IT導入補助金で不採択になる理由と改善策
IT導入補助金を申請して不採択になったけど、理由がわからず困っている事業者が多いようです。IT導入補助金を利用してITツールを導入し、業務効率化や業績アップを目指しているのに、不採択では困ってしまいます。しかも、不採択の理由がわからなければ、次の申請の前に、どこを改善すればいいのかさえわかりません。そこで、この記事ではIT導入補助金で不採択になる理由を解説し、次の申請に備える方法をご紹介します。
目次
IT導入補助金が不採択になる理由は?
IT導入補助金を申請して不採択になっても、理由は開示されないので、なぜ不採択になったのかわかりません。しかし、申請するツールによって、採択率が変わることもあるようです。そのため、IT導入補助金を申請する前に、申請しようと考えているITツールの昨年度の採択率を、IT導入支援事業者に確認するといいでしょう。昨年度に採択率の低かったITツールは、おそらく今年も採択率が低いと考えられるので、避けたほうが無難です。
また、ECサイトの申請は審査が厳しい傾向にあるようです。ECサイトそのものはIT導入補助金の対象なのですが、ECサイトの中のWeb制作部分が対象外なので、審査が厳しくなるということです。しかし、不採択の理由としてもっとも多いのは、提出書類の問題でしょう。では具体的にどんな問題があるのか、以下に解説します。
申請情報や提出書類の不備
書類の不備で多いのが、入力ミスです。たとえば、住所の記載は郵便番号を入力すれば、自動的に市区町村名が記載されますが、それに続く丁目や番地、号などは手動で入力しなければなりません。この部分の入力ミスや記載漏れも、かなりあるようですから注意しましょう。
また、公募要領に記載された要件を、満たしていないケースも目立ちます。IT導入補助金の申請には、申請要件と必須項目を漏らさず記載する必要がありますが、うっかりして必須項目の記載を、漏らしてしまうケースもあるようです。その中でも多いのが、「賃上げ目標」の記載です。通常枠のB類型と特別枠のC類型-2では、賃上げ目標が必須項目になっていますが、他の類型では必須項目ではなく加点項目になっているため、勘違いしてしまうのでしょう。しかし、たったこれだけのミスで不採択になってしまうので、気を付けなければなりません。
申請内容の不備
申請内容に不備がある場合も不採択になるので、どんな不備があるのか具体例を見てみましょう。
履歴事項全部証明書の不備
IT導入補助金申請時に必要な書類の中に、「履歴事項全部証明書」があります。履歴事項全部証明書は、補助金を申請する際に必要な、法人の登記事項を証明するための書類です。登記事項そのものが間違っていたり、添付資料に誤りがあると、履歴事項全部証明書の不備として、不採択の原因になってしまいます。添付資料の誤りとして、以下のようなケースが考えられます。
・期限(申請日の3か月まで)が切れている
・登記簿謄本が全部事項ではない
・添付資料のページ番号がない
・添付画像が粗く見づらい
IT導入補助金を申請する際は、このような不備がないかチェックしましょう。
申請日と設立年月日の不整合
設立年月日が、申請日より未来の日付になっていると、日付の不整合となります。IT導入補助金を申請するには、申請時点で企業を設立している必要があるので、設立年月日が、申請日より未来の日付になっていると、不採用になってしまいます。
役員名の不一致
登記簿謄本に記載されている役員名が、企業の役員名と一致しない場合があります。多くの場合、役員が変更になったのに、登記簿謄本の登記情報が古いままになっているための不一致なので、申請する前に確認が必要です。
会社情報の不一致
申請情報と、履歴事項全部証明書の情報が一致していないと、不採択になります。そのため、企業の事業内容を変更した場合は、申請前に登記内容を修正する必要があります。
上記以外の書類の不備
IT導入補助金の申請に必要な書類は、発行から3か月以内のものでなければなりません。当然ながら、発行から3か月経過した書類は無効ですから、そのような書類を添付すると不採択になります。たとえば法人の場合、「履歴事項全部証明書」は発行から3か月以内でないと無効となります。個人事業主の場合は、運転免許か住民票が必要ですが、住民票は発行から3か月以内のものを、用意しなければなりません。
また、個人事業主の場合は、「直近分の所得税の納税証明書」が必要ですが、所得税の納税証明書なので税目が「所得税」、発行元が「税務署」になっていないと無効になります。発行元が市や区で、市民税や区民税の納税証明書が、間違って添付されるケースが実際にあるようですから、添付する前にしっかり確認しましょう。
IT導入補助金の申請準備は、かなりの手間がかかるので、このようなうっかりミスで、不採択になるのは避けたいものです。IT導入補助金は、申請内容がいかに優れていても、上記のようなミスがあると、それだけで不採択になってしまうので、くれぐれも注意しましょう。
書類内容そのものが薄い・現実的ではない
書類に記載されている内容が薄かったり、現実的ではない場合も、不採択になる可能性が高くなります。内容が薄いということは、記載内容に具体性がないので、説得力に乏しいものになってしまいます。どんな事業を行うのか、事務局の審査員に具体的にわかるように記述しないと、採択には結びつかないでしょう。
事務局の審査員は事業に関しては素人ですから、そこを考えて記述しないと真意が伝わらず、不採択になる可能性が高まります。とはいっても、長文で書けばいいというわけではないので、簡潔にわかりやすくまとめる工夫も大切です。書類の内容に関して、不採択になりやすい原因はまだあるので、以下にまとめてみましょう。
何をやりたいのかわからない
補助事業を行うのに、IT導入補助金をどう活用するのか、活用することによって、どんな事業展望があるのかが、審査員に伝わらないと採択率は低くなります。そこで、自社の強みばかりを強調するのではなく、現在抱えている自社の弱点を把握した上で、どう改善していくのか、わかりやすく書く努力をすることが大切です。もちろん、その過程でIT導入補助金をどう活用するのかについても、詳細に書く必要があるのは言うまでもありません。
根拠に乏しい
IT導入補助金の申請に限らず、人に説明する場合は、具体的な根拠をしめさないと納得してもらえないものです。そのためには、根拠となる数字をしめすことが重要となります。IT導入補助金を活用することによって、「△▽が〇%アップする」といった、具体的な数字やエビデンスをしめすことによって、よりリアルに受け止めてもらえます。
IT導入補助金の原資は税金ですから、具体的な情報が何もない企業に補助金を支給しても、有効に活用してもらえるとは思えないので、採択されない結果になってしまいます。経済産業省としても、IT導入補助金を交付することによって、具体的な成果を挙げなくては困るので、IT導入補助金を交付するにふさわしい企業を選ぶのは、当然と言えるでしょう。
売上の増加が不自然
補助事業がうまくいくことをしめすためには、売上アップの予測を記載することも大切です。しかし、売上の増加推移が不自然だと、不採択になる可能性が高くなります。いわゆる「無理がある」と感じる内容では、審査員を説得することはできないからです。売上アップの推移は、採択されたいという思いがあると、どうしても多めの数字になってしまいますが、審査員が不自然に感じる数字では、逆効果になるので注意したいものです。
補助金の目的と合致していない
IT導入補助金は、経済産業省が主催する補助金です。つまり、政府がある目的を持って、補助金を交付しているのです。そのため、政府が設定した補助金の目的と合わない申請内容では、採択されることはありません。たとえば、低感染リスク型ビジネス枠では、コロナ禍で売上が減少した企業の支援が目的となります。そのため、コロナ禍対策として、非対面ツールを導入することにより、感染リスクを抑える内容でなければ、補助金の対象とはなりません。そこで、IT導入補助金が交付される理由と合致した内容の書類を提出しなければ、採択率が下がるのは当然のことなのです。
IT導入補助金申請時に気を付けたいポイント
次回のIT導入補助金の申請時に、注意すべき点について解説します。今回のIT導入補助金が不採用になった事業者が、再度申請するにあたって、気をつけたいポイントがあります。
IT導入補助金申請の流れを把握する
IT導入補助金は、2021年度と2022年度では、少し要件内容が違っています。IT導入補助金の要件は、同じ年度内でも変更される可能性があるので、常に最新情報を入手して次回の申請に臨みましょう。IT導入補助金には、加点項目と必須項目があります。加点項目を満たしておくことによって、採択されやすくなるので、可能な限り満たしておきましょう。
加点項目には以下のようなものがあるので、1つでも多く満たしたいものです。
・地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画
・地域未来牽引企業
・クラウドを利用したITツール導入の検討
・テレワーク対応ITツール導入の検討
・インボイス対応ITツール導入の検討
・事業計画の策定と従業員への表明
加点項目は、達成できなくてもペナルティはありませんが、必須項目の場合は達成できないと、補助金の返還を求められる可能性があります。また、前回の公募までは加点項目だった要件が、突然必須項目に変更される場合もあるので、申請する前に公式サイトを隈なくチェックしましょう。
まとめ
IT導入補助金を申請して、不採択になる理由はいろいろあります。その中でも一番多いのが、申請情報や提出書類の不備によるものです。住所の丁目や番地、号などの入力ミスや記載漏れもあるようなので、提出前にしっかりチェックしましょう。また、公募要領に記載された、要件を満たしていないケースも目立ちます。さらに、必須項目を満たしていないために、不採択になる例もあるので注意しましょう。
このほか、登記内容と申請内容が違っていたり、期限切れの添付資料を添付したために、不採択となるケースも少なくないようです。書類に記載された内容そのものが薄かったり、補助事業が現実的でないものだったりすると、同様に不採択になりやすくなります。また、補助金には補助金を交付する目的があるので、その目的に合致しない内容を記載していると、採択されないので注意が必要です。
IT導入補助金