事業再構築補助金に落ちた場合の原因の探し方と再申請の方法
事業再構築補助金の公募に申請し、採択されなかったら、どうすればいいのでしょうか。事業再構築補助金は、業種や業態を転換して、コロナ禍の影響で激減した売上を、回復するための支援制度です。採択されると最大で1億円の補助金が支給されるので、多くの中小企業が申請しています。しかし、申請して不採択になったら、まず何をすればいいのでしょうか。本記事では、再申請の方法についても解説します。
目次
事業再構築補助金の採択率は?
事業再構築補助金の第4回公募の結果が、令和4年3月に発表されましたが、応募総数は19,673件でした。業種別に見て一番応募が多かったのは、コロナ禍の影響を受けやすい、宿泊業や飲食サービス業でした。しかし、応募の中で実際に採択されたのは8,810件で、全体の44%しかなかったのです。つまり、半数以上が不採択となっているわけです。
不採択の理由で多いのが、申請要件を満たしていないケースでした。つまり、事業再構築補助金の主旨を、よく理解しないまま応募して、不採択になっているのです。補助金の主旨を、理解しないまま応募して不採択になると、事業計画書などを作成した労力がすべて無駄になるので、十分注意しましょう。
採択されないNGケースや理由とは?
申請要件を満たしていない理由の中で一番多いのが、必要な書類を用意していなかったという書類の不備です。書類の不備は、提出する前にしっかり確認すれば、見つけることができるので、こんな理由で不採択にならないようにしたいものです。ちなみに、書類の不備には、以下の3つのパターンがよく見られます。
・売上高減少に関する書類がない
事業再構築補助金は、コロナ禍による影響で、売上が激減した事業者が受けられる補助金です。そのため、この補助金を支給してもらうには、一定の期間内で、売上が減少したことを証明する必要があります。売上の減少を証明する客観的な書類がなければ、事業再構築補助金は採択されません。売上の減少を証明する資料には、確定申告書の別表や法人事業概況説明書、所得税青色申告決算書などがあります。
しかし、これらの書類が売上減少を証明できることを知らないと、添付することもないので、書類の不備と判断されてしまうのです。コロナ禍による売上減少を証明するには、2020年4月からの連続する6か月の中で、3か月間の売上合計額がコロナ前と比較して、10%以上減少していて、かつ2020年10月から連続する6か月の中で、3か月の合計額が5%以上減少していなければなりません。
ただ単に、売上が減少した書類を提出するだけでは、事業再構築補助金は支給されず、上記の条件に当てはまる場合のみ、事業再構築補助金の対象となるのです。売上の減少は、コロナ禍とは関係なく起きることもあるので、コロナの影響であることを証明する必要があるわけです。
・認定支援機関に関する書類の不備
事業再構築補助金に申請するには、認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら、事業計画書の作成を進めなければなりません。認定経営革新等支援機関は、国が認定するものです。事業計画書の作成にあたって、事業者は認定経営革新等支援機関の支援を受けているので、すべておまかせすればいいと、勝手に思っている場合もあるようです。
しかし、事業計画書を作成するのは、あくまでも事業者本人ですから、認定経営革新等支援機関を頼りっぱなしにすると、ミスや行き違いが起きやすくなります。その結果、不採択となって困るのは事業者ですから、すべておまかせではなく、自分の責任で作成することが大切です。
また、事業計画書には、作成者名が間違っている単純ミスもあるようです。事業計画書の作成者は申請者本人ですが、なぜか作成者名が、別の人になっているケースが紛れ込んでいます。これはまったくの単純ミスですから、提出する前に何度も見直して、ミスを防ぐようにしましょう。
・事業財務情報に関する書類の不備
事業財務情報には、決算書さえあればいいと思っている人もいるようですが、事業再構築補助金の場合は少し違います。事業再構築補助金の応募は、電子申請で行います。電子申請に添付する事業財務情報は、経済産業省が運営する「ミラサポplus」の中にある、電子申請サポートで作成した、「事業財務情報」をPDF化したものでなくてはならないと、定められています。自分で作成した事業財務情報を、PDF化して添付しても、受け付けてもらえないので注意しましょう。
以上の3つのミス以外にも、単純な記入ミスや記入漏れ、要件を満たしていないなどの理由で、不採択になるケースが多いようですから、気をつけたいものです。
事業再構築補助金に不採択になったらすること
事業再構築補助金に不採択になったら、まず事務局に不採択理由を問い合わせます。不採択の理由がわからないと、次に進めないため、必ず問い合わせましょう。
事務局に「不採択理由」を問い合わせる
事業再構築補助金に不採択になったら、多くの事業者が再申請を考えるでしょう。再度申請するためには、不採択の理由を知らないと、どこを改善すればいいのかわかりません。不採択の理由がわからないまま再申請しても、また不採択になる可能性が高いので、必ず事務局に問い合わせましょう。事務局に電話すれば、不採択の理由を教えてもらえます。
ただし、その場で不採択の理由を聞くことはできませんが、後日教えてもらえるので、折り返しの電話を待ちましょう。どの点にどのような問題があったのか、詳しく教えてもらえるので、次の申請のために役立てることができます。
事務局からの回答は、事業化点や再構築点などの各箇所について、不採択の理由やどうすべきだったのかということについて、具体的に教えてもらえます。このほか、書類に不備があれば、そのことも伝えてくれるので、今度は書類の準備も万全にして、申請することができるでしょう。
では次に、不採択になりやすいポイントをご紹介します。初めて申請する人も再申請する人も、このポイントに注目するだけで、採択率が上がります。
事業再構築補助金の主旨がわかっていない
事業再構築補助金の申請を考えている事業者の中には、事業転換すれば、誰でも補助金を利用できると思っている方もいるようです。しかし、事業転換するだけでは、事業再構築補助金は採択されません。事業再構築補助金は、コロナ禍が原因で業績が悪化した事業者が申請するものです。そのため、ただ単に売上が落ち込んだだけでは採択されず、売上が激減した原因が、コロナの影響によるものであることが証明できないと、不採択となってしまいます。
投資計画に説得力がない
事業再構築補助金は、最大で1億円の補助金が受けられます。しかし、1億円支給されるのはめったになく、多くの場合数百万円程度の支給額になっています。申請する側は、少しでも多くの補助金が欲しいので、売上を実際より、多く見せかけることもあるようです。しかし、実際の売上以上の投資計画を作成すると、どうしても辻褄が合わなくなったり、計画に合理性が感じられなくなります。こうなると、不採択になる可能性が高くなるので、注意しなければなりません。
審査基準を網羅していない
事業再構築補助金の審査基準は、「補助対象事業としての適格性」、「事業化点」「再構築点」「政策点」の4つです。それぞれの審査を、クリアしなければならないので、事業再構築補助金で求められることを、よく理解して申請するようにしましょう。
補助対象以外の経費を申請している
事業再構築補助金には、経費として計上できるものが決まっています。経費として計上できないものを申請すると、不採択になるので注意が必要です。
転換する事業に無理がある
事業再構築補助金は、コロナ禍で大きな打撃を受けた事業者が、業種や業態を転換して、再起をはかるのを支援する補助金制度です。しかし、どんな事業に転換してもいいわけではありません。たとえば、これまで運送業を行っていた事業者が、いきなりホームページ制作会社を立ち上げるといっても、これまで培ってきた経験と、あまりにもかけ離れているので、不採択になる可能性が高くなります。
要するに、「うまくいくのか?」と、審査員が疑問を抱くような転換は、受け入れられないということです。事業や業態を転換するといっても、これまでの経験がまったく生かせない事業だと、無理があると判断されるのは当然でしょう。
事業再構築補助金は不採択になっても再申請ができる
事業再構築補助金は、年に数回公募があるので、不採択になっても再申請することができます。事業再構築補助金は、何度も申請することができますが、なるべく最低限の回数で採択されるようにしたいものです。申請して不採択になったということは、どこかに問題があったことになります。
書類に不備があったのかもしれないし、事業再構築補助金の主旨を、よく理解しないまま申請してしまったのかもしれません。再申請は、問題点を改善してからにしないと、また不採択になってしまうので注意しましょう。
公募要件の確認をする
事業再構築補助金が不採択になったら、まず公募要件を確認しましょう。公募要件に沿って書類を作成しないと、採択につながらないため、もしかすると公募要件のどこかを、見落としているのかもしれません。そのため、再申請する前に、もう一度公募要件に目を通しましょう。また、公募要件は前回の公募後に、改訂されていることもあります。
そのため、最新の公募要件に、再度目を通す必要があります。最新の公募要件は、事業再構築補助金の特設サイトに、掲載されているので確認してください。ちなみに、事業再構築補助金の申請には、以下の書類の提出が必須となっています。再申請する場合は、これらの書類を特に念入りにチェックしましょう。
事業計画書
認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
コロナ以前に比べて付加価値額が減少したことを示す書類
決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表)
ミラサポplus「電子申請サポート」の事業財務情報
採択されるためにすること
事業再構築補助金が不採択になった場合、再度申請して採択されるために、必要なことについて解説します。事務局に問い合わせれば、どこに問題があるのかわかりますが、それと並行して、以下の3つのポイントにも留意しましょう。
公募要領のNG事項の確認
事業再構築補助金の公募要領には、NG項目が設定してあります。NG項目には、申請できない条件や対象が、詳細に記載されているので、自社が行おうとしている補助事業が、NG項目に触れないか今一度確認しましょう。たとえば、事務所等の家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費、フランチャイズ加盟料、接待費用、不動産の購入費、株式の購入費、自動車の購入費などは、補助の対象外となっています。
公募要領の言い回しは難解なため、読みづらいと感じる人もいるようですが、しっかり読まないと、NG事項に引っかかるおそれがあるので注意しましょう。
事業計画書を再度見直す
前回提出して不採択になった事業計画書をもとに、再申請のための事業計画書を作成するのが通常です。その際に、前回の問題点を修正するだけでは十分とは言えません。事業計画書を作成した本人が確認して、問題ないように見えても、第三者が見ると無理があったり、不自然な個所があったりするものです。
本当は収益を出すのが難しいのに、何とか辻褄合わせをして作成した事業計画書には、どこか違和感を感じるものです。もちろん、審査員もその点は敏感に感じるはずですから、必ず第三者に読んでもらって、不自然な個所を修正するようにしましょう。
事業転換することによって集客できるようになり、利益を生むことを説明するのが事業計画書です。無理なく不自然さもなく、補助事業がスムーズに進められるように書かれていないと、審査員を納得させることはできません。
認定経営革新等支援機関を変える
事業再構築補助金の申請には、認定経営革新等支援機関のサポートを受けることが必須となります。しかし、どの認定経営革新等支援機関を選ぶかによって、採択率がかなり違うという現実があります。つまり、認定経営革新等支援機関によって、採択率が左右されるということです。
いくら事業計画書などの必要書類の作成に尽力しても、認定経営革新等支援機関選びが間違っていると、不採択になる可能性が高まります。そこで、認定経営革新等支援機関を選ぶ際は、その支援機関の過去の採択率を、チェックすることも大切です。ただし、その際は「採択数」を見るのではなく、「採択率」を見るようにしましょう。申請の取り扱い件数が多ければ、採択数も多くなるので、あくまでもポイントとなるのは採択率です。
まとめ
事業再構築補助金は、半数以上の申請者が不採択になっています。事業再構築補助金は補助金額が大きいので、審査が厳しいために採択率が低いのです。しかし、事業再構築補助金を申請して不採択になっても、再申請することができます。ただし、不採択になった問題点をそのままにして再申請しても、また同じ結果になってしまうでしょう。
そこで、不採択になったら事務局に電話して、不採択の理由を聞けば詳細に教えてもらえます。事業再構築補助金の主旨がよくわからないまま、事業計画書を作成すると、不採択になる可能性が高いので、まず事業再構築補助金の主旨を理解することが大切です。また、公募要領にはNG事項や応募条件が細かく規定されているので、よく読んでNG事項に触れないよう注意しましょう。
事業再構築補助金