小規模事業者持続化補助金を活用したホームページ制作
ITの躍進が目覚ましい現代において、IT関連技術の競争力を高めるため、国や地方自治体はホームページを制作する中小企業に対して、「小規模事業者持続化補助金」などの支援を行っています。また、これ以外にも、地方自治体が独自に行っている支援制度があり、多くの中小企業が活用しています。小規模事業者持続化補助金とは、どのような補助金なのか、詳しく見ていきましょう。
目次
ホームページ制作で使える補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、ホームページの制作だけでなく、中小企業の販売拡大や、業務効率アップなどに関する取り組みを、支援する補助金です。これ以外にも、経済産業省が行っているIT導入補助金でも、ECサイトなどのホームページ制作や、会計システムの導入などの支援を行っています。小規模事業者持続化補助金の対象となる業種は、以下の3つに限定されています。
・常勤従業員数5人以下の「商業・サービス業」
・常勤従業員数20人以下の「宿泊業・娯楽業」
・常勤従業員数20人以下の「製造業その他」
小規模事業者持続化補助金には、「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」がありますが、これについては後述します。
小規模事業者持続化補助金の導入背景
小規模事業者持続化補助金は、中小企業の業績アップのために必要
な、費用の一部を補助する制度です。業績をアップさせるには、新たな販路拡大が必要になりますが、そのためには販売促進や宣伝、新商品開発などが欠かせません。また、業績アップのためには、ITツールやソフトウェアなどの導入も必要でしょう。小規模事業者持続化補助金は、これらの費用の一部を補助するものです。
小規模事業者持続化補助金は、「機械装置等費」「広報費」「開発費」など、13種類の費用の補助ができるので、事業者にとって非常に使いやすい補助金となっています。このように、小規模事業者持続化補助金を活用することにより、できるだけ多くの中小企業を活性化しようというのが、この補助金の目的なのです。
小規模事業者持続化補助金(一般型)
一般型とは、中小企業が販路拡大や効率アップに取り組むために、必要な費用の一部を補助する支援制度です。店舗の改装、チラシの作成、広告掲載などに活用することができます。
小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)
低感染リスク型ビジネス枠は、事業において、新型コロナウイルス感染症などの、感染防止対策のために使われる補助金です。新型コロナウイルス感染拡大防止のためには、人との接触を減らす必要があり、そのための投資に対して補助金が支給されるものです。また、新型コロナウイルス感染症終息を見据えた、新たなビジネス展開のための取り組みにも活用されます。
人との接触を減らすとは、同じ空間にいるお客や従業員の数を制限したり、パーテーションやアクリル板で区切るなどの措置を取ることです。同じ空間にいる人数や、人と人が対面する機会を少しでも減らすことが、新型コロナウイルス感染拡大抑止につながります。また、広い店内を個室に改装することによって、人との接触を減らしたり、ネットによる予約制に変更してお客の出入りを調整する、注文方式をタッチパネルに変えるなどの費用も、補助金の適用対象となります。
「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」の違い
一般型と低感染リスク型ビジネス枠では、補助金の上限額と補助率が違います。一般型の場合、感染防止対策費は、補助金対象として認められませんが、低感染リスク型ビジネス枠では25万円を上限として、補助対象経費の4分の1まで、感染防止対策費として認められます。
また、緊急事態措置による特別措置を適用する事業者の場合は、50万円を上限として、補助対象経費の2分の1まで計上することが可能です。
これに対して一般型は、感染リスク対策とは関係ない取り組みや、一般的なホームページ制作などに適用される補助金です。このように、一般型と低感染リスク型ビジネス枠では、感染防止対策費が計上できるかどうかが、大きな違いと言うことになります。
小規模事業者持続化補助金の注意点
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、経費の支出のタイミングが重要となります。小規模事業者持続化補助金を申請すると、「採択通知書」が届きます。その後、「補助金交付決定通知書」が送付されますが、これを受領する前の発注や契約、支出は、補助金の対象にならないので注意が必要です。また、補助金交付決定通知書を受領しても、すぐに補助金が支給されるわけではありません。補助金は、実績報告書や領収書などを提出後、審査を通過してはじめて支給されます。
ここまでの一連の流れを経て、補助金が支給されるので、補助金の対象としたい出費が、補助金交付決定通知書を受領する前に実施されていると、補助金を受けられなくなります。また、小規模事業者持続化補助金は、申請後に後払いされるので、申請者は一旦費用を全額負担しなければなりません。そのため、補助金をあてにして資金計画を立てると、資金不足に陥るおそれがあるので注意が必要です。
小規模持続化補助金の申請条件
小規模持続化補助金を申請するには、地元の商工会議所や商工会を通して申し込みますが、商工会議所や商工会の会員である必要はありません。ただし、申請する際には、商工会議所による助言と確認が必須となります。さらに、小規模事業者持続化補助金の申請時に、経営計画書と補助事業計画書を、商工会議所に提出しなければなりません。また、日本商工会議所の補助金事務局に対して、補助金交付申請書と、小規模事業者持続化補助金事業に係る、申請書の提出も必須となっています。ただし、電子申請の場合は不要です。
法人が申請する場合は、上記の書類に加え、以下も用意しましょう。
・直近1期分の貸借対照表
・活動報告書(写し)
個人事業主の場合は、以下の書類を添付してください。
・直近の確定申告書 [第一表、第二表、収支内訳書 (1・2面)
または、
・所得税青色申告決算書 (1~4面)]
または、
・開業届
審査に通りやすくするには
小規模事業者持続化補助金の審査に通るには、必要書類がそろっているのはもちろんのこと、経営計画書や補助事業計画書が、丁寧に作られていることが大切です。具体的には、自社の経営状況を正しく分析できているか、自社商品のメリットをしっかり把握できているか、といった点が重要になります。また、補助事業計画の内容が具体的で、実現可能なものであることも、審査を通過するためには必要です。
対象となる活用事例
小規模事業者持続化補助金は、以下の多くの業種で活用されています。
・建設業
・製造業
・情報通信業
・運輸業
・卸売業
・小売業
・不動産業
・物品 賃貸業
・技術サービス業
・宿泊業
・飲食 サービス業
・生活関連サービス業
・娯楽業
・医療
・福祉
・サービス業
では次に、具体的な活用事例を見てみましょう。
洋菓子店の事例
新型コロナウイルス感染拡大により、外出自粛のために来客数が大幅に減少した洋菓子店が、新たな販売戦略として、「自宅でお菓子作りができるキット」を販売し、動画配信で作り方を紹介することにより、販売拡大に成功した事例です。来店による接触リスクを減らし、インターネットを活用することによって、全国各地から注文が入るようになりました。
お菓子作りのキットの存在を広く知ってもらうために、この洋菓子店ではホームページを作って宣伝しています。補助金の対象となったのは、体験キット用食材を冷凍配送するための冷凍加工機購入費、お菓子の作り方を紹介する動画の制作費、ネット販売用ホームページの作成費などです。
飲食店の事例
感染症対策として、店内を完全個室にして料理を提供することにより、お客どうしの接触を減らした事例です。また、注文をタッチパネルを利用した方式に変えたため、スタッフとお客との接触も大幅に減りました。新型コロナウイルス感染症拡大により、長期間自粛が続いて客足が遠のいてしまったため、売上アップのための打開策として、店内の感染リスク対策に取り組んだ結果、売上アップにつながったというケースです。
この飲食店では、店内を個室に改装するための費用と、タッチパネル注文システムの導入費の一部を、補助金でまかなっています。店内個室化とタッチパネル導入後は、「安心して食事ができる店」として評判となり、ファミリー層を中心とした、顧客増を実現することができました。この飲食店では、ホームページとチラシを活用して、個室化とタッチパネル導入を宣伝しましたが、その費用も補助金対象となっています。
建設業の事例
進捗確認がテレワークでもできるようになったため、作業現場に集まる人員を必要最小限にすることができたので、感染リスクが抑えられました。通常、作業現場には作業員のほかに、管理者やクライアントも訪れます。しかし、現場に最低限必要なのは作業員だけなので、クライアントとの交渉や管理者による進捗管理は、すべてテレワークに変更しました。そのために必要となった、進捗確認用システムと、作業状況をチェックするためのドローンの導入費用の一部を、補助金でまかなっています。
また、遠隔診断サービスを行っていることを、ホームページやチラシを使って宣伝したので、その費用も補助金対象となりました。その結果、現場での人と人との接触が最小限に抑えられ、しかも優れた感染症対策が評判となり、企業のイメージがアップするというおまけもつきました。また、建設業では見積や設計など、お客との交渉もオンラインで行うケースが増えているので、さらに感染症を抑える効果が期待できます。
ホテル業の事例
ホテル業は、数ある業種の中でも、人との接触を避けることが難しい職種です。しかし、感染症対策のためには、できるだけ人との接触を減らす必要があります。そこで、セルフチェックイン機、自動精算機を導入することによって、人との接触の機会を減らそうとしました。また、宴会場にパーテーションを設置して、他のお客との接触を減らしたところ、徐々に客足が戻ってきました。
もっとも効果があったのは、セルフチェックイン機、自動精算機を導入したことでした。宴会場をパーテーションで仕切るのは、多くのホテルで行っている感染症対策ですが、フロント業務の自動化はそれほど普及していないため、お客の安心感につながったようです。
セルフチェックイン機と自動精算機、パーテーションの購入費が補助金の対象となり、ホテル側の負担を減らすことができました。これらを導入した結果、安心して利用できるホテルとしてリピーターが増え、売上アップにつながっています。また、フロント業務の自動化により、スタッフの業務が軽減されたのも、大きな成果となりました。このホテルでは、ホームページやチラシを使って、フロント業務の自動化をアピールしましたが、その経費も補助金の対象になっています。
小規模事業者持続化補助金をホームページ制作に活用しよう
小規模事業者持続化補助金を利用して、ホームページ制作の費用の一部を、補助してもらうことができます。新たにホームページを制作するだけでなく、リニューアルにも利用できるので、企業や店舗の宣伝に役立てましょう。
小規模事業者持続化補助金の対象となるには、以下の前提条件をクリアする必要があります。
・小規模事業者であること
・商工会の管轄地域内で事業を営んでいること
・本事業への応募の前提として、 持続的な経営に向けた 経営計画を策定していること
・先行する受付締切回で採択・交付決定を受けて、補助事業を実施した者でないこと
・反社会的勢力排除に関する誓約事項のいずれにも該当しない者
小規模事業者持続化補助金を申請するには、地元の商工会議所か商工会に出向いて、今後の経営計画書を提出しなければなりません。各自治体には商工会議所か商工会のどちらかがあるので、まず地元にどちらがあるのか調べて、コンタクトを取ってみましょう。小規模事業者持続化補助金の対象となるのは、主に中小企業や個人事業主、一部の特定非営利活動法人などです。
また、補助金の対象となるのは、以下のの13項目に限定されています。
・機械装置等費
・広報費
・展示会等出展費
・旅費
・開発費
・資料購入費
・雑役務費
・借料
・専門家謝金
・専門家旅費
・設備処分費
・委託費
・外注費
ホームページ制作は、このうち広報費に含まれますが、チラシやDM、インターネット広告なども、広報費として認められています。ただし、ホームページのアクセスアップのために必要なSEO対策費は、広報費として認められないので注意しましょう。また、補助金が支給されるのは、ホームページ制作費を支払ったあとなので、先に補助金をもらって制作することはできません。
ホームページ制作にかかる主な相場感
ホームページの制作費は、企業の業種や規模のほか、どの程度こだわりのあるページを作るかによって変わります。ここでは、一般的なホームページを制作する場合の相場について、解説します。インターネットで検索すると、数多くのホームページ制作会社がありますが、制作費は会社によってまちまちです。
制作費が高いからといって、必ずしもクオリティが高いとは限らず、制作費が安くても品質の良いホームページを作る会社もあります。しかし、一般的に制作費が高いほうが、より良質なホームページに仕上がるので、費用対効果を考えて制作会社を選ぶようにしましょう。
制作に必要なスタッフと役割
ホームページは、数人のスタッフが手分けして制作します。担当するスタッフは、それぞれ受け持ちの分野が違うので、簡単に説明しましょう。
*ディレクター
ディレクターは、ホームページ制作全体を指揮する立場です。まずクライアントの要望を聞いて、どのようなホームページにするか、具体的に設計していきます。そして、設計が出来上がると、他のスタッフと共同で作業を進めます。
*デザイナー
ホームページのデザインを担当するのが、デザイナーの仕事です。ホームページのデザインによって、集客率が変わるので非常に重要です。
*エンジニア
ホームページ制作には、エンジニアの存在が欠かせません。エンジニアは、HTML、CSS、JavaScriptなどの言語を駆使して、ホームページを作っていきます。ホームページの原型を作るのはデザイナーですが、デザイナーが作った原型を、インターネット上に再現するのがエンジニアの役割です。
*アートディレクター
デザインの中でも、特に視覚に訴えるデザインを担当するのが、アートディレクターです。視聴者が思わず息を飲むような、優れたデザインを作ることができれば、離脱率の少ない優良なホームページを作ることができます。このように、ただのデザインではなく、インパクトのあるデザインを作るのが、アートディレクターの仕事です。
*フォトグラファー
ホームページに掲載する写真を撮影したり、選定するのがフォトグラファーです。ホームページに載せる写真は、アイキャッチとして重要なので、どんな写真を使うかによって、ホームページの出来具合が変わります。
*コピーライター
ホームページに掲載するテキストコンテンツや、アイキャッチのコピーを考えるのがコピーライターの仕事です。ホームページで自社商品を紹介するには、文章による説明が中心となるので、コピーライターの役割は重要です。
制作費別のホームページの内容
ホームページの制作費は、数十万円から数百万円まであります。それぞれ、制作費別にホームページの違いを見てみましょう。
*50万円~150万円
ホームページの制作費としては、かなりリーズナブルな金額です。制作費が安いので、テンプレートを使用して作るケースが多いのが特徴です。見てわかりやすいホームページの制作には向いていますが、インパクトがあったり、オリジナリティにあふれるページ作りには不向きです。オーソドックスなホームページを作るには、この価格帯で十分でしょう。
*150万円〜500万円
企業が制作するホームページのほとんどが、この価格帯です。クライアントの要望を聞き取って、ホームページを形作っていくので、完成までに何度も打ち合わせを繰り返しながら、仕上げていきます。制作会社としても、一番制作数の多い価格帯なので、豊富な制作実績をもとに、クオリティの高いページ作りができます。
*500万円以上
大量なページが必要だったり、オリジナリティあふれるホームページを作ろうとすると、この金額になります。制作期間も長くなり、打ち合わせの回数も多いので、制作会社はもちろん、依頼するクライアントも、かなりの労力が必要になります。
競合他社と差別化をはかりたい場合などに、このくらいの金額をかけて、ホームページを作ることがあります。ホームページは、ただ費用をかければ良質なページができるわけではありません。クライアントにも、制作会社からのフィードバックに応えられるだけの力量がないと、費用に見合ったページ作りができないので注意しましょう。
HP開設のために発生する費用
ホームページをインターネット上に公開するためには、サーバーやドメインなどが必要になりますが、その費用はどれくらいかかるのでしょうか。
*サーバー
サーバーは、インターネットに公開するホームページの、コンテンツを保管するために必要です。既存のサーバーをレンタルして使用しますが、月額数千円程度で使用できるレンタルサーバーが多いので、それほど費用はかかりません。
*ドメイン
ホームページを公開するには、ドメインが必要になります。ドメインは、インターネット上の住所のようなものです。ホームページを公開するためのURLは、ホスト名とドメイン名でできているので、ドメインの取得は必須となります。ドメインには「.com」「.jp」「.co.jp」「.net」などがあり、数千円程度で取得できます。
おすすめのホームページ制作会社
クオリティの高いホームページを作るには、制作会社選びも重要です。おすすめのホームページ制作会社を、いくつかご紹介しましょう。
クオートワークス
https://quoitworks.com/
「AWWWARDS」などの、Webデザイン賞を受賞している制作会社です。デザインに優れていて、しかも使いやすいホームページを作ってくれます。SEO対策もしっかりしていて、集客のためのリスティング広告にも詳しい、頼りがいのある制作会社です。ホームページの現状分析により、今後の改善点を見つけたり、Webコンサルティングも行ってくれるので、総合的にホームページ作りをまかせることができます。
LIG
https://liginc.co.jp/
電通やNTTドコモのような、大企業と取引のある実力派の制作会社です。ホームページ制作以外に、Webマーケティングのサポート、業務システムやアプリの構築、Webクリエイターの育成事業なども行っています。豊富なホームページ制作実績をもとに、安定感のあるホームページ作りをしています。
MEFILAS
https://mefilas.com/
電通やJR西日本コミュニケーションズなどの、大手企業と取引のある制作会社です。「第2回Webグランプリ」のプロモーションサイト部門で、優秀賞を受賞を受賞した実績があり、斬新なWebコンテンツづくりをしています。インパクトがありながら、気品のあるホームページ作りが得意です。
まとめ
小規模事業者持続化補助金を利用して、ホームページを制作することができます。また、ホームページ制作以外にも、感染症対策として飲食店が店内を個室化したり、ホテルがフロントの自動化、キャッシュレスを導入した場合なども、補助金の対象になります。小規模事業者持続化補助金は、主に中小企業に向けた補助金制度です。ホームページを制作して、自社や店舗の宣伝をしたり、感染症対策を施すことによって、業績アップやイメージアップを図ることができるので、積極的に利用しましょう。
小規模事業者持続化補助金(一般型)