。こちらの範囲内で補助金が支給されます。なお、「補助金」ですので給付金と異なり、支払いは補助事業の完了後となります。

つまり、補助事業実施(ITソフト等の購入)の際には自己資金で行い、後日補助金が振り込まれることとなるので注意してください。

通常枠

類型 A類型 B類型
補助金 30万円~150万円 150万円~450万円
補助率 1/2
目的 IT導入による業務効率化、遠隔業務の環境整備など
プロセス数 1以上 4以上
賃上げ目標 加点 必須
補助金使途 ソフトウェア購入、クラウド利用、専門家経費、初期設定費用等

デジタル化基盤導入類型(特別枠)

ITツール補助金(会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトなど)
補助金 5万円~50万円 50万円~350万円
補助率 3/4 2/3
ハードウェア購入補助金
ハードウェアの種類 PC、タブレット等 レジ、券売機等
補助金 ~10万円 ~20万円
補助率 1/2
目的 インボイス制度を見据えたITシステムの構築
賃上げ目標 未定(2022年2月28日現在は未定。後日公開)
補助金使途 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト購入費、クラウド利用料(最大2年分補助)・導入関連費

複数社連携IT導入類型

補助額 デジタル化基盤導入類型の要件に属する経費 デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費

①基盤導入経費

②消費動向等分析経費

③補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要した事務費

5万円~50万円以下 50万円超~350万円 50万円×参加事業者数 ①+②×10%​
補助率 3/4 2/3 2/3 2/3
補助金 ~3000万 ~200万
対象ソフトウェア 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト 各種システム(※)
賃上げ目標 なし
“補助対象
” ソフトウェア費・クラウド利用料(最大2年分補助)・導入関連費
そのうちハードウェア購入費用 PC・タブレット等 : 1/2以内、補助上限額10万円 “AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等
(個々の上限金額なし、50万円×参加事業数×2/3まで補助可能。MAX3000万円
)”
補助率 1/2
補助金 ~10万円
レジ・券売機等
補助率 1/2
補助金 ~20万円

※:消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム等

本表の金額などは2022年2月28日時点の計画によるもので変更がありえます。複数社連携IT導入類型は複雑ですが、おそらくみなさんが申請するのもではないと思われるので、簡単に表をご理解ください。

IT導入補助金の申請の流れ

IT導入補助金の申請の流れは下記になります。。なお、こちらも2021年までのものなので変更になる可能性があります。

①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」(事前準備)
②「gBizIDプライム」アカウントの取得「SECURITY ACTION」の実施(申請要件)
③交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
④ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
⑤事業実績報告
⑥補助金確定、交付
⑦事業実施効果報告

それぞれについて内容を概説します。

「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」(事前準備)

IT導入支援事業者(ソフトウェア、システムの導入をアテンドしてくれる会社)や導入するITの選定をします。

「IT導入支援事業者・ITツール検索」(2021年のもの)
https://portal.it-hojo.jp/r2/search/?_ga=2.255000840.1687523740.1647221766-743387581.1646126037

「gBizIDプライム」アカウントの取得「SECURITY ACTION」の実施(申請要件)

補助金や助成金申請システム(国の共通システム)「gBizIDプライム」のアカウントを取得します。他の補助金にも使える共有システムです。

また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言も合わせて行います。

交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)

IT導入支援事業者との間で相談、協議をして補助金事業の事業計画を策定します。

ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)

IT導入補助金事務局から「交付決定」を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払い等を行います。2022年の「デジタル化基盤導入類型」については、この段階でハードウェア購入をするものと思われます。

発注や契約は「交付決定後」になります。交付決定前に契約したものに対しては、原則的に補助対象となりませんが、2021年の「低感染リスクビジネス枠」では、遡及適用できたエースもあるので、募集要項を確認してえください。

事業実績報告

補助事業の実施後、ITツール、ソフトウェア等の発注・契約、納品、支払い等を行ったことを証明する書類、帳票を提出します。

補助金確定、交付

事業実績報告完了後、補助金額が確定し、いよいよ補助金が交付(振込)されます。

事業実施効果報告

実際に事業計画で算出した業務改善効果があったかどうか、事業実施効果報告を行います。目標達成できなかった場合も、即時補助金返還とはなりませんが、できなかったことについて厳しい審査があります。努力の跡がなければ、返還を求められる可能性もあります。

このように、補助金申請アカウント取得から事業実施、補助金支払い、事業報告までいくつものステップを踏むことになります。補助金は税金ですので、しっかりその使途と効果についてチェックされます。

IT導入補助金のスケジュール

2022年IT導入補助金のスケジュールは未定です(2022年3月14日現在)。公式HP
https://www.it-hojo.jp/2022/
を常にチェックしていただければと存じます。

参考までに過去のスケジュールを表にしました。

【2021年度IT導入補助金スケジュール】

昨年の流れで行くと

・3月下旬~:事業者登録(「gBizIDプライム」アカウントの取得も必要)
・4月上旬~:交付申請

となり、ご自身の良いタイミングで「〇次募集締め切り」に間に合うようにIT導入補助金を申請することとなります。

まとめ

ITを事業に活用する流れはコロナウィルスにかかわらず続いており、2022年度がインボイス制度準備のための特別枠に切り替えとなりました。

さまざまな手作業をIT化することで、事業の効率化や余計な経費の削減など、大きな毛英英改善効果が期待できます。

IT導入補助金の申請には、IT導入支援事業者の選定など自分だけではよくわからない工程があります。ぜひご相談いただき、資格者のアドバイスによって補助金の申請を成功させてください。

IT導入補助金の活用によって、貴社、貴事業所の業務は大きく改善します。補助金は慣れれば申請や受給、報告も難しくありません。貴社の事業戦略を補うものとして、ぜひIT導入補助金をご活用ください。


IT導入補助金

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