IT導入補助金の業種別対象製品ソフトと導入効果
事業者が使えるIT導入補助金の対象ソフトには、さまざまな種類があります。全業種共通で使えるソフトもあれば、特定の業種だけで使われるソフトもあります。これらのソフトを使うと、どんな効果があるのでしょうか。また、ここでは、IT導入補助金申請の方法についても解説します。
目次
IT導入補助金の対象ソフト一覧
IT導入補助金の対象ソフトには、全業種共通で使えるソフトとそれぞれの業種に特化したソフトがあります。
全業種共通でオススメ
事業を行っていると、問題や課題に直面することがあります。こういった問題や課題は、どの業種にも共通するものも数多くあります。各業種に共通する問題や課題を、解決するためのITツールをご紹介しましょう。
・OCRツール
取引先からの請求書や発注書などが、手書きや紙に印刷された状態で送られてくることがあります。手書きや印刷の書類は、スタッフがパソコンに打ち込まないと処理ができません。しかし、この作業は非常に時間がかかります。そこで、こんな場合に使うと便利なのが、OCRツールです。
OCRツールを使うと、手書きや印刷された文字をスキャンして読み取れるので、パソコンに打ち込む手間を省くことができます。パソコンに打ち込むと時間がかかる上に、ミスタイプも発生しやすくなりますが、OCRで読み取れば、ミスもなくすぐにデータ化することが可能です。
・交通費精算ツール
営業で外回りする社員が多い事業所では、月末に交通費の精算書がまとまって出されます。多くの社員が、自己申告してきた精算金額が、正しいかどうかチェックするのは時間のかかる作業です。交通費精算は、RPAツールを導入すればスムーズに処理できます。
交通費精算フォームに記入された金額と、乗り換え案内サイトの情報を自動的に照合するので、効率よく交通費の精算業務が行えます。金額が合わない場合は、自動的に担当者にメールで通知されるので、修正もスピーディに行えます。
・売上集計ツール
全国の支店から送られてくる売上データを、本社で一括管理している場合、支店の数が多いとデータの集計に時間がかかります。このような場合は、RPAツールを導入すれば売上入力フォーマットを統一できるので、各支店のデータを迅速に処理することができます。
・メール自動送信ツール
定期的に、複数の取引先に送信するメールがある場合は、RPAツールを使うと便利です。あらかじめ、メールの文面とメールの送信先リストを作っておけば、指定した日時に自動送信することができます。取引先担当者の個人名や、最新情報を追加してメールを送ることもできるので、メールを1通ずつ手作業で送信する必要がなくなります。
・データの整合性チェックツール
多くの部署で作成されたデータの整合性や、不正がないかチェックする作業を、手作業で行うのはかなり困難です。そこで、RPAツールを使うとデータを自動的に照合して、迅速に問題箇所を発見することができます。ミスのないデータ作成は企業にとって重要なので、RPAツールを使ってチェックすれば安心です。
飲食でオススメのソフト・導入効果
飲食業とひと口に言っても、その事業規模はさまざまです。大手チェーン店もあれば、個人経営の店舗もあるので、抱える悩みや問題もそれぞれ違います。飲食店が抱える悩みや問題ごとに、解決するためのツールを紹介しましょう。
・オーダーエントリーツール
スタッフ不足で、オーダーを受けられない場合に利用できるツールです。お客のテーブルに置かれた、タブレット端末から注文できるので、注文を取りに行くスタッフを削減することができます。また、タブレット端末を使うことによって、オーダーミスがなくなるというメリットもあります。注文データの履歴を集計することもできるので、人気のある料理とそうでない料理がわかるため、今後のメニュー開発に役立ちます。
・在庫管理ツールと会計管理ツール
飲食業には、売上が上がっているにもかかわらず、利益が出ないことがあります。こんな場合に利用できるのが、在庫管理ツールと会計管理ツールです。売上が上がっているのに利益が出ないのは、どこかに無駄があることが考えられます。このような場合は、適切に仕入れが行われているか、チェックする必要があります。
そこで、在庫管理ツールと会計管理ツールを活用すると、仕入れ原価から見て、料理の提供価格が適正に設定されているかどうかがわかります。仕入れ原価が高いのに、料理の提供価格が安ければ、利益が出ないのは当然のことです。また、材料の廃棄が多いと利益が出ないので、適正な量の仕入れができているかどうかも、重要なポイントとなります。
この問題も、在庫管理をしっかり行えば解消することができます。また、在庫管理ツールと会計管理ツールを活用すれば、過去の仕入れや売上がデータとして蓄積できるので、新メニュー開発などの際に役立てることができるでしょう。
・スタッフ管理ツール
飲食店で働くスタッフは、毎日長時間勤務する正社員もいれば、週1回しか働かないアルバイトもいます。いろんな勤務形態のスタッフを管理するのは、苦労が多いものです。こんなときは、スタッフ管理ツールを使うと、給与計算や勤怠管理がスムーズにできます。
スタッフには、月給制の正社員もいれば時給制のパートもいて、しかも時給もパートによって違うこともあるので、手作業で計算するのは、かなり手間がかかる上にミスが発生しやすくなります。給与にミスがあるようでは、スタッフの士気にもかかわるので、スタッフ管理ツールによって正確な給与計算ができれば、経営者も勤務する人も安心できるでしょう。
宿泊でオススメのソフト・導入効果
これまで、宿泊業で活用できるツールには、予約情報管理や顧客管理に関するものが多かったのですが、宿泊施設のタイプや規模、立地などによって、抱える悩みや問題は異なります。
・宿泊プラン変更ツール
宿泊業では、季節ごとに宿泊プランを変更します。しかし、宿泊プランの情報を、複数のwebサイトに掲載していると、それぞれ手作業で変更申請をしなければなりません。これはかなり面倒な作業で、しかも変更漏れが起こるおそれもあります。そこで、この作業を自動化するには、RPAツールを使うのが有効です。
宿泊プランは、毎回同じフォーマットでまとめられるので、その情報をRPAツールを使って、登録された予約サイトに一括掲載することができます。このツールを使うことにより、スタッフの負荷が軽減されるので、その分だけ他の作業を行うことも可能になります。
・顧客管理ツール
宿泊業には、定期的に利用してくれる固定客がいます。固定客ごとに料理の好みが違い、宿泊する人数や性別、年齢層も違います。また、固定客の中には、アレルギーのある方もいるでしょう。このような、さまざまな固定客の情報を管理するのが、顧客管理ツールです。
このツールを活用することによって、固定客ごとの好みがひと目でわかるので、満足のいくサービスを提供することができます。お客の満足度が上がれば、さらに利用回数が増え、友人知人を紹介してくれるようになるので、新たな顧客獲得につながります。
・予約管理ツール
宿泊業では、同時期に複数のプランを設定することがありますが、電話で予約を受け付けると、聞き間違えたりお客が言い間違えることもあります。予約内容に間違いがあっては困るので、予約管理ツールを使って問題を解決しましょう。
予約管理ツールに入力したデータは、一覧表にして印刷できるので、どの日にどんな予約が入っているか、ひと目でわかるというメリットもあります。また、予約内容に変更がある場合も、ツール上で簡単に変更することができます。
卸・小売りでオススメのソフト・導入効果
これまで、卸・小売り業に導入されてきたツールは、受注処理や発注処理、帳簿への記載や転記などの作業を、効率化するものが中心でした。しかし、卸・小売り業には規模の大小があり、従業員数や立地も違います。また、直面する悩みや課題も同じではないため、従来のツールでは対処できないケースも出ています。そこで、卸・小売り業で活用できる、新たなツールをご紹介します。
・データ集計ツール
取引先から届くデータは、エクセルで作成されていることもあれば、手書きの場合もあります。そこで、エクセルデータをインポートしたり、手書きのデータを手作業でパソコンに入力しなければなりませんが、それではお中元やお歳暮などの繁忙期には、追い付かなくなります。また、手作業が多いとミスも起こりがちなので、ミスを防ぐためにも、データ集計ツールの導入は不可欠です。
このような場合は、RPAツールを使うことによって、複数のエクセルデータをまとめることができるので、データ集計を自動化することができます。ひと口にエクセルデータといっても、取引先ごとにフォーマットが違うので、手作業でまとめるのは容易ではありませんが、データ集計ツールを使えば、データ処理が正確かつ迅速に行えるようになります。
・OCRツール
お中元やお歳暮シーズンになると、大量の手書きの注文書が集まります。これをデータ化するには、1つ1つ手作業でパソコンに入力しなければなりませんが、とても間に合うような量ではありません。また、手作業で入力すれば、住所や名前、注文品などの入力ミスも、発生しやすくなります。
そこで、OCRツールを使って手書きの注文書を直接読み込めば、ミスなく迅速にデータ化することができます。これまでは、繁忙期になるとアルバイトを雇って、大量の注文書を処理する必要がありましたが、OCRツールを使えばアルバイトを雇用しなくて済むので、経費削減にもつながります。
運輸でオススメのソフト・導入効果
運輸業には代行業、運送業、タクシー業、引っ越し業など、さまざまな業種があり、事業規模もまちまちです。そのため、抱える悩みや問題も異なります。
・配車管理ツール
代行業では、主に電話で代行依頼を受けます。また、タクシー業や引っ越し業なども、電話で依頼を受けることが多いようです。このような業種では、配車の手配を迅速に行う必要があります。繁忙期になると、電話を受けるオペレーターは働きづめになるので、かなりの負担になると同時に、ミスも起こりやすくなります。
そこで、このような場合には、配車管理ツールを使うと問題を回避できます。予約を受ける際は、配車管理ツールのデータから、過去の予約情報を参照できるので、「いつもの場所まで来て」といった依頼でも、場所を特定して配車することが可能です。このため、お客とのやりとりがスムーズになり、行き違いが起こることもなくなります。
・採算管理ツール
運輸業では、売上や経費などのデータ管理は、拠点ごとに行うのが通常です。拠点のデータは本社に集められますが、データ管理がしっかりしていないと、違ったフォームで送られることもあり、データの統合に手間がかかる場合があります。これでは、リアルタイムで売上を管理することができないので、売上や経費の集計が遅れることになります。
売上データは迅速に把握することが重要なので、採算管理ツールを活用して問題を解決しましょう。運送業では、拠点が各地に点在しているので、拠点ごとに管理の方法が違うと統一性がなくなるため、本社で採算管理ツールを使って、一括管理することをおすすめします。
・運行管理ツール
運送業では従来から、配車やドライバーのシフト管理は、経営者の長年の勘をもとに行われていました。しかし、事業規模が拡大すると、これでは追い付かなくなります。また、社長が不在だったり病気になったりすると、代わりが務まる人がいないので、業務が停滞してしまいます。これでは困るので、運行管理ツールを使って、配車やドライバーのシフト管理が、容易にできるようにする必要があります。
医療でオススメのソフト・導入効果
これまで医療分野には、患者管理や訪問診療に関するツールが導入されてきました。また、電子カルテやレセプト管理なども、徐々に普及しつつあります。しかし、病院の規模や診療科の数、医療従事者の人数などによって、抱える問題や課題は違います。問題や課題の解消のために、以下のツールを活用しましょう。
・在庫管理ツール
医療関係では、治療に必要な器具や医薬品などの在庫を、切らさないように注意しなければなりません。万が一必要な器具や医薬品が足りなくなると、適切な治療ができなくなるおそれがあります。そのため、在庫管理ツールを導入して、在庫数が規定以下になったら、自動的に発注するシステムの構築は必須でしょう。これまで、スタッフが手作業で行っていた、発注作業を自動化することにより、スタッフの負担が減って、労務状況が改善されるというメリットもあります。
・患者情報管理ツール
小さなクリニックでは、看護師が患者の受付業務を兼任することがありますが、忙しい中で患者のカルテを探して受付すると時間がかかるため、本来の看護師の業務に支障が出てしまいます。このような場合に導入するといいのが、患者情報管理ツールです。また、電子カルテツールを同時に導入すると、さらに受付業務がスムーズになります。
・院内チャットツール
病院内のスタッフのやり取りは、口頭で行われるのが通常です。しかし、これでは伝え漏れや聞き間違い、言い間違いなどが起きやすくなり、トラブルの原因となってしまいます。病院でこのような間違いが起こると、患者の治療に影響する場合もあるので、絶対になくさなくてはなりません。
そこで、このような事態を打開するために、院内チャットツールの導入がおすすめです。患者の情報や治療方法など、院内スタッフで共有すべき情報を入力して、常時スタッフが閲覧できるようにすれば、ミスなく情報が伝わるので、円滑な治療体制の実現が可能になります。
介護でオススメのソフト・導入効果
介護には、デイサービスなど短時間の施設での介護のほか、24時間介護施設での介護や、訪問介護などがあります。このように、介護のシステムが違うと、それぞれ抱える悩みや課題も変わります。また、施設の規模も違うので、課題のパターンもさまざまです。介護に導入すると、役立つツールをご紹介しましょう。
・介護対象者状況管理ツール
介護を受ける患者の状況を、随時把握するためのツールです。これまでの介護の記録を電子化して、必要に応じて介護士が閲覧し、今後の介護に役立てます。また、ツールを使って、介護対象者の情報を共有することによって、よりよい介護をすることができます。認知症の症状が進むなど、介護対象者の状況は、少しずつ変化していきます。適切な介護をするためには、介護対象者の最新の状態を把握する必要があるので、ツールの導入は重要と言えるでしょう。
・入居者情報管理ツール
介護施設入居者の献立や、食材発注などを管理するツールです。入居者によっては、アレルギーを持っている場合もあるので、ツールを使って管理すれば間違いも起きません。入居者が認知症の場合は、アレルギーがあることを訴えることもできないので、ツールで管理すれば安心です。
入居施設の献立の管理と、食材の在庫管理、入居者の食数管理、栄養面でのケアなどを行うことは非常に重要です。また、入居者情報管理ツールを導入することによって、介護士の負担が軽減されるのも、大きなメリットと言えるでしょう。
・社内SNSツール
訪問介護の現場では、予想外の出来事が発生することもあります。そのような場合に上司から指示を受けたり、現場の出来事を全スタッフが共有するためには、社内SNSの導入が有効です。社内SNSは、スマホやタブレット端末からいつでも閲覧できるので、現場で困った状況に陥った際に閲覧して、状況打開に役立てることができます。
保育でオススメのソフト・導入効果
保育園の保育料は、園児ごとに異なります。また、園児によっては延長保育もあり、教材の購入費などの費用も、園児ごとに違うことがあります。園児の保護者とのコミュニケーションも、時代とともに変わっているので、最新の状況に対応するために、新たなツールの導入が必要です。
・園児情報管理ツール
園児ごとに保育料が違い、延長保育や教材購入費など、複雑な計算が必要なため、月末にはこれらの計算のために、かなりの労力が必要になります。こういった、煩雑な費用の計算に力を発揮するのが、園児情報管理ツールです。このツールを使えば、複雑な計算も簡単にできて、一覧表示することもできるので、スタッフ間で情報を共有することができます。
・保育教育計画策定管理ツール
保育園では、園児の保育指導計画を立てるのも、保育士が行う重要な仕事です。しかし、園児1人1人に合わせた指導計画を作るのは、大変な作業です。このような場合は、保育教育計画策定管理ツールを使うと、指導計画が簡単に作成できます。特に新人保育士の場合は、指導計画作成といっても、何をどう書けばいいのかわからないので、ツールを活用するのがおすすめです。
・社内SNSツール
保育園には複数のクラスがあり、それぞれ別の保育士が担当しています。この保育士どうしが、スムーズに連絡を取り合える環境を可能にするのが、社内SNSツールです。それぞれのクラスで起きたことを、社内SNSに書き込んで共有すれば、よりよい保育活動ができるでしょう。たとえば、早番と遅番の申し送りや、感染症の発生や不審者情報など、保育士全員が知っておくべき情報を、共有することができます。
IT導入補助金申請の方法
IT導入補助金申請は、以下の手順で行いましょう。
1.導入製品を決めて交付申請する
IT導入補助金を申請するには、まずIT導入補助金の対象になる製品を探して、交付申請することから始まります。補助金の対象とならない製品を選んでしまうと、交付申請できないので注意しましょう。
2.導入製品の契約・支払い
申請が受け付けられると、交付決定の通知が来るので、該当製品を発注して支払いを済ませましょう。
3.完了報告・補助金交付
導入製品を契約し、支払いが完了したら、IT導入支援事業者に報告します。報告を受けたら事務局で審査の上、補助金の金額が確定して補助金が交付されます。
4.実績報告
補助金の交付を受けたら、その補助金を使って事業を行い、申請マイページに事業の結果を記入します。ここまで行えば、IT導入補助金の申請から受給までの行程が、すべて終了します。
まとめ
IT導入補助金の対象ソフトには、全業種に共通するソフトもありますが、特定の業種だけが使えるソフトも数多くあります。IT導入補助金を受給したい事業者には、それぞれ特有の悩みや課題があります。IT導入補助金の対象ソフトは、それらの悩みや課題を解消するのに役立つソフトです。これらのソフトを活用することによって、これまで以上に、業務が円滑に行えるようになります。
IT導入補助金