事業再構築補助金は採択されるのも採択後も大変
事業再構築補助金は、最大で1億円支給されるので、多くの事業者が利用したい補助金制度です。しかし、支給額が多いだけに、事業再構築補助金は申請するのも簡単ではなく、採択されても状況によっては補助金が減額されたり、支給後に返還を求められることもあります。
では、事業再構築補助金を申請して、スムーズに補助金を支給してもらうためには、どのような注意点に気をつければいいのでしょうか。事業再構築補助金の申請を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
事業再構築補助金の注意点・リスク
事業再構築補助金を利用するには、いくつかの注意点があります。事業再構築補助金には、他の補助金、給付金、助成金とは大きく違う点があります。それは、補助金額が大きいことです。そのため、申請して不採択になった場合、企業の資金繰りに大きな影響を与えるおそれがあります。
補助金が採択されたら進める予定だった事業が、不採択になれば実施できなくなるのですから、企業としては大きな方向転換を余儀なくされるでしょう。また、事業再構築補助金には、以下のようなリスクもあります。
採択されても補助金が出ないケースがある
事業再構築補助金を申請し、採択されてもまだ安心できません。それは、使った経費が、否認されるケースがあるからです。つまり、補助事業として使った経費のうち、補助金が認められずに、自費で支払うことになる場合があるのです。否認された金額が大きいと、労力をかけて申請し、採択されたにもかかわらず、想定した補助金よりずっと少ない金額しか、支給されないことになります。
これでは、今後の資金繰りに、大きな影響が出る場合もあるでしょう。また、採択されたので設備投資をして代金を支払ったのに、書類に不備があったり見積書を取っていなかったために、補助金がもらえないケースもあるので注意が必要です。
振込後に返金を要求される
事業再構築補助金が採択され、補助金が振り込まれても、何らかの問題が発生して、補助金の返還が求められるケースがあります。場合によっては、全額返還を要求されることもあるので、企業の資金繰りに大きな影響を与える可能性もあります。
補助金は後払い
事業再構築補助金は後払いです。そのため、補助金を元手に、事業を再構築しようという考えは通用しません。最低1年でも程度補助事業を実施してから、ようやく補助金の請求ができるので、それまでの経費は一旦自己負担となります。事業再構築補助金は支給金額が大きいため、一旦自己負担する金額も大きくなるので、その分の資金調達の準備もしておく必要があります。
そもそも事業再構築(新規事業)が大変
事業再構築補助金を申請するには、新規事業を実施する必要があります。しかし、新規事業は、そう簡単にできるものではありません。しかも、事業再構築補助金の場合は、これまでの事業とはまったく違った業種や業態に、転換しなければならないのです。新たな事業に参入するのは、企業としてもリスクがあるので、それ相応の準備をしてからでないと、実施することはできないでしょう。
事業再構築(新規事業)を成功させるのは困難
事業再構築補助金を申請して採択されるためには、新規事業を成功させなければなりません。しかし、新規事業を成功させるのは、容易なことではないでしょう。では、もし新規事業が失敗してしまったら、どうなるのでしょうか。事業再構築補助金を申請するには、まず自己負担で資金を用意しなければならないので、銀行から借り入れした分が大きな負担になります。
事業再構築補助金を当て込んでいたのに、それが支給されず、借り入れだけが残るのでは、企業経営に大きな影響が出るのは避けられないでしょう。コロナ禍によって企業経営が逼迫しているから、補助金を申請して再起をはかろうとしているのに、かえって借金を背負うことになるのですから、これでは事業再構築補助金など、申請しないほうがよかったと言う結果になってしまいます。
事業再構築(新規事業)の成功率
事業再構築(新規事業)の成功率は、3割以下だと言われています。つまり、事業再構築補助金を申請するために、新規事業を実施した事業者のうち、7割は失敗に終わっていることになります。通常、企業が新規事業を始める場合は、何年もの準備期間を経てあらゆる可能性を考慮し、うまくいくという見通しがついてから、実施に踏み切ります。
しかし、事業再構築補助金を申請するために、新規事業を始める場合は、十分な準備期間もなく実施しなければなりません。このような状況でスタートする新規事業の成功率が、3割以下しかないのは当然と言えるでしょう。ただし、この「3割以下」という数値は、コロナ禍以前の数値です。現在はコロナ禍により、日本経済全体が大きく落ち込んでいるので、この状況で新規事業に取り組むと、さらに成功率が下がるものと予想されます。
事業再構築の成功率が低い意外な理由
事業再構築補助金の新規事業を成功させるのが難しいのは、準備期間が短いことだけではありません。新規事業が難しいのは、従業員のモチベーションの問題もあります。新規事業は簡単に成果が出るものではなく、しかもこれまでの事業とはまったく違うため、従業員にとってはわからないことだらけです。新規事業に失敗する例も多く、うまくいっても、成果が出るまでに3年から10年くらいかかるのが通常です。
つまり、従業員は3年から10年もの間、成果が出るかどうかもわからない新規事業に、従事しなければならないのです。3年も10年も成果が見えない中で、新規事業を成功させなければならないという、プレッシャーを感じながら作業を続けるのは、並大抵の苦労ではありません。新規事業が成功しなければ、会社の経営が危なくなる可能性もあります。
そうなると、従業員の生活の保障もなくなります。そんな不安を抱えながら、何年もモチベーションを維持するのは、簡単なことではありません。モチベーションが下がれば、成功できる事業も成功できなくなるので、事業再構築の成功率も低くなってしまうのです。
事業再構築(新規事業)を成功さるためのポイント
新規事業を成功させるのは簡単ではありませんが、では成功させるためのポイントは何でしょうか。事業再構築のための新規事業を成功させるポイントは、必要なノウハウを持つ人材がいるかどうかにかかっています。たとえ事業再構築補助金が満額支給されたとしても、それだけでは新規事業は成功しません。新規事業の成功のためには、優秀な人材の確保が何より大切なのです。
社内の優秀な人材を投入する
新規事業を従業員に兼務させると、失敗する可能性が高くなります。つまり、これまで行ってきた事業に加えて、新規事業を兼務させるとうまくいかないということです。社内でも優秀な人材を集めて、しかもリーダーにはトップクラスの人材を据えないと、新規事業の成功は見込めません。新規事業は何もないところからスタートするので、それなりに人材の投入が必要なのです。しかし、この決断はなかなかできるものではありません。
新規事業に社内のトップクラスの人材を集めると、従来の事業が立ちいかなくなり、会社の根幹が揺らぐおそれもあるからです。つまり、新規事業に力を注ぐと、会社の経営が危うくなるおそれがあるということです。そうなると、新規事業どころではなくなるので、この問題の解決には経営者の英断が必要になります。経営が危うくなれば、「そこまでして新規事業をやる意味があるのか?」という疑問も出てくるので、事業再構築補助金の申請そのものが、暗礁に乗り上げる可能性も出てきます。
人材以外のリスクもある
事業再構築補助金で行う新規事業では、これまでに取り扱ったことのない商品を販売することになります。となると、販売ルートもこれまでとは違ったルートを、開拓しなければならなくなるでしょう。しかし、販売ルートの開拓は、そう簡単にできるものではありません。また、新規事業を立ち上げて新商品を売り出すには、市場にどれくらいのニーズがあるのか見極める必要があります。
しかし、新規事業に参入したばかりでは、ほとんど情報が入ってこないのが実情です。新商品を販売するには、ニーズを把握することが重要になります。「この商品なら売れるだろう」という、漠然とした判断でスタートするのは、根拠のない思い込みや、楽観論で終わることが多いものです。楽観論に社運をかけるわけにはいかないので、事業再構築補助金の申請そのものを、見直さなければならなくなることもあります。
新規事業は他の企業の既存事業
事業再構築補助金を申請するには、新規事業に参入する必要がありますが、その企業にとっては新規事業でも、すでに多くの企業が先行して、その事業を展開しているのが通常です。つまり、事業再構築補助金のために新規に参入した企業は、その業界ではただの新参者でしかないことになります。
そのため、新規参入した業界で生き残ることさえ、容易ではないでしょう。その中にあって、事業再構築補助金では、先行する企業とどう差別化するのかも問われるので、補助金の要件をクリアするのは、並大抵のことではありません。
事業再構築補助金申請も大変?
事業再構築補助金の申請は、かなりの困難を伴います。事業再構築補助金の申請には、以下の3つの要素が揃っていなければなりません。
・主力となる事業そのものを新しくする
・新しい商品を、新しいマーケット(顧客)に提供する
・新しい商品を新しい方法で製造する
つまり、これまでの商品製造方法や、販売ルートを使った販売戦略では、事業再構築補助金を支給してもらうことはできないのです。これは、口で言うほど簡単ではありません。しかも、主力となる事業を新しくするとは、日本標準産業分類で定められた、「産業分類区分」が変わるほどの転換を行い、かつ3~5年後にはその新規事業を、自社の主力事業に成長させる必要があるのです。
つまり、ただ単に補助事業を行うだけでなく、数年以内にその事業が自社の主力事業になるほど、発展させなければならないのです。これを成し遂げることができる企業が、どれだけあるでしょうか。事業再構築補助金を採択するには、これほどの厳しい条件をクリアしなければならないのです。業種や業態を変えるのですから、これまでに培ってきた経験はほとんど生かせません。
また、社内の人材も、新規事業についてはまったくの素人です。この状況で資金を投入し、新しい設備を導入した上で補助事業を行うのですから、成功率が低いのは当然と言えるでしょう。事業再構築補助金を申請するには、このような過酷な状況を乗り越えなければならないのです。
事業再構築補助金申請が大変な理由
事業再構築補助金を申請するには、書類の作成に多大な労力がかかる上に、業種や業態の転換という、万が一失敗すると企業の屋台骨を揺るがしかねないほどの、大きな変革を求められます。だから、事業再構築補助金を申請するのは、簡単ではないのです。
上記でも触れましたが、業種や業態を大幅に転換しても、そのノウハウや販売ルートなどは社内にありません。そんな中で新規事業をスタートして、軌道に乗せるのは、至難の業と言わざるを得ないでしょう。問題はこれだけではありません。
事業再構築補助金では、補助事業期間の終了時には付加価値額が年率平均で、3%アップしていることが求められます。コロナで困窮している中小企業には余力がないので、この3%アップはかなりの負担になります。これだけの条件をクリアするのは並大抵ではないので、事業再構築補助金の申請は大変なのです。
事業再構築補助金の採択率が低い
事業再構築補助金の申請の難易度は、採択率を見ることによって確認できます。事業再構築補助金の全体の採択率は44%ですから、半数近くが採択されていることになります。これだけを見ると、それほど難易度の高い補助金ではないと見ることもできますが、通常枠だけを見ると、採択率が38%しかないので、さらに難易度が高くなっていることがわかります。他の補助金はもっと採択率が高いので、事業再構築補助金の採択率が低いのは、まぎれもない事実なのです。
採択されるためのポイント
事業再構築補助金に採択されるためには、事業計画書の書き方が重要になります。事業再構築補助金は、事業計画書の内容によって、採択か不採択かが決まるといっても過言ではありません。事業計画書は、A4サイズ15枚以内(補助金額1500万円以下の場合は 10枚以内)と決められていますが、それ以外は何も規定がありません。
つまり、どのような書き方でもいいのですが、決まった形がないために、かえって難しいと感じる方も多いようです。公募要領によると、事業計画書には、以下の4つの内容を記載することになっています。
・補助事業の具体的な取り組み
・将来の展望
・本事業で取得する主な資産
・収益計画
この4つについて、15枚以内で作成することになります。15枚というと多いと感じるかもしれませんが、画像や表を入れながら作成すると、すぐ規定枚数を超えてしまうので注意しましょう。
審査員を意識して記述する
事業再構築補助金の審査員は、申請する会社のことは何も知りません。つまり、何の予備知識もない人が審査するわけです。そのため、こちらの会社のことを、何も知らない人が読んでも、よくわかるような書き方をしないと、採択される可能性が低くなります。
「審査員は専門家だから、こちらの会社のことは調べてあるはず」と思って書いていると、何も知らない審査員にとっては、わかりにくい事業計画書になってしまうので注意しましょう。不採択になる原因は、こんなところにも潜んでいるので気をつけたいものです。
まとめ
事業再構築補助金は、多くの事業者が利用したい補助金制度です。補助金額が大きいだけに、それを当てにしていて採択されないと、資金繰りに問題が生じる場合があります。また、補助金は後払いなので、一旦自己資金で全額用意しなければならないのも、大きな負担になります。また、採択されても補助金が出なかったり、補助金が支給されても、状況によっては返還を求められる場合もあります。
事業再構築補助金