IT導入補助金は個人事業主でも受けられる!採択されやすい経費や採択率向上のコツとは?
社会のさまざまなシーンでIT化が進みつつあります。現金やカードでの取引以外にも、キャッシュレスの「〇〇PAY」などQRコードや「VISAタッチ」といった非接触の決済方法もどんどん導入されています。
新型コロナウィルスの感染拡大は、社会やビジネスのIT化を進める大きな事象でしたが、この流れはそれ以前より確実に進みつつありました。
IT化のための補助金を活用することで、みなさんのビジネスが効率化、省力化し、コスパがよくなります。そのための「IT導入補助金」は大きな企業だけではなく、個人事業主も経費次第で利用できるものです。
1人だけの個人事業主でも、IT導入補助金によって経営環境を大きく変えることができることを本記事で解説します。補助金の活用で、効率的な経営にトライしてみましょう。
目次
IT導入補助金は個人事業主でも申請できる?
IT導入補助金は個人事業主の方でも問題なく申請できます。IT導入補助金は中小企業など会社を設立している経営者だけのものではないので安心してください。
対象となる事業者の定義
IT導入補助金の補助金の対象となる個人事業主の業種などは、原則的に中小企業など法人と同じです。
ただ、法人の場合は資本金要件(●●●●万円以下)というものがありますが、個人事業主の場合、資本金はないので、それは無視できます。ただし、従業員の要件(●●名以下)というのはその基準が該当します。
とはいえ、従業員要件を超えるような場合、法人化していないというのはあまり考えられません。税金面や制度面で従業員を多く抱え、売上もある事業者が個人事業主でいるメリットがないからです。
以下の表で、対象となる個人事業主の業種等を確認してください。なお、以下次項、次々項ついては、IT導入補助金2021年版の内容となります。本校執筆時(2022年3月23日)には、まだIT導入補助金2022年版の要綱が出ていないためで、みなさんはぜひ最新のHPを確認してください。
https://www.it-hojo.jp/2022/ab-digital-type.html
商業、サービス業だけは個人事業主の方によっては、6名以上の従業員を雇用しているケースがあるかもしれませんので注意してください。従業員が6名以上の商業、サービス業の個人事業主はIT導入補助金の申請は(2021年版を参考にすれば)不可になります。
IT導入補助金を受けられる個人事業主の例
上記業種の個人事業主であり、次項「IT導入補助金を受けられない個人事業主」に該当しない方であれば誰でもIT導入補助金を受けることができます。
まず、「受けられない個人事業主」を確認し、それに該当しなければ、問題なくIT導入補助金を申請できます。
・町の駄菓子屋さん
・家族経営の町工場
・在宅のシステムエンジニア
・老舗中華料理店(従業員4名)
・夫婦でやっている結婚相談所
全部対象になります。ITとは一見すると無縁に思える仕事をしている個人事業主の方でも、IT導入補助金の趣旨に則って、システムやソフトを導入し、売上アップなどに資することができれば大丈夫です。
IT導入補助金を受けられない個人事業主の例
IT導入補助金は上記受給対象となる個人事業主なら「原則」受給できますが、対象業種であっても「例外」があります。
IT導入補助金要綱2021年版をもとに、IT導入補助金を受けられない個人事業主について
まとめました。
1.「IT導入補助金 2021 」において「IT導入支援事業者」に登録されている事業者
2.経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者
3.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営む事業者(旅館業法第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営む事業者)
4.過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
5.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係する事業者
6.宗教法人
7.法人格のない任意団体(例)同窓会、PTA、私的サークル等
8.その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び中小機構並びに事務局が判断する者
それぞれ補足解説します。
「IT導入補助金 2021」において「IT導入支援事業者」に登録されている事業者
IT導入補助金を支援する事業者です。支援できる環境ということは、当然IT化が最先端っまで進んでいるわけで、本事業に協力する「運営側」事業者については別途支援金(報酬)が支払われます。
報酬額(税込) 着手金 成功報酬
ものづくり補助金(一般型) 11万円 33万円~
IT導入補助金(事業者登録) 5.5万円/事業者 11万円/事業者
IT導入補助金(ツール登録) 3.3万円 5.5万円/ツール
IT導入補助金(補助金申請) 5.5万円/事業者 5.5万円/事業者
小規模事業者持続化補助金 5.5万円 5.5万円~
事業再構築補助金 11万円 55万円
創業助成事業(東京都) 11万円 16.5万円
申請書の添削・分析 3.3万円~ 0円
IT環境が整っていて指導もできる事業者が新たにIT導入補助金を受給することはできません。
経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者
補助金の不正請求や競争入札の妨害などによって、IT導入補助金を運営する経済産業省から行政処分を受けていた場合です。
当然ですね。
風俗関連業種
風俗というと性的サービスを想起させますが、それだけではありません。以下の業種、風俗業は受給できません。
受給できない風俗関連規定 仕事の内容(代表的なもの)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条に規定する「風俗営業」 キャバクラ、ホストクラブ、キャバレー、パチンコ屋、雀荘、ゲームセンター
同 「性風俗関連特殊営業」 “性風俗(ヘルス、デリヘル、ソープランド等)、アダルトショップ、アダルトサイト、
ラブホテル”
同 「接客業務受託営業」 コンパニオン、芸者
旅館業法第3条第1項に規定する許可を受け旅館業 民泊
過去に「風俗営業」とされたものの中でも、新法によって「特定遊興飲食店」と定義されたお店は「非風俗営業」であり、IT導入補助金を受給できる可能性があります。
具体的には、スポーツバー、ライブハウス、カードゲームで遊べる飲食店、エンタメに振ったレストラン(ダンサーがショーをする)などです。これらは「非風俗店」です。
また、性風俗で考えると、風俗店経営者もIT導入補助金を受給できませんし、個人事業主として確定申告している風俗嬢も対象外です。経営者も、お店で実質社員の個人事業主として働いている人もIT導入補助金の対象外です。
持続化給付金などの際に「風俗差別だ」と指摘され受給対象になりましたし、キャバクラやホスト部など「夜の店」は、コロナ関連の休業、時短保証金の対象でしたが、IT導入補助金に関しては対象外になります。
コロナ前からある補助金ですので、その点はご理解ください。
過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
IT導入補助金は補助金によって生産性が向上し、従業員の賃金アップを求める類型もあります。労働関係で処分されるような事業者は、賃金アップをするとも思えず、最初からそうした「地雷」は排除されます。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係する事業者
もちろん、反社会的勢力の構成員(暴力団員)やその関係者はNGです。
宗教法人
個人事業主とはまったく関係なくNGとなります。
法人格のない任意団体(例)同窓会、PTA、私的サークル等
営利目的ではない個人的なサークルや同好会もIT導入補助金を受給できません。受講者から月謝を取って運営しているダンス教室は事業者として対象になりますが、仲間内でやっているダンスの会は対象ではありません。
その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び中小機構並びに事務局が判断する者
個別事情を見て、IT導入補助金の受給申請ができないことがあります。何か事情がありそうな場合、専門家に相談してみてもいいでしょう。
個人事業主がIT導入補助金を申請しやすい補助対象経費
IT導入補助金が支給する補助対象経費は多岐にわたります。しかし、大掛かりなシステム構築やソフトウェアを自分1人だけの個人事業主が受給申請しても説得力に欠けます。
個人事業主がIT導入補助金を申請した場合、通過しやしい経費の費目を紹介します。
申請しやすい費目
申請しやすい費目は、
導入関連費:HP作成およびHPに付随したツールの導入(HP作成のみは補助金対象外)
コンサルティング費用:専門家によるアドバイス(専門家とはITコンサルやエンジニア)
です。
導入関連費は、具体的には
会員登録・ログイン機能
顧客の日時予約システム
問い合わせチャット機能
ホームページ内コンテンツのキーワード検索機能
商品購入・代金決済機能
会員登録・ログイン機能(訪問したユーザー別のコンテンツ閲覧機能)
売り上げ管理
集客ツール
などです。1人でやっている美容室やマッサージサロンのオンライン予約(コースによって施術者の空き時間や予備時間を考慮し、◎や×が10分、15分刻みで出るようなシステム)みたいなものをイメージしていただくとわかりやすいです。
申請しにくい、難しい費目
法人ではなく個人事業主の場合、生産性向上のための労務管理や教育訓練ソフトなどは認められない可能性が高いです。そんな規模の事業ではないからです。数百人規模で従業員を雇用していることが前提となるシステムやツール費は認められにくいと言えるでしょう。
原材料調達・在庫管理・資金回収管理・物流などは、個人事業主でも必要ですが、規模によっては補助金サポートまで必要ないケースもあり、個々の事情を訴える必要がありそうです。
個人事業主がIT導入補助金の採択率を上げるポイント
IT導入補助金の採択率を上げるためには、法人も個人事業主も行うことは共通しています。絵空事ではない、現実的な事業計画、現実的なIT化目標が何より大切です。
目標や補助金希望額が高いと、非現実的と思われてしまい、補助金申請にマイナスになる可能性があります。
個人事業主が採択率を上げるポイントは以下になります。
1.事務局が示す「加点項目」を確実に満たす
2.現実的な補助金事業を掲げる
3.専門家、コンサルタントのアドバイスを適切に受ける
それぞれ見ていきましょう。
事務局が示す加点項目
IT導入補助金には必須項目以外に、審査にあたり下駄をはかせてもらえる「加点項目」があります。それを満たすことで、採択率が上がり、これは個人事業主にとってもそこまで難しいことではありません。
加点項目とは以下になります。
1.導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること
2.加点となる申請類型で交付申請を行いかつ賃上げ目標を立てた
インボイス制度対応製品の選定
特に2022年のIT導入補助金は2023年から始まるインボイス制度への対応のためのIT化を進めるという目標があります。
もちろん、それ以外の用途や新型コロナウィルス対策にITツールを導入してもいいのですが、2022年の補助金の大目標に資するのはインボイス制度への対応です。
デジタル化基盤導入類型(特別枠)だけでなく、通常枠でも「インボイス対応も考えて~」と補助金事業と絡められれば、審査において有利になる可能性があります。
加点となる申請類型での賃上げ目標
通常枠A類型は確実に、またおそらくデジタル化基盤導入類型(特別枠)においても、知投げ目標の設定を念頭に申請すると審査において加点されます。これはIT導入補助金実施要項にある確実な内容です。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域の最低賃金+30円以上の水準にする
これらの場合に、審査において明確にプラス評価となります。
従業員を持つ個人事業主の場合、この賃上げ目標が採択率を上げるカギになります。
現実的な補助金事業
IT導入補助金によって導入するツールが、個人事業主としての身の丈に合った、適切な規模の事業になることが大切です。
1人でやっている事業なのに、大ネットワークを構築して・・という計画をしても、実現性に大いに疑問符がついてしまいます。
補助金によって少しだけ、これまでなら導入しないようなツールを導入してみたい、事業計画を立てるとそれでうまくいきそう、そのくらいに現実的な補助金事業計画が採択率を高めます。
専門家、コンサルタントの適切なアドバイス
IT導入補助金の事業計画については、代表者(個人事業主)だけでは難しいかもしれません。
適切な専門家(コンサルタントや補助金申請代行業者)に相談していただくのが一番です。プロの手による事業計画の「赤入れ」は、申請内容の質を高くします。
金銭的な負担(専門家報酬)もそれほどかからない可能性もあり、調べてみてください。なお、申請に際しての専門家報酬はIT導入補助金の対象外ですので注意してください。
個人事業主がIT導入補助金申請のときに注意すべきこと
最後に、IT導入補助金申請の際の注意点を説明します。メリットが大きい補助金ですが、あまり期待しすぎると経営を圧迫する可能性があります。
注意点を大きくまとめると
1.補助対象は汎用品のみ、カスタム機は不可
2.補助金は最初の1年間のみである
3.支援業者選びで大きく差がつく
4.補助金をあてにし過ぎた経営計画を立てない
となります。それぞれ解説していきます。
補助対象は汎用品のみでカスタム機は不可
補助対象となるソフトやクラウドは汎用商品のみとなります。自社のためだけに業者に作ってもらったものは対象外です。
選定するITツール(汎用品)は、みなさんの事業計画を達成するのに少し不十分な可能性があるので、しっかり調べてください。
補助金は最初の1年間のみ
IT導入補助金の補助対象となるのは事業最初の1年間のみです。
リースやクラウドを利用したときの、2年目以降は補助対象になりません。つまり、補助金はソフトやツールの初期費用をカバーするために使うケースが多いことになります。
支援事業者選びの重要性
IT導入補助金は、申請の際に技術的なサポートをする「IT導入支援事業者」を選定します。この支援事業者が玉石混交であるとされ、外れの支援事業者を引いてしまうと、実際に導入できたとしても使い勝手の悪いITツールになってしまいます。
外れ事業者の場合、審査の際にも適切なアドバイスがないので、採択率そのものも落ちてしまうでしょう。アフターフォローもそうした事業者だと期待できません。
当たり支援事業者:使いやすいツール、事業計画に適切なアドバイス、アフターフォロー万全
外れ支援事業者:使いにくいツール、アドバイスが不明確で採択率低、アフターフォローは不十分
補助金申請が通っても、支援事業者次第で、みなさんの事業の伸びが大きく左右されてしまいます。
補助金をあてにし過ぎた経営計画を立てない
補助金をもらえるから、あれもこれも導入して税金で整備しようと思っても、そもそも補助金申請に通らない可能性があります。
また、補助金は事業が終了し、完了報告が終わり、それが許可されてはじめて振り込みがなされます。つまり、補助事業実施時は自己資金(ないし借入)で行わなければなりません。
潤沢な資金がない場合、補助金審査に通過し、事業を実施し、実際に振り込まれるまでにスパンがあり、その間に経営が悪化するリスクもあります。
経営が悪化し、補助事業を実施できなければ、あるいは倒産の危機になれば補助金どころではなくなります。
さらに、補助事業に失敗した報告をIT導入補助金事務局にすると、内容次第では補助金の返還などを求められてしまうリスクもあります。
あくまで「補助」金です。メインは自分の事業で稼ぐことを忘れず、申請の際の経営計画もサポート的な資金需要として立ててください。
まとめ
以上、IT導入補助金について、個人事業主の方が申請する場合の概要や注意点にについて解説させていただきました。
通りやすい経費と通りにくい経費があり、まず個人事業主の規模でも可能な事業のIT化に資する経費を洗い出してください。まず売上アップや従業員の賃金アップを果たせる目的を抽出することが大切です。
IT導入補助金が他の補助金と違う点として、申請にあたり「支援業者」という専門家を選定することが求められます。
特に個人事業主にとっては、専門性が高いIT化について、支援業者選びが重要になります。同じ補助金額を受給しても、費用対効果が支援業者次第で大きく異なります。
単に補助金を使ってITツールを導入しただけでは売上アップや生産性向上にはつながりません。新型コロナウィルス感染拡大対策だった2021年までのIT導入補助金から、2022年はインボイス制度導入を視野に入れた内容に変わりつつあります。
課税事業者になるのか、免税事業者にするのか、個人事業主の方の売上では悩むところです。そうしたアドバイスを含めて、IT導入補助金を効果的に使うと、今後の自社戦略についてもプラスになります。
ぜひ、IT導入補助金を使って。この荒波を乗り越えていきましょう。意外に使える補助金ですよ!
IT導入補助金